2022.10.15

【コラム】赤字債務超過からの脱却、会社の立て直しに必要な事

赤字債務超過の問題点

もしあなたの経営する会社が債務超過になってしまったら、即座に倒産でしょうか?
いいえ、そうなるとは限りません。

しかしそのまま放っておけば、倒産する可能性が非常に高いです。
債務超過とは「企業の負債総額が資産総額を上回っている状態のこと」を指し、手持ちの資産をすべて手放したとしても債務を返済しきれないという状態です。加えて赤字ということは「利益を生み出せていない会社」だと判断されてしまって、銀行などの金融機関からの新規借入が難しくなります。絶対に融資不可というわけではありませんが、審査の目が厳しくなることは間違いありません。金融機関側からすれば、融資した金額を回収できる見込みが薄いのですから当然ですよね。

仮に融資が受けられたとしても、早期の返済を求められたり金利が高くなるといったケースが起こり得ます。他にも仕入先や販売先からの信用が低下するなどデメリットだらけです。

早期黒字化が必要な理由

上記のように債務超過にはさまざまなデメリットが存在します。そしてこれらのデメリットは倒産の可能性を高めますから、早期解消が望ましいと言えるでしょう。放置していても状況は悪くなる一方です。

市場の変化や競合他社の出現、輸送費・原材料費の高騰、そもそも利益の出ないビジネスモデルをおこなっているなど、赤字になってしまった原因は会社によってさまざまでしょう。自社にとって改善しなければいけないことは何なのかを社長自身が考えて、手を打っていかなくてはいけません。

たとえば、市場が変わったことが原因ならば、新しい市場に対応した企業に変わる必要があるということは明らかですね。問題点を洗い出せば、おのずとやるべきことが見えてきますので、改善のために早めに動いていただきたいなと思います。

黒字化戦略

立て直すと言ってもなにから手を付ければいいのか?と悩まれるでしょうが、やるべき対策を大別すれば「無駄なコストの削減」「売上の向上」、この2つです。この2つを突き詰めれば、利益を出して経営を立て直すことができます。
コストの削減でまず見直すべきは、外注費、人件費、広告費、原材料費。

なかでも最初に削るべきは無駄な外注費です。
会社規模がそれほど大きくなくて余裕がない状態の場合、むやみに外注に頼るべきではありません。もちろん、とても優秀な人材に恵まれていて支払ったコスト以上の成果を得られていたり、どうしても外に頼らないと会社が回らないという仕事については外注を残しておくべきです。
しかしそうでない場合には、切れる外注は切ってしまって内製化をする方が低コストです。削ることによる影響を考慮しながら見直すことが重要です。

次に人件費です。それなりの規模の会社を経営していて正社員の人件費がかかり過ぎている状況なら、整理解雇を視野に入れることも考えなくてはいけません。整理解雇とは、経営不振の際に人員整理としておこなわれる解雇のことです。リストラ(リストラクチャリング、事業や組織の再構築)の手法のひとつとして良く知られていますね。リストラということばに抵抗を覚えるかもしれませんが、倒産してしまえば結局のところ社員全員が共倒れです。
他のコスト削減ではどうしても対策が追い付かない場合、非情な決断を下さなければいけないこともありうるのです。

このように余分なコストを探し出して、どんどんと削減していってください。
コスト削減こそが会社立て直しの第一歩です。 コストの削減をおこなっても黒字化ができない場合には売上の向上を考える必要があります。

経営者が陥る罠

そもそも売上が上がらないから赤字になっているという会社は多いはずです。
「売上の向上」と考えたときに多くの社長が勘違いしてしまうことがあります。
それは「集客をすれば売上が上がる」という考え方です。

あなたの会社にもし余力がある状態なら、集客をおこなうべきです。
しかし余裕がないときに多大な集客コストをかけたり無理な値下げをおこなったりして、利益が少ないものをたくさん売ることに忙しいという状況になってしまった場合、果たしてあなたの会社は耐えきれるでしょうか。人手が足りないために新たに人を雇うことになり、結果としてさらに人件費が増えた…なんてことになったら目も当てられません。
倒産へのスピードを加速させてしまうようなものです。「初めに着手するべきことは集客」という考えは捨てましょう。

会社の立て直しにあたって目標値を決めるときに覚えておいてほしいのは、「目標値に社長の給料もきっちりと含める」ということです。
社員を解雇するくらいなら…と思って社長の給料を犠牲にしてしまうような自己犠牲精神が強い社長がいい社長とは限りません。社長の給料が長期に渡って未払いになると、税務署あたりから怪しまれることにもなりかねませんよ。会社を立て直す際は、自分の給料まで確保できるような計画を立てましょう。自分の給料を確保できていないのに黒字になったという勘違いをしてはいけません。

「経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じた」場合には、役員報酬の減額を認められる可能性があります。国税庁が定めた上記要件を満たして正式な手順を踏むことによって役員報酬は減額できる場合がありますから、方法として知っておきましょう。

正しい立て直し戦略とは

では集客を増やさないで売上を上げる方法があるのか?と思われる方にぜひお伝えしたいのが「客単価を上げる」という方法です。顧客1人あたりの購入金額を上げるということです。ぱっと思いつく方法としては商品の価格を上げることですね。他社の価格や顧客ニーズと照らし合わせて価格の見直しができるものを探すと良いでしょう。

他にも売り方を工夫したり、何度もリピートしてもらえる仕組みをつくることで客単価は上がります。商品やサービスのファンになってリピートしてくれるような顧客を獲得することは、中長期的な売上アップにつながります。いつもの商品に追加して何か購入してもらえるような仕組みも良いですね。

もとからある商品・サービスを活かしながら、新たに形式や売り方を変えるだけで立て直しに成功した事例は存在しますし、この方法なら大きなコストをかける必要もありません。コストをかけずに客単価を上げることができれば、会社の業績は回復に向かうことでしょう。

会社の立て直しの基本となるのは、コスト削減と売上の向上という2方向からのアプローチです。「そもそも会社経営がうまくいっていない状態で売上を上げるというのは難しい」と思って、コスト削減にしか目を向けない社長も数多くいます。しかしやり方によっては、大きな資金や労力を使わず、仕組みを変えることで売上や利益を劇的に上げることは可能なのです。

まとめ

いかがでしたか。あなたの会社がもし債務超過に陥ったとしても、立て直しのチャンスはあります。会社の立て直しは、実はほんの少しの変化で達成できることもあります。そしてその変化の種は、あなたのビジネスにも埋まっている可能性が大いにあって、その種を伸ばすも枯らすもあなた次第なのです。
利益を着実に積み上げることで、立て直し後も債務超過にならない経営体制を整えましょう。
今回の記事を参考にしてみてください。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。