2024.07.25

【コラム】日本企業が経営で陥りやすい8つの罠とは?

コロナ禍以降、日本の中小企業の約7~8割が赤字であることをご存じでしょうか。さらにいえば、その約5割の企業は債務超過に陥っています。

その理由は、多くの企業が無意識のうちに借金や税金を「悪」ととらえているからです。

実際、借金しないように努め、税金を払わないよう節税した結果、倒産に陥る企業も少なくありません。

日本の中小企業が成功するためには、経営で陥りやすい8つの罠を回避し、常識とは真逆の戦略を立てることが重要です。

今回は、日本企業が経営で陥りやすい8つの罠について詳しく解説します。

気がつかないうちに、既に8つの罠のどれかにかかってしまっているかもしれません。これから法人化を目指す方や経営で成功したい方は、ぜひ参考にしてください。

1. 起業3年未満の経営

この章では、起業3年未満の企業が陥りやすい2つの罠について説明しましょう。

1つでも心当たりがある場合は、倒産するリスクがありますので、注意が必要です。

1-1. 数字の知識不足

創業して間もない企業に多く見られるのが、経営者の数字に関する知識不足です。

いわゆる「財務三表」とよばれる貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の数字の見方がわからないようでは、3年以内に経営が成り立たなくなる可能性があります。

起業して3年未満の企業のなかには、「経営だけで精一杯」「売上を上げるのに必死」という経営者も数多くいらっしゃるでしょう。

しかし、起業して3年以内に習得できない数字の知識が、5年後・10年後に身につくことはまずありません。

「三つ子の魂百まで」ということわざもあるように、自分の常識や感覚が10年後に変わることはないのです。

創業して3年以内の企業の経営者は、少なくとも財務三表で数字の流れを追える程度の数字に関する知識を身につけておきましょう。

1-2. ムダな節税

とにかく税金の負担を減らそうと、いろいろな節税対策を講じている経営者も多いと思います。税金を減らすためには「お金がかかる」ことをご存じでしょうか。

節税すると、お金はむしろ減ってしまうのです。案外、自分では気づかずにこの罠にかかっている企業は数多く見られます。

決算前に自社の経理担当者から、「節税のために購入するものはないか」と聞かれたことはないでしょうか。

本当に必要なものは購入しても構いませんが、無理にひねり出す必要はありません。今購入しても、本当に必要になるのは5年先・10年先かもしれません。

節税するために購入したものが、最終的に「ムダになる」ことも十分あり得ます。

確かに、設備投資などについて、一定の条件を満たせば税金を減らせる「税金優遇制度」は存在します。

しかし、基本的に税金を支払う場合は、「利益×税率」という2つの要素しか存在しません。

政府は、企業の利益に税率をかけて課税します。ご存じのように、税率は決められていますから、企業が節税対策を講じる場合は利益を下げなければなりません。

このようなムダな節税対策によって利益を下げれば、企業はいつまで経っても成長できません。ムダな節税は、利益を減らす罠であることに留意しましょう。

2. 起業5年未満の経営

この章では、起業5年未満の企業に多く見られる4つの罠について紹介します。起業してから数年が経過していますから、ある程度、売上は安定してくる頃でしょう。

しかし、だからこそ陥りやすい罠もあるのです。自社がこの4つの罠にかかっていないか、今一度、確認してみてください。

2-1. 売上至上主義

起業して5年未満の企業に多く見られるのが、「売上至上主義」という考え方です。

多くの経営者は、売上がある程度安定しているから、さらに売上を伸ばそうとするでしょう。しかし、これも危険な罠なのです。

在庫を増やしたり、売掛金の額を増やしたりして売上が増えれば、手元のお金が減るので資金繰りは確実に悪化します。

売上を伸ばしたいという気持ちはわかりますが、手元に残るお金が重要です。経営者は、売上を追い求めない勇気を持ちましょう。

2-2. 手元資金の不足

手元資金の不足も、起業5年未満の企業が陥りやすい罠のひとつです。売上を伸ばすことだけに力を入れてしまうと、手元の資金が減ってしまいます。

たとえば、コンビニは、飲み物や雑誌、お菓子や弁当、日用品も揃っていて非常に便利ですが、経営する際は多くの在庫を抱えることになります。

1店舗に1,000万円の在庫を抱えている場合は、これらを仕入れるために先にお金を支払わなければなりません。

3年かけて1店舗が軌道に乗り、さらに売上を拡大しようと2店舗目を増やそうとすると、2店舗分の在庫のために2,000万円を先に支払うことになります。

店舗が増えれば増えるほど先に出て行くお金が増え、売れた分の商品はさらに仕入れなければなりません。店舗によっては、必要に応じて設備投資も検討する必要があるでしょう。

このように手元の資金が不足してしまえば、何かあった時に経営が立ち行かなくなり、倒産するリスクが高まります。

売上が10億、15億あっても、赤字が1億あれば借金経営です。自社の売上を伸ばす戦略は、手元資金を増やすことと一緒に検討することが重要です。

2-3. 儲かった時の節税

起業5年未満の企業の経営者が陥りやすい罠には、儲かった時の節税もあります。高級車を購入するなどの節税対策をしたことはないでしょうか。

本来は、儲かった時こそ利益を残して納税し、手元に残る資金を増やすべきなのです。

企業の多くは銀行などの金融機関から融資を受けていると思いますが、儲かった時に税金を支払って手元資金が増えれば、当然、決算書の数字もよくなります。

決算書の数字がよくなれば銀行からの印象もよくなり、さらに融資を引き受けてくれるでしょう。

新たな融資で事業を拡大すれば、さらに利益が大きくなります。成長のスパイラルを引き起こすためにも、儲かった時こそ納税しましょう。

2-4. 融資のムダ使い

4つ目の罠は、融資のムダ使いです。せっかく銀行から融資を受けられたにもかかわらず、そのお金で必要ないものを購入している企業は少なくありません。

実際、資金繰りを頑張って銀行から3,000万円の融資を受けた企業が、2,000万円の高級車を購入して倒産したという事例もあります。

利益を出さない高級車を購入しても、銀行からの評価が悪くなるだけです。そんな企業には銀行も二度と融資を承認してくれません。

利益を出して有り余るほどの手元資金ができたら、高級車を購入しても構いませんが、本来、融資は事業に使うものであることを深く心に刻み込んでおきましょう。

3. 起業10年未満の経営

最後に、起業10年未満の企業の経営者が陥りやすい2つの罠を紹介します。

起業してから約10年ともなると、創業当時に描いていた夢や希望を忘れかけている経営者もいらっしゃるでしょう。

しかし、せっかく10年近く頑張ってきたのに、ここで満足してしまえば「衰退の一途」をたどることになり兼ねません。

これまで経営を続けられたことに満足せず、今後も2つの罠に陥らないよう注意しましょう。

3-1. 成り行き経営

起業して10年未満の企業が気をつけなければならない罠のひとつは、成り行き経営です。

創業当時はエネルギーをみなぎらせて夢に向かっていたはずが、経営が安定するまでの紆余曲折によって仕事に疲れてしまうことがあります。

このような時、人間は「ここまで頑張ってきたのだから現状維持でよい」と思ってしまうものです。

しかし、成長しない企業は必ず衰退します。企業が経営で成功するためには、常に成長し続けなければなりません。

定期的に経営会議を開き、目標を達成できるようアクションプランを策定することが大切です。

目標を掲げ、達成までのプロセスを行動計画を立ててリストアップしてみましょう。行動計画で「誰が・いつ・何をするのか」を明確にすると、業務を把握して進捗状況を適切に管理できるようになります。

次に、月次決算の数字を振り返って、自社の財務状況を確認しましょう。売上が落ちている・目的に達成できない場合は原因を追究し、PDCAサイクルを回して改善する必要があります。

毎月の経営会議で目標を達成したかどうかを確認し、さらに次の目標を掲げるという経営のよい流れを作っていきましょう。

3-2. 節税保険

起業して10年未満の企業が陥りやすいもう1つの罠は、節税保険です。もしかしたら、既に加入している企業もいらっしゃるかもしれません。

この節税保険は、国税庁から販売が廃止されており、会社が損する内容の保険商品です。今も保険料を支払い続けている企業は、すぐに解約をおすすめします。

「実質返戻率がプラスになる」などと言葉巧みに勧誘されて加入したかもしれませんが、いくら払っていくら戻ってくるのかだけを見てください。損することが確定していることがわかるはずです。

さらに、保険料の支払いで現金が減るキャッシュアウトによって資金効率が悪くなり、資金繰りが悪化する可能性もあるのです。

しかも、保険金や解約金は利益として得た益金とみなされ、法人税の課税対象になります。節税保険は、その年の税金を減らす目的にしかなりませんので注意が必要です。

4. まとめ

今回は、日本企業が経営で陥りやすい8つの罠について解説しました。既にいくつか当てはまるという企業もいらっしゃるのではないでしょうか。

借金や税金はよくないと思い、さまざまな節税対策を講じ、必死に売上を伸ばそうとすることが逆に利益や成長を妨げ、結果的に倒産に陥るケースは日本で多く見られます。

ご紹介した8つの罠にかからないよう、常識の反対側を行くつもりで、利益を出したら手元資金を残し持続的な成長を目指しましょう。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。