2024.10.15
【コラム】経営相談のタイミングは4つ!相談先や注意すべきポイントも解説
「自社を再建したい」「資金繰りに不安がある」など、悩みを抱えている経営者も多いでしょう。
早く現状を改善したいと思ったら、経営相談も解決するための手段のひとつです。
しかし、相談者や相談する時期によって結果が大きく変わる可能性もあります。
状況によっては自社の存続にも関わるため、相談先は慎重に選ぶべきです。
そこで今回は、経営相談のタイミングや相談先の選び方、相談する際に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
目次
1.経営相談は誰にすべき?
経営者にとって自社を何とかしたいと思った時、「経営相談を誰にすべきか」は非常に重要です。
しかし、単なる「お悩み相談」とは違って、「起業したい」「抜本的に経営を再建したい」など、企業経営の相談内容には多額の資金や大勢の人間が関わります。
知人や友人、家族への相談は、精神的には楽になるかもしれませんが、企業経営のプロフェッショナルではありません。
そんな経営の相談先は、次の3つに絞られるといっても過言ではないでしょう。
1-1.士業・経営コンサルタント
まず最初に検討すべきは、士業または経営コンサルタントなど経営に精通している専門家です。
特に、相談したい内容が明確な場合は、課題についてピンポイントに専門的なアドバイスを得られるため、速やかに対応できます。
職業 | 主な相談内容 |
弁護士 | 自社の訴訟問題・事業継承など |
弁理士 | 自社の発明や技術など |
行政書士 | 起業・事業の許可申請など |
税理士 | 税務書類・税金・税務など |
公認会計士 | 財務諸表・会計監査など |
中小企業診断士 | 補助金・助成金など |
社会保険労務士 | 労働環境の改善・保険書類の作成など |
財務コンサルティング | 財務分析・財務改善など |
経営コンサルティング | 企業分析・経営改善など |
自社の経営相談の内容によって、適切な相談先を選びましょう。
1-2.金融機関
次に、事業戦略や融資、資金調達の相談先には、金融機関があります。
起業はもちろん、資金繰り・運転資金の確保などの増資や減資、業務提携や合併、買収・売却などお金にまつわる課題は、金融機関への相談が解決の早道です。
特に、政府系は様々な制度があり、新規創業時にも対応してもらいやすく、速やかに融資を受けられる可能性も高いでしょう。
昨今は、金融機関がコンサルティング部門と提携した無料コンサルティングや、地方銀行と商工会議所や中小企業診断協会などの共同主催による経営相談会も無料で実施されています。
1-3.公的機関
無料の相談を優先したい場合は、各都道府県に設置されている中小企業支援センターや商工会・商工会議所などの公的機関の利用がおすすめです。
中小企業支援センターは、中小企業や個人事業主の取り組みを支援するための窓口相談や専門家の派遣などをおこなっています。
一方、商工会や商工会議所は、非営利で地域密着型の事業の発展を目的とする公的団体です。
地域一帯をより活性化させるために設置された、地域付近の企業経営者や個人事業主の寄り合い所といってよいでしょう。
一般的に、商工会や商工会議所は、対象地域内に事務所や工場・店舗が所在することを条件に入会金や会費を支払って会員になると、セミナーの参加やさまざまな支援を受けられます。
このほか、資金調達や融資など金銭に特化した相談の場合は、日本政策金融公庫もおすすめです。
2.経営相談の4つのタイミングとは?
経営相談のタイミングは、大きく分けて4つあります。
結婚や出産など、人生の大きな節目には第三者に相談するのと同じで、企業経営も岐路に立つ前に相談すれば、取り返しのつかない事態を事前に回避できます。
2-1.創業・起業
最初の経営相談のタイミングは、創業・起業です。
創業や起業の場合は、経営前の開業届や税務処理・人事労務など、相談内容も多岐にわたります。
たとえば、法律に関する相談は、弁護士や司法書士、行政書士などに相談するとよいでしょう。
また、税理士に相談すれば、開業届や会社会計、創業・起業後の確定申告、節税対策や法人化するタイミングなどについても専門的なアドバイスを得られます。
2-2.経営改善
経営相談は、早めに相談すべきです。
自社の経営状態を現状より良くするためには、経営方針や経営戦略の施策について、具体的かつ専門的なアドバイスを得る必要があります。
具体的には、生産性の向上や費用削減などに加え、IT化や事業の拡大・組織改革や人材の育成・経営計画の見直しなど、相談の範囲も広くなるでしょう。
包括的な経営改善の相談は、士業や経営コンサルタント、商工会・中小企業支援センターなどの公的機関などがおすすめです。
2-3.事業承継
事業承継も、相談すべきタイミングです。
事業承継の種類は3つで、親族内承継のほか、役員・従業員承継とM&Aを含めた第三者承継があります。
これまで培った自社のノウハウや経営者の人柄・経営手腕などが企業価値や強みとなっているケースも多いため、経営者にとって「後継者選び」は自社の存続を賭けた大仕事になるでしょう。
事業承継の手続きには、後継者が事業を引き継ぐことを条件に、贈与税や相続税が猶予されて将来的に免除される「新事業承継税制」があります。
事業承継の手続きをスムーズに進めるためには、早めの相談が不可欠です。
顧問弁護士や公認会計士・税理士をはじめ、取引先の金融機関や公的機関など、これまでの経営や経験から信頼を寄せている相手に相談しましょう。
2-4.資金調達
資金調達も、経営相談の最適なタイミングです。
ひとえに資金調達といっても、その方法は次の6つに大別できます。
1.金融機関から借入金を増やす(デッドファイナンス)
2.買掛金・支払手形などで負債を増やす
3.資産を売却・担保にして資産を現金化する(アセットファイナンス)
4.株式の発行・交付によって資本を増やす(エクイティファイナンス)
5.補助金・助成金を活用する
6.クラウドファンディングを利用する
資金調達の相談は、具体的な資産運用の方法や事業計画書・返済計画書の作成などに関する専門的なアドバイスを得ることで、大きな成果を期待できるでしょう。
3.相談先の選び方
経営相談はタイミングも重要ですが、相談先も慎重に選ぶべきです。
同じ弁護士や税理士でも、相談内容の解決手段は必ずしも同じではありません。
相談先を選ぶ際は、次の3つに注意して検討すべきです。
3-1.取扱件数・実績
まずは、経営相談の取扱件数と実績を確認しましょう。
相談して、自社の抱えている経営上の課題を解決するための冷静な判断と的確なアドバイスを受けられるかどうかが重要です。
経営コンサルティングの場合は、Webサイトのトラックレコードから過去の実績を確認するとよいでしょう。
特に公表していなくても、専門・得意分野はもちろん、守秘義務に支障のない範囲でこれまでに取り扱った経営相談の事例などを問い合わせてみましょう。
3-2.適正な報酬額
適正な報酬額かどうかも、注意すべきポイントです。
一般的に、士業や経営コンサルティングへの経営相談は、固定報酬の場合もありますが、補助金や資金調達を目的とする場合には着手金と成功報酬が発生します。
相談内容にもよりますが、着手金の相場は概ね5〜15万円程度で、成功報酬は内容によって獲得金額の3〜15%程度です。
昨今は、士業への相談も、着手金なしで依頼を受け、サービスの提供後に成功報酬のみを請求する事務所や独立法人もあります。
相談料を節約したい場合は、相見積もりを取るのも一案です。
3-3.サポートの充実
経営相談の相談先を選ぶ際は、サポートが充実しているかどうかもチェックしておきましょう。
特に、M&Aや事業再生・大規模な組織改革などの相談は、手続き後も体制が整うまでのサポートが必要になるケースも多く見られます。
相談後、どんなサポートがあるのかを事前に確認しておきましょう。
4.経営相談で注意すべき3つのポイント
経営相談には、タイミングや相談先のほかにも注意すべきポイントがあります。
経営者は相談する前に、次の3つのポイントをしっかり押さえておきましょう。
4-1.現状を的確に把握する
まず最初に、自社の現状を的確に把握することが重要です。
相談するからには、自社にどんな課題があり、どう解決したいのかを相手に分かりやすく伝えなければなりません。
たとえば、自社商材の売上不振が続いて資金繰りが悪化し、経営が破綻しそうな場合は、応急処置で運転資金を捻出してから本格的に経営を改善することになるでしょう。
ある程度、資金繰りが落ち着いたら、競合他社の状況や市場シェアの実態・顧客のニーズなどを分析して売上悪化の原因を突きとめ、改善する流れになります。
必要に応じて、事前にSWOT分析などをおこなって、相談先に提示できるようにしておきましょう。
4-2.資金繰りを正しく理解する
資金繰りを正しく理解することも、注意すべきポイントのひとつです。
資金繰り表を作成していれば、売上や利益が順調にもかかわらず、手持ちの資金が枯渇する黒字倒産に陥るリスクも回避できます。
数ヶ月先まで自社の資金状況を見通し、入金・支払の予定をまとめて資金繰り表に記載しておくことで将来的な資金計画の策定も可能です。
月次経営計画による「資金繰り予定表」と過去の営業実績を基にした「実績資金繰り表」を提示すれば、相談先もスムーズに改善策を提案してくれるでしょう。
4-3.問題点を明確化する
経営相談を依頼する際は、問題点の明確化も重要です。
一見、課題が1つであっても、実際には複数の要因が水面下で複雑に絡み合い、時の経過とともに大きな問題として一気に顕在化するケースも珍しくありません。
日々の経営で気付いたことは全てリストアップし、問題解決に優先順位をつけておきましょう。
先ほどの売上不振で業績が悪化したケースでいえば、資金繰りと業績のどちらの改善を優先するかで相談先が異なります。
前者を最優先する場合は、資金繰りの管理や財務課題の解決に通じている専門家ですし、後者の場合は経営や組織運営の専門家になるでしょう。
5.まとめ
企業経営は順調でも、ある日突然、悪化する可能性があります。
日々の資金繰りや経営のプレッシャーもあり、孤独感に苛まれている経営者もいらっしゃるでしょう。
既に経営課題を抱えている企業はもちろん、経営が順調な企業も、何かあれば気軽に相談できる環境を作っておけば安心です。
一人で悩まず、無料相談の公的機関などを活用しながら大事になる前に相談し、安定した経営を目指しましょう。