2025.01.31

【コラム】資金調達は返済不要?経営者に役立つ手法やメリット・デメリットも解説

企業を運営する際は、資金調達が不可欠です。しかし、長引く不況のなか、利息や元金の返済で資金繰りが苦しいという企業も多いのではないでしょうか。

資金調達の方法はいくつかありますが、なかには返済不要なものもあります。経営者は、返済不要な資金調達の種類やメリット・デメリットを理解したうえで、自社に最適な方法を選ぶべきでしょう。

そこで今回は、経営者に役立つ返済不要の資金調達の方法やメリット・デメリットについて詳しく解説します。

1.資金調達の役割や目的

資金調達には、役割や目的があります。コロナ禍以降も物価高騰が継続している昨今、自社の資産が潤沢で、資金を調達する必要がないという企業は少ないでしょう。

しかし、どんな状況にあっても、企業はさまざまな目的のために運転資金を捻出し、経済活動をスムーズに進めて事業をさらに発展させなければなりません。

資金調達の役割は、このような自社の運営を持続・発展させるために財産や人材を増やすことです。また、一番の目的は、手元の資金が枯渇する「資金ショート」を回避すべく運転資金を確保することにあります。

1-1.融資との相違点

資金調達の役割や目的を明確にするため、融資との相違点について説明しましょう。

資金調達とは、企業買収や設備投資など、さまざまな目的のために外部から資金を「自社の利益」として調達することです。また、自社の利益として社内に留保できるもので、弁済する必要がありません。

一方、融資は、金融機関や企業などから自社の「借入」として資金を得るものです。この融資の場合は、あくまで借り入れたものであり、後で返済しなければなりません。

つまり、資金調達と融資には、自社の「利益」になるか「借入」になるかという点に違いがあるのです。

1-2.借金との相違点

次に、資金調達と借金との相違点について説明します。

借金とは、広義の意味では資金調達の方法のひとつで、金融機関や個人などからお金を借りることです。先述の融資が、事業用の運転資金として借り入れるものであるのに対し、借金は、住宅や車などの消費目的で借り入れる意味合いが強くなります。

どちらも「借り入れる」という点は同じですが、融資は事業性が高く、借金は消費性が高いと覚えておくとよいでしょう。

2.返済不要な資金調達の4つの種類

返済せずに資金を調達する方法は、次の4種類です。

1. エクイティファイナンス
2. 補助金・助成金
3. クラウドファンディング
4. ファクタリング

この章では、この4つの返済不要な資金調達方法の特徴について具体的に説明します。資金調達を必要としている企業は、どの方法が自社に最適なのかを十分検討しましょう。

2-1.エクイティファイナンス

エクイティファイナンスとは、「自己調達資本」とも呼ばれ、資本を増やす目的で自社の株式を発行する資金調達の方法です。ちなみに、「エクイティ(equity)」は英語で「株式資本」を意味します。

具体的には、新株を発行したり、転換社債型予約権付社債(CB)などの新株予約権付社債を発行したりすることです。エクイティファイナンスによって資金を調達した場合は、自社に「利益」として保有できるため、返済の必要がありません。

2-2.補助金・助成金

補助金・助成金制度は、国や自治体などが企業の事業活動を支援する目的で実施しています。

補助金は、経済産業省やその外局である中小企業庁・経済産業省の所轄である独立行政法人が管轄しています。一方、助成金は、厚生労働省が管轄していることが多いようです。

各自治体では、さまざまな事業を対象に募集していますので、要件を満たしている企業は利用するとよいでしょう。

ちなみに、補助金・助成金の代表的な例としては、下記のものが挙げられます。

【補助金】
IT導入
ものづくり
事業の再構築
事業の承継・引継ぎ
小規模事業者持続化

【助成金】
雇用調整
トライアル雇用
キャリアアップ

補助金の公募期間は、概ね1ヶ月程度と短く、助成金のほうが公募期間も長く、随時募集している傾向です。

どちらも基本的に返済は不要ですが、対象となる事業の申請時には一定の要件を満たしていなければなりません。また、各自治体は特別な広報活動をおこなってはいませんので、申請を検討している企業は、積極的に最新情報のキャッチアップを心がけましょう。

2-3.クラウドファンディング

クラウドファンディングは、群衆を表す「クラウド」と資金調達を意味する「ファンディング」とを結合した造語で、最近広まりつつある資金調達の方法です。

具体的には、インターネット経由で対象について不特定多数のユーザーから目標額に達するまで少額ずつ資金を集めるもので、大きく分けて4つの種類があります。

1. 購入型:支援者が商品やサービスを受け取れる
2. 投資型:支援者が見返りに金銭を取得する
3. 投資型(株式型):支援者がファンドや株式を得られる
4. 寄付型:環境保全・社会貢献を目的とし、支援者が見返りを求めない

クラウドファンディングでは、支援者をなるべく多く集めるため、どのように対象の魅力を伝えるかの十分な検討が不可欠です。また、自社の事業活動やプロジェクトの目的によって、この4つのうちどの方法を選択するかが成功のカギとなるでしょう。

2-4.ファクタリング

ファクタリングとは、自社の保有する受取手形や売掛金などの売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらう資金調達の方法のことです。

このファクタリングには、主に2つの種類があります。

1. 買取型:売掛債権をファクタリング会社に売却して現金化するサービス
2. 保証型:保険のように回収不能となるリスクを軽減するため、売掛債権の回収を保証してもらうサービス

また、ファクタリングには、企業がファクタリング会社と契約する2社間と、ほかに取引先を含めた3社間での契約があることも覚えておきましょう。

ちなみに、ファクタリング会社との2社間での契約は、取引先に債権を譲渡した事実を知られたくないなどに便利で、3社間の場合は取引先の協力が必須になります。利用する場合は、自社の状況に応じて使い分けましょう。

3.返済不要な資金調達のメリット・デメリット

返済不要な資金調達は、メリットだけのようにも感じますが、細かい点ではデメリットとなる要素もあるため、注意が必要です。

この章では、先にご紹介した4つの資金調達方法のメリットとデメリットについて紹介します。

3-1.エクイティファイナンスのメリット・デメリット

エクイティファイナンスのメリットは、大きく分けて6つあります。

1. 返済不要のため、自社の利益として資金を保有できる
2. 株式の発行による自己資本比率の向上で、自社の財政が安定する
3. 借り入れできない企業も、資金を調達できる可能性がある
4. 株式の価値が低落しても、補償義務が発生しない
5. 借入のように保証人や担保を必要としない
6. 出資者からソースの提供を含めた経営的サポートを受けられることもある

一方、デメリットは、次の4つです。

1. 株式の持分によっては出資者に経営権を取られる可能性がある
2. 配当金として株主に利益を還元する必要がある
3. 配当金で節税対策はできない
4. 持株の割合によっては合併や買収のリスクがある

エクイティファイナンスは返済義務はありませんが、株式の持分の割合によっては出資者が自社の経営に干渉するリスクもあるため、注意が必要です。

3-2.補助金・助成金のメリット・デメリット

補助金・助成金のメリットは、主に2つです。

1. 資金調達のための金銭的な負担が生じない
2. 目的に応じて全額を活用できる

一方、デメリットは、大きく分けて4つあります。

1. 申請の条件が細かく、全てを満たす必要がある
2. 申込・支給期間が限られている制度が多い
3. 必要書類や申請書の準備・作成に手間がかかる
4. 資金が支給されるまでに時間を要する

ようやく補助金・助成金の支給を認定されても、入金までにはある程度の時間がかかるため、資金ショートなどのリスクがある企業には適していません。

先述の通り、積極的に広報されていないため、補助金・助成金の利用を検討している企業は、応募期限や要件などの詳細に関する最新情報の収集に努めましょう。

3-3.クラウドファンディングのメリット・デメリット

クラウドファンディングのメリットは、大きく分けて2つあります。

1. 投資家が複数のため、金融機関の融資より資金を調達しやすい
2. ビジネスに魅力があれば、多額の資金を調達できる

一方、デメリットは、次の3つです。

1. ビジネスの内容によっては、目標額を達成できない可能性がある
2. 融資より金利の支払いが高くなるリスクがある
3. 資金使途が特定のプロジェクトに限定されることが多い

特に、購入型のクラウドファンディングの場合は、返済義務が生じない反面、ビジネスの内容や商材の魅力をアピールできなければ資金の調達は難しいでしょう。

また、昨今は出資者に特典やノベルティなどをつけることも多く、用意する費用やサービスの内容にも配慮しなければなりません。

クラウドファンディングを活用する場合は、プロジェクトの詳細を伝える際に出資者の共感を得られるように工夫し、オンライン広告やSNSなどのWeb媒体を上手に活用しましょう。

3-4.ファクタリングのメリット・デメリット

ファクタリングのメリットは、主に6つあります。

1. 自社の負債が増えない
2. 保証人や担保を必要としない
3. 赤字の企業も活用できる
4. 資金を迅速に調達できる
5. 連鎖倒産のリスクがない
6. 課税対象とならない

一方、ファクタリングのデメリットは、次の3つです。

1. 特に2社間の場合は手数料が高いことが多い
2. 債権譲渡登記が必要な場合は、取引先に知られるリスクがある
3. 分割払いはできない

一般的に、貸金の上限金利は利息制限法によって15%と規定されています。ファクタリングは、2社間の金利の目安は約10〜20%、3社間の場合は約1〜9%程度が相場です。

しかし、なかにはファクタリング会社を装って高金利の貸付をする、いわゆる「ヤミ金融業者」も複数存在します。

本来、ファクタリング会社が売掛金を回収できない場合は、ノンリコースファクタリングといって、利用者に支払を請求できません。

従って、契約書に損害分を請求する償還請求権(リコースファクタリング)が盛り込まれているような企業は、悪徳業者である可能性が高くなります。

ファクタリングを利用する際は、債権譲渡契約と明示されているかどうかはもちろん、取引の際は契約内容を慎重に確認しましょう。

まとめ

資金調達の方法は、金融機関からの融資だけではありません。今回ご紹介したように返済する必要のない方法もあると知っていれば、今後の経営に役立てることができるでしょう。

とはいえ、それぞれの資金調達方法には、いずれもメリット・デメリットがあります。経営者は自社の現状を踏まえ、時には専門家に相談しながら最適な方法を選択し自社の経営状況を安定させましょう。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。