2025.07.15

【コラム】2025年問題で倒産ラッシュ?その背景と5つの対策を詳しく解説

日本では、いわゆる2025年問題で企業の倒産ラッシュが続いています。各業界で相次ぐ倒産をこのまま放置すれば、社会全体に大きく影響するでしょう。

倒産ラッシュに巻き込まれないようにするには、なぜこのような問題が起こったのかを理解したうえで自社の今後を考えなければなりません。

そこで今回は、2025年問題が起こった背景や、倒産を回避するための5つの対策について詳しく解説します。

1.2025年問題とは

2025問題とは、日本で加速する少子高齢化にまつわるさまざまな社会問題のことです。

約800万人のいわゆる「団塊の世代」が、2025年には75歳以上の後期高齢者になります。これに伴い、日本の全人口はおよそ3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になるのです。

2023年に厚生労働省が公表した「人口動態統計」でも、2027年には65歳以上の人口は3,367万人、15〜64歳は4,535万人、0〜14歳は797万人と推計されています。

さらに、2020年には1億2,615万人だった日本の全人口は、2070年には8,700万人にまで減少すると予測されているのです。

2025年は、日本の「超高齢化社会」の幕開けといっても過言ではありません。このように高齢者の割合が高ければ、社会や企業にこれまでなかったさまざまな問題が発生します。

1-1:社会全体が受ける影響

2025年問題で社会全体が受ける影響として最初に考えられるのは、医療および介護にかかる費用の増大です。

高齢者の分布は地域によって格差があり、地域医療や介護施設などの充実度も地域ごとにばらつきが見られます。

特別養護老人ホーム(特養)も、2015年に施行された介護保険制度の改正で減少したとはいえ、2022年4月時点で約27万5千人が未だに入居待機の状況です。

これからの時代は、首都圏の病院や施設まで高齢者を移動させる人手の確保も難しくなります。より一層、各地域の状況や動向に合わせたサービスを拡充する必要があるでしょう。

1-2:企業が受ける影響

2025年問題で企業が受ける影響としては、人手不足のさらなる深刻化が考えられます。日本の中小企業の多くは既に経営者自身も高齢化し、後継者の不在を理由に廃業する企業も少なくありません。

企業は、長引く人手不足を解消するための従業員の確保だけでなく、将来的なビジョンを明確にしたうえで、早い段階で自社の今後について検討すべきでしょう。

2.2025年問題が起こった背景

この章では、倒産のリスクを高めている2025年問題が起こった4つの背景を説明します。

2-1:長引く物価高騰

コロナ禍以降の長引く物価高騰が、企業のコストに大きく影響しています。どの業界にもいえますが、光熱費や原材料費の高騰によってコストが増大し収益を悪化させています。

この物価高騰の影響は、企業内部に留まりません。消費者の買い控えが長期化していることで、各業界の売上は全体的に減少しています。

特に、原材料費の値上げの影響を受けやすい食品業界では、光熱費や物流費の負担が大きく厳しい状況です。やむを得ず食品群の値上げを繰り返しているものの、消費者の節約意識が高まっているため、際立った効果を得られていません。

2-2:人手不足の恒常化

人手不足の恒常化も、2025年問題に深く関係しています。先述の通り、日本の若い世代の人口は減少傾向です。

実際、2025年には約505万人の人手が不足しており、さらに5年後の2030年には、644万人にまで増加するという懸念の声もあります。これを裏付けるかのように、2024年の上半期の人手不足による倒産は163件で、過去最高を上回りました。

人手が足りなければ従来の業務が回らなくなり、当然、収益は低下するでしょう。さらに、従業員1人辺りの担当業務や負担が大きくなるため、離職率が上昇するリスクも考えられます。

また、終身雇用でなくなった昨今は、若年層でも気軽に転職でき、今や就職は売り手市場です。このようななかで、企業が優秀な人材を確保するには、競合他社にはないアピールポイントが必要になるでしょう。

2-3:増加する後継者不在企業

背景のひとつとして、後継者の不在企業が増えていることも考えられます。2025年1月に東京商工リサーチが実施した調査結果でも、後継者不在による倒産は前年同月比で約60.7%増加し、過去最多の45件でした。

このまま増加傾向が続けば、従業員のみに留まらず、周辺地域の関連事業者や取引先にも経済的に大きな打撃を与えることになります。

2025年問題による倒産のリスクを回避するためにも、経営者は早い段階で自社事業の存続や後継者について検討すべきでしょう。

2-4:返済難の「ゼロゼロ融資」

コロナ禍に特別融資制度として実施された、いわゆる「ゼロゼロ融資」も2025年問題に関係しています。

そもそも「ゼロゼロ融資」は、緊急事態宣言のさなかに無担保・無利子で飲食・観光業を中心とする約234万件の企業を対象に実施されました。その融資額の総額は、およそ42兆円以上にのぼります。

この「ゼロゼロ融資」の返済が本格化した2024年3月、半年間の延長が認められました。しかし、本来なら既に倒産していたはずのゾンビ企業までもが救済されたため、その後の返済が難航し倒産するケースが増加しているのです。

帝国データバンクの「ゼロゼロ融資後倒産」のデータでも、2024年は前年比で2.7%減少したとはいえ、倒産件数は680件にのぼりました。既に、ゼロゼロ融資における喪失総額は、およそ1244億7400万円と推計されています。

今後も倒産する企業が増えれば融資は全て不良債権となり、日本経済はさらに大きな打撃を被るでしょう。

3.2025年問題の倒産を回避する5つの対策

2025年問題の背景を説明したところで、この章では企業が倒産を回避するための5つの対策について紹介します。

3-1:業務の効率化

ひとつ目の対策は、業務の効率化です。できる範囲で自社の業務をIT化すれば、人手不足の解消だけでなく、人的ミスの回避や人件費のコスト削減・自社の労働生産性の向上にもつながります。

また、企業規模や業種にもよりますが、タレントマネジメントや業務管理と連動するシステムなどの導入や、DX化で顧客ニーズに対応できるよう商材を見直すのも一案です。

このほか、サプライヤーとの価格交渉による仕入れコストの削減や、在庫管理の最適化で競合他社と差別化を図るのも効果があります。

3-2:職場環境の整備

企業が自由に設定できる法定外福利厚生など、職場環境の整備も重要です。ニーズの高い福利厚生制度の導入は、従業員満足度が高まるだけでなく、社会的信頼の向上や自社のブランディングにもつながります。

たとえば、物価高騰が継続している昨今、企業の食の福利厚生で従業員をサポートすれば、メンタルヘルス対策や健康経営の一環になるでしょう。

このほか、家族持ちや一人暮らしの従業員への住宅手当・家賃補助の提供や、競合他社にはないユニークな休暇・多彩なサービスを提供できるカフェテリアタイプの福利厚生もおすすめです。

3-3:固定費の削減

固定費の削減も、2025問題による倒産を回避する施策になるでしょう。特に、オフィスのテナント料・人件費・光熱費は、コストのなかで大きなウエイトを占めています。

人件費を削減するため、コアな業務だけを残し、アウトソーシングやシステム化を導入するのもよいでしょう。

また、コロナ禍以降、ハイブリッドやリモートワークを導入している企業は、テナント料を見直してオフィスを縮小するのもひとつの方法です。オフィスに出社する人数自体が少なければ、光熱費も節約できるでしょう。

先の業務の効率化に加え、多能工化や従業員のスキルアップの促進は、人件費にかかるコストをさらに抑制できます。インターネット通信のプロバイダや電話・電気で長期にわたって契約を更新している場合は、まとめ割引への契約や業者の変更も検討すべきです。

このほか、オフィス内でペーパーレス化を徹底すれば、印刷費やインク代・用紙代にかかるコストを削減でき、印刷物を保管していたスペースも不要になります。

小さなことでも、塵も積もれば山となります。できることから始めて、少しでもムダな固定費を減らそうとする姿勢が重要です。

3-4:多様な雇用形態の導入

高齢化社会だからこそ、若い世代だけでなく即戦力となる高齢層の再雇用など、柔軟な雇用形態を導入すべきです。

時短勤務やフレックス制度・リモートワークなどを選択できれば、従業員は介護や育児と仕事を両立しやすくなります。

今や夫婦共働きが当たり前の風潮になりつつある日本社会で、優秀な人材を自社に定着させるには、これまでの雇用形態にとらわれない柔軟性が不可欠です。

3-5:事業承継の検討

事業承継の検討も、効果があります。先述の通り、後継者難による倒産は増加傾向です。このようななかで自社を存続させるには、将来のビジョンを明確にし、事業をどのように引き継ぐかを検討しなければなりません。

事業承継の手法は、主に次の3つです。

1.親族

2.従業員などの親族外

3.他企業(M&A)

日本で全体の99.7%を占める中小企業は、これまで親族による事業継承が多く見られました。しかし、相続問題と深く関わることからトラブルも多く、最近は少子化もあって以前より減少しています。

親族以外の後継者を選定する場合は、ほかの従業員の理解を得る必要があり、育成にはある程度の時間も必要です。また、M&Aは、タイミングや事業・譲渡額・従業員の今後についても十分吟味しなければなりません。

専門家にも相談しながら、早い段階で自社に適した手法を見定めましょう。

4.2025年問題と2040年問題は、どう違う?

2025年問題を解決できない場合は、さらに2040年問題に発展します。2040年問題とは、超高齢化社会が引き起こすさまざまな社会課題のことです。

2025年を日本人口の世代割合が変化する過渡期と捉えるなら、2040年には団塊世代のジュニアも高齢者となるため、全人口の35%を占めるピーク期といえます。解決すべき問題は、ますます深刻化するでしょう。

現状を改善するには、まず2025年問題に対応しなければなりません。しかし、自社の倒産リスクを回避するにはこれを一時的なものと思わず、さらに先の自社の未来像を思い描き、綿密な対策を講じる必要があるでしょう。

まとめ

昨年は、働き方改革関連法による2024年問題が、物流や建築業に大きな影響をもたらしました。

翌年の2025年には、日本の全人口の中心世代が高齢層へと推移し、企業は業界を問わずさまざまな問題を抱えています。物価高騰の続くなか、中小企業の倒産は後を絶ちません。

自社の倒産リスクを回避するためにも、必要に応じて専門家にも相談し、早い段階で今回ご紹介した5つの対策を検討しましょう。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。