2025.08.15

【コラム】資金繰り表とは?作り方や作成する5つのメリットを徹底解説

企業が経営を安定させるには、資金繰りで自社の収支状況や現金の流れを把握することが重要です。

資金繰り表の作成は、自社コストの新たな気付きや手元の資金が枯渇するリスクの低減にもつながります。また、資金繰り表で将来的な現金の流れを可視化すれば、計画的に経営戦略を策定できるでしょう。

そこで今回は、そんな資金繰り表の作り方や5つのメリットについて詳しく解説します。

1.資金繰り表とは

そもそも資金繰り表とは、一定期間の現金の収支を管理・予測するための表のことです。企業が自社の経営状況を的確に把握し、資金を適切に管理するうえで、非常に重要なツールといえるでしょう。

中小企業の経営者には、販路拡大のために自ら外回りに出ている方も多く、細かい数字の管理を経理や財務担当に任せて安心しているかもしれません。

しかし本来、この資金繰り表は、経営者自身が主体となって経営方針や戦略を見据えたうえで作成すべきものです。

資金繰り表を活用して自社の現金を可視化し、売上の変動やコスト増または現状維持など複数の経営戦略をシミュレーションすれば、今後の意思決定もしやすくなるでしょう。

また、「資金の谷間」を資金繰り表で事前に把握しておくことで、無理のない現実的な経営戦略を策定できます。一介の経理・財務担当者では、そこまで経営に関与できません。

長引く物価高騰や後継者不足で中小企業の倒産リスクが高まるなか、資金繰り表の作成は、自社の今後を左右するカギになるといっても過言ではないでしょう。

1-2.資金繰り表の目的

資金繰り表を作成する主な目的は、会計帳簿上の金額と実際のキャッシュとのズレを確認することにあります。

実際、納品や請求のタイミングで計上される会計上の「売上」は、すぐに入金されるわけではなく、「費用」も支払が後になる場合があります。

このような中で経営を続けていると、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず手元の資金が不足し、資金ショートに陥るリスクがあります。

そこで、資金繰り表を作成して将来的なお金の流れを予測し、不測の事態に備えるわけです。

2.資金繰り表を作成する5つのメリット

資金繰り表を作成するメリットは、大きく分けて5つあります。この章で詳しく説明しましょう。

2-1.自社資金の将来的な収支を予測できる

1つ目のメリットは、自社資金の将来的な収支を予測できることです。たとえば、取引先からの売掛金の入金が予定より遅れた場合は、翌月に仕入代金や給与を支払う際に現金が不足する可能性があります。

その点、資金繰り表で入金と支出の予定を事前に可視化すれば、事前に支払猶予の交渉や銀行の資金調達などの施策を策定できるでしょう。

また、アパレル・製菓・レジャーなど季節によって繁忙期と閑散期の差が大きい業界では、資金繰り表で「売上の谷」を事前に察知することで、この間に支払う家賃・固定費などの事前の確保や費用の抑制策の検討が可能になります。

このほか、店舗の改装や新しい機器の購入などの設備投資で一時的に資金が流出する場合も、分割払いや別月への支出移動の必要性を資金繰り表で事前に予測できるでしょう。

2-2.金融機関から融資を受けやすくなる

金融機関からの融資も受けやすくなるのも、資金繰り表を作成するメリットです。資金調達の際は、融資の可否に関する金融機関の審査を通過しなければなりません。

金融機関では、主に次の6つの観点から融資の可否を審査します。

1.資金残高:資金ショートの可能性、残高の推移

2.売上・入金:季節変動の有無、売掛の入金のタイミング

3.支出・支払:人件費・テナント料・仕入費・借入返済などの金額と支払時期

4.借入のバランス:既存の借入と今回の借入における返済計画の整合性

5.資金使途:具体的な借入金の用途

6.見積額:実績に基づいた売上と経費の数値

実際に、資金繰り表を改善して融資を認められた事例も、複数あるようです。作成する際は、今後の見通しや返済プラン・資金用途の明確化を意識しましょう。

2-3.自社のムダや改善点を発見できる

資金繰り表を作成すれば、自社のムダや改善点も発見できるでしょう。

光熱費や交際費・広告費を資金繰り表で可視化すると、ある月だけ支出が多い・不明瞭な出費があるなど、資金のムダ遣いが浮き彫りになります。

また、資金繰り表で毎月の動きを確認することで、回収に時間のかかる・支払サイトが短い取引先・季節で売れ残る商品など、解決すべき課題も見えてくるでしょう。

資金調達を検討する前に、資金繰り表の月々の流れから課題を洗い出し、自社の業務を改善しようとする姿勢が重要です。

2-4.経営戦略に活用できる

経営戦略に活用できるのも、メリットのひとつです。自社の資産が、どのような状況にあるのかを把握できれば今後の経営の見通しがつくでしょう。

たとえば、ある程度資金に余裕がある場合は、設備投資による事業の拡大や積極的な宣伝活動によって、さらに資金を増やす戦略を立てるのも一案です。

一方、将来的に資金不足が想定されるなら原因を追究し、業務や経営の改善を最優先させる必要があります。

資金繰り表を作成しただけで満足せず現金の流れを分析し、今後の経営に活かしていきましょう。

2-5.黒字倒産を回避できる

資金繰り表を作成すると、黒字倒産を回避できます。

黒字倒産とは、帳簿上では利益が出ているにもかかわらず、仕入れ費や光熱費・人件費などを支払う手元の資金が不足して倒産に陥ることです。

特に、工事が完了しないと入金されない建設業や、売掛金の額が大きい業種・多額の資金を投入する必要のある急成長中の企業は、黒字倒産に陥るリスクが高くなります。

資金繰り表の入金と出金とに生じるタイムラグから、数ヶ月後に予測される「資金の谷」を見極め、早い段階で支払時期の延長交渉や支出の前倒しなどの対策を検討しましょう。

3.資金繰り表の作り方

この章では、資金繰り表の実際の作り方について説明します。

3-1.必要な項目を準備する

まずは、資金繰り表に必要な5つの項目について確認しましょう。

3-1-1.月初繰越金額

月初繰越金額とは、前月から持ち越した月初1日の時点で、手元の資金や銀行口座など実際に使える現金の残高を示したものです。資金繰り表は、ここから作成していきます。

3-1-2.経常収支計

経常収支計とは、日常的な営業活動に伴う収支を表す項目です。

入金の具体例としては、売上代金の回収のほか、本業以外の広告掲載料や備品レンタル料・資材の売却費などの雑収入です。ちなみに、ここでいう雑収入はあくまで副次的なもので、本業とは無関係な範囲に限定されます。

出金は、たとえば、給与や保険料・福利厚生費などの人件費関連、賃料や光熱費・広告費などの販売・管理費、修繕費やリース料など営業活動に関わるもの、消費前の納付などです。

この項目は、企業における通常の活動費を示すもので、設備投資や借入返済などの一時的な支出は含まないことに注意しましょう。

3-1-3.投資収支計

投資収支計は、一時的・長期的な現金の出入りを示すもので、資産の売買や設備投資がこれに該当します。

「投資」という言葉からも分かるように、主に自社の事業拡大や効率化を目的とする支出または売却に伴う収入に関する項目です。

出金は、将来の収益を見込んだ支出が中心で、機械・建物・車両の購入や新規店舗・ソフトウェアの開発費は、本項目に含まれます。一方、入金は、設備や自社不動産の売却費、固定資産の除却などです。

3-1-4.財務収支計

財務収支計は、資本金や外部からの借入・返済など、財務活動によるお金の出入りを示す項目です。

具体的には、銀行からの資金調達の借入や増資、補助金などの入金と、借入金や利息・株式の配当などの支払になります。企業にとって、「お金のやりくり」の中心となる項目です。

3-1-5.次月繰越金

次月繰越金は、その月の末日時点で残っている現金を示す項目です。資金繰り表の計算式は、下記のようになります。

次月繰越金 = 月初繰越金 + 経常収支計 + 投資収支計 + 財務収支計

これを月単位で算出するのが、資金繰り表です。なお、次月繰越金がマイナスになると、資金ショートの可能性が高くなるため、注意が必要です。

3-2.項目を入力し、レイアウトを整える

各項目を入力し、レイアウトを整えましょう。

Excelなどの表計算ソフトでも自作できますが、昨今は、日本政策金融公庫や東京信用保証協会をはじめ、インターネット上からテンプレートを無料でダウンロードできます。

資金繰り表を長く続けるポイントは、最低限必要な5項目を入れて、なるべくシンプルな作りにしておくことです。財務・経理担当などとも相談し、効率的に作業を進めていきましょう。

3-3.各項目の金額を算出する

各項目を入力してフォーマットのレイアウトを整えたら、実際に各欄に金額を入力して金額を算出してみましょう。

自社で保管している預金出納帳や現金出納帳・月次試算表などから、現金の入金と支出を資金繰り表に転記していきます。

最近は、帳簿に入力した数値が資金繰り表に反映される機能が搭載された会計ソフトも、市場に出回っているようです。

これらのツールや機能を上手に活用すれば、財務・経理担当の処理とともに資金繰り表の数値も日々更新されるため、人的ミスを減らし時間効率が高まるでしょう。

3-4.内容を確認する

最後に、入力された数値が、各項目に沿ってきちんと計算されているか、内容を確認します。

資金繰り表は、今後の自社の明暗を分けるものです。必ず複数名でチェックし、ヌケやモレ・重複がないよう注意しましょう。

4.資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い

資金繰り表と似たような言葉に、キャッシュフロー計算書があります。資金繰り表は、先述の通り、自社の現金がどう流れているかを確認する社内資料です。

経営戦略を踏まえて作成し、将来的な資金の流れを予測するもので、企業規模にかかわらず特に法的に義務付けられていません。

一方、キャッシュフロー計算書は、損益計算書・貸借対照表とともに財務三表と呼ばれ、金融機関などの外部に自社の資金状況を開示するものです。

実際の営業活動・投資・財務の3つの観点から現金の流れをまとめたもので、上場企業では、このキャッシュフロー計算書の作成が法的に義務付けられています。

中小企業にはどちらも法的な定めはないとはいえ、経営者が財務処理や営業活動を兼務する実情を考慮すれば、資金繰り表を作成しておいたほうが安心でしょう。

まとめ

日々の売上や現金出納帳だけでは、今後の経営戦略を含めた未来を予測するのは難しいものです。また、中小企業の倒産が増加傾向にあるなか、見込んでいた取引先の売掛金が突然入金されないなどの理由で、連鎖倒産に追い込まれるケースも珍しくありません。

しかし、資金繰り表で一定期間の手元の現金や資金の収入と支出を集約し、将来的な現金の流れから収支の過不足を可視化すれば、早い段階で非常事態に備えられます。

資金繰り表は、毎月作成する必要のあるものですので、財務担当と連携して効率よく作成し、変化の著しい現代社会を乗り越える強い経営を目指しましょう。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。