2023.05.18

銀行がお金を貸さない本当の理由!公認会計士が解説します!

今回は、中小企業と銀行の付き合い方について考えていきたいと思います。 銀行がどういう考え方で中小企業と付き合っているのか、どうやってお金を貸せる貸せないの判断をしているのか、そして銀行は今後どうなっていくのか。これを知っているか知らないかは会社経営に大きな影響を与えるでしょう。

銀行は今後はこれまでのように簡単に資金援助をしてくれません。では、倒産しないためにはどうすればいいのか、何を知っていけばいいのか、解決策までお話していきます。

銀行の定義と役割

皆さん、次のような言葉を聞いたことはありませんか。銀行は昔から「晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を取り上げる」と言われています。

要するに、銀行は業績が良い会社にお金を貸すけれど、困ってる会社にはお金を貸さない、ということです。これについて皆さんどう思いますか。

実は銀行が貸してくれないのは当たり前です。銀行はどういう商売なのかを少し考えてみましょう。

皆さんが銀行に預けているお金があります。 銀行はこの預けているお金を、会社や住宅ローンのような形でお金を貸して利息をもらうという商売です。銀行のことを金融機関と言って、これを漢字で書くと、お金を融通する機関と書きます。

つまり、必要なところにお金を融通することによって利息をもらう商売です。そして、保険や投資信託、カードローンなどで手数料を取ります。

本業は金貸し業です。銀行が、貸したお金が返ってこなかったらどうなるのでしょうか。当然銀行は困ります。銀行はお金がなくて困っているような会社にお金を貸したら回収できなくなるリスクが高くなります。

実際、お金を貸した企業が倒産したら回収できなくなるでしょう。お金を貸した個人が、住宅ローンを払えないと言って自己破産をしたら回収ができなくなります。銀行も商売で金貸しを行っているため、 貸したお金が貸し倒れて全然返ってこないとなれば、銀行もいつかは倒産をしてしまいます。もしも銀行が倒産したらどうなるでしょうか。

現在、1000万円までは保証されてることになっていますが、それ以上に皆さんが預けているお金は返ってこないということです。そんなことがあったら困ってしまいます。

危ない会社、雨が降っているような業績が悪いような会社にお金を貸されると、私たちも預けてるお金が返ってこなくなるかもしれません。 したがって、雨の日に銀行が傘を取り上げるのは当たり前ということです。

銀行にとって1番重要なのは、貸したお金が返ってくるかどうかです。雨が降ってるような会社は、お金が返ってこない可能性があるので貸したくないわけです。 

銀行がお金を貸したい会社とは?

銀行からすると、調子がいい、絶対返してくれる、晴れの日にお金を貸したいわけです。そのため、業績がいい会社、全くお金に困ってない会社には銀行員が営業に来ます。

つまり、会社はそういう状態にしておく必要があるということです。では、銀行がお金を借りてくださいと言ってくるような、晴れの日の会社はどんな会社でしょうか。

これを判断するために、銀行格付けというものが使われていました。過去形で言っていますが、実際には今も使われています。銀行格付けとは、決算書の数字を基に会社に点数をつけ、この点数によって貸せるか、貸せないかを判断するものです。

つまり、過去の業績によって決まってしまうということです。そしてこの過去の数字というのは、過去の利益だけではなく、財政状態も含まれます。そのため、PL(損益計算書)の業績だけではなく、BS(貸借対照表)の数字も良くしていく必要があるでしょう。なかでも貸借対照表の方が重要です。

しっかりと数字を逐一チェックしていれば、悪い状態になっていても早い段階で気づくので、改善の手を打つことができます。立ち直れる可能性も高くなりますので、数字は必ず見ておいてください。

債務超過の会社でもお金が借りられるケース

決算書を見た時に、赤字で債務超過、PLもBSも悪いというような会社は、基本的にお金は借りられません。しかし、赤字で債務超過のような会社でも例外的に借りられるケースがあります。それは、どんな会社でしょうか。

例えば京都で創業100年の老舗と言われるような会社です。老舗の会社は意外と赤字で債務超過というようなことがあります。業績が悪く債務超過という状態にもかかわらず、何故かお金が借りられます。

皆さん何故だかわかりますか。 創業100年の歴史があるというのも、もちろん重要なことですが、一番の理由は資産を持ってるからなのです。個人で土地を持っていたり、莫大なお金を持っていたりします。そうすると、決算書の評価が悪くて銀行格付けが低いという状態でも、3次評価で借りられる可能性があります。

そのため、個人で資産をたくさん持っている人は、銀行にそれを開示した方がいいでしょう。不動産投資をやってる方などは、自分の資産リスト作って銀行に見せると思いますが、それを中小企業もやればいいということです。

そうすれば、銀行格付けが低くてダメだと言われた会社でも借りられる可能性があるかもしれせん。資産を見せたら銀行に全部取られるのではないかと心配される方もいますが、安心してください。

担保にしてしまうと取られてしまう可能性もありますが、担保に入れる必要はなく、見せるだけでも大丈夫です。見せることによって借りられる可能性がありますので、資産を個人で持ってるという人は、銀行に開示してください。これは資産を持ってる方が使える裏技です。

個人でも資産を持ってないという場合には、やはり厳しいでしょう。業績が悪くなってくると、貸し剥がしまでは行ってはいませんが、貸し渋りは起きています。おそらく皆さんは、融資が厳しくなったと実感されてると思います。

今までみたいに、ジャブジャブお金は出てきません。もう今後は本当に借りられなくなります。銀行格付けが低いような会社に銀行がお金を貸せないというのは、単純に貸したお金が返ってこない可能性のほかに、もう1つ重要な理由があります。

それは、お金を貸した瞬間に銀行の業績が悪化してしまうということです。銀行は格付けで点数をつけた後、債務者区分を分けています。「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」といった債務者区分を分けているのです。

しかし、貸した瞬間に銀行の業績がなぜ悪化するのでしょうか。貸した先が、正常先であればいいのですが、要注意先以下になってくると、銀行はお金を貸した瞬間に、貸倒引当金というのを積まないといけなくなるからです。

貸倒引当金とは、将来回収できなくなるリスクをあらかじめ織り込んでおくものです。そのため、実質破綻先や破綻先は貸倒引当金が100パーセントとなっています。

このような会社に1億円を貸したら、貸した瞬間に将来返ってこない可能性を折り込んで、1億円分を経費として計上しなければならない、ということで帳簿上は0として落としておきます。

このような処理をするため、格付け債務者区分の会社に1億円を貸したら、銀行の業績がいきなり1億円分悪化してしまいます。このような会社には、銀行は貸したくないでしょう。

実際にその会社が倒産して焦げついたわけではなく、まだ回収できないと決まったわけではないのだからいいと思いますか?銀行も業績悪化したら株価が下がるという問題はもちろんありますが、それよりもっと深刻な問題があります。それがBIS規制です。

BIS規制とは

BIS規制という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、国際業務を行う銀行の自己資本比率に関する、国際統一基準のことです。BIS規制には最低自己資本比率というものが定められていて、それをもし下回ってしまうと、国際業務から撤退しないといけなくなります。

メガバンクは海外に支店を持ち、さまざまな国で営業していますが、これを撤退しなければならないのです。要するに、最低自己資本比率を下回ったら、倒産するということです。

そのため、絶対に基準というのは死守しなければいけないわけです。そして、その基準となる自己資本比率というのが8パーセントです。この8パーセントの自己資本比率を銀行は絶対に死守しなければいけません。

BSである貸借対照表をボックスにした図には、3つの区分に分かれています。左側が資産の部、右上が負債、そして右下が純資産です。この純資産のところが自己資本です。

この全体に対する自己資本の割合が、8パーセント以上必要ということです。ではこの自己資本比率はどうしたら増えるのでしょうか。純資産には何が計上されているのでしょうか。

大企業はいろいろありますが、非常に単純化すると、資本金と繰越利益剰余金は、過去の利益の積み上げというものがこの純資産に入ります。したがって、株を新しく発行して資本集めてくるか、会社で利益を出して内部留保することによって、この自己資本が増えていくわけです。

そして逆に赤字を出すと、この自己資本は減ってしまいます。貸した瞬間に業績が悪化するような会社にお金を貸すと、下がっていく可能性があります。銀行が倒産するリスクがどんどん上がっていくので、そういう意味もあって、絶対貸したくないというのが銀行の本音です。 

こうした理由もあり、「今うちの会社厳しいからどうにか助けてください」と言うのはなかなか厳しいのです。銀行も、「この会社は数字は悪いが、技術を持っていて将来性があるから貸したい」と思っていても、審査で貸倒引当金を積まなければならないから無理と言われてしまうのです。

よほど中小企業支援に本腰を入れている銀行や金融機関でないと、債務者区分が低い会社にはお金を貸してくれないと思います。

コロナ融資でお金を借り、コロナ融資の返済が始まったら資金繰りがどう考えても回らないという会社はたくさんあります。このような会社は、来年以降、倒産していくでしょう。金融機関はもうお金を貸してくれません。そういう会社はもう借金返済ができないのです。

銀行法改正による出資規制の緩和

技術を持っていて地域社会に貢献し、価値ある会社だから、うちの会社は大丈夫だろうと思ってる会社も多くあると思います。確かに、そういう価値があるという会社は倒産はしないかもしれません。

しかし、今まで通りの経営はできなくなるという話があります。 実はこのコロナ禍において、銀行法が変わっているのをご存知でしょうか。これは結構危険な話です。

これまでは、銀行は会社の株を5パーセントまでしか持ってはいけないというのが法律で定められていました。しかし、この銀行法の改正によって、今はもう銀行は100パーセント会社の株を取得することができるようになりました。

つまり、そういう価値があるという風に判断された会社に関しては、これまではその会社を救う場合、融資するという形でした。会社のBSからすると、銀行の融資というのはいわゆる借金です。

しかし今後は株を買うことができるようになったので、出資という形で資本を入れ、会社を救うという形、これが主流になってくる可能性が高いです。

要するに、100パーセントの株を銀行が取得し、銀行の傘下に入ってしまうということです。当然、社長も今まで通り続けることはできなくなるでしょう。銀行から出向という形で銀行から人が来て、その人を社長のような形で置いて、ただの雇われになってしまうということです。

オーナーではなく、雇われの一員として働かないといけないという状況になります。せっかく独立して起業して、頑張って会社を大きくしてきたのに、今までみたいに自由にできないという状態になってしまう可能性があるのです。

そうならないために、自由にこれまで通り思い通りにやっていくためには、危機感を持って、きちんと数字を見て把握していく必要があります。数字を見ていないと本当に危険です。

将来の資金繰りがどうなるかわからないという会社が不安に思うのは、数字が見えていないからです。いつ資金がショートするかは、 例えば半年後に100パーセント資金ショートするというのがわかっていれば、これは不安ではありません。どうなるかわからないから不安、つまり、数字が見えてないから不安になっているのです。

数字を見てしっかりと資金繰り表を作っていけば、先のことがわかります。それをどうやって回避するかということを考えるだけです。どうなるかわからないという状態だと、何をすればいいのか、いくら改善すればいいのか全くわかりません。

何をすればいいのかを把握するためにも、今の現状を正しく見ていく必要があるということです。今の状態が全然わからなくて不安、将来どうなるかわからない、資金繰りがどうなるかわからないという方は、ぜひご相談ください。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。