2022.05.17

【コラム】 経営者が意識すべき3つの数字

会社は何故倒産するのか

会社を経営するうえで最も重要な事は何だろうか?社会に貢献する、自社製品・サービスの提供によって世界中の人々の暮らしを良くする、従業員を幸せにする。経営者によって様々な意見があると思いますが、私は全ての会社に共通して会社を経営するうえで最も重要な事が何か、と聞かれれば明確な回答を持っている。それは“会社を継続・存続させること”つまり会社を潰さない事だ。

先程記載した社会に貢献するなどの目的はその先の話であってそもそも会社が倒産してしまっては何も果たすことが出来ない。つまり、どんな目的や野望を持っているにしてもまずもって会社を継続・存続することが一番重要という事である。

では何故会社を継続・存続出来なくなってしまうのか、言い換えると

何故会社は倒産するのか?

この点に関しても答えは明白で会社は基本的に会社は金が無くなると倒産する。会社の金が無くなってしまうと、仕入先への支払いや、従業員への給与の支払い、銀行への借金の返済や税金の支払いなどを行うことが出来なくなり事業を継続することが出来なくなってしまう。

つまり会社を経営していくうえで、金というものは非常に重要なものである。何を今更、そんなの当たり前だろ、と思われるかもしれないが会社の金の流れが分かっていない経営者は驚くほど多い。売上の金額は多くの経営者が把握しているし、ネット上の情報商材や金持ち自慢の(ホントに持っているかは疑わしいが)インフルエンサーやテレビ番組では年商○○億円みたいな事をさも凄い事かのように取り扱っているし、それを見て凄いと感じる人は多い。

自分で商売をやっていない人がその数字を見て凄いと思うのは仕方ない部分もあるが、会社を経営していたり、自分で商売をやっているような方はそれを聞いた時にだから何?それでいくら儲かってるの?という部分が気になるはずだ。売上10億円スゲー!という状態では経営者としてはまずいという事。

売上の金額自体に大した意味は無いからだ。先ほど記載した通り会社は金が無くなれば倒産する。いくら売上を上げようが金が無くなると倒産するのだ。そして売上と会社に残る金は全く違う。もし売上さえ増えれば会社に残る金も増えるでしょ。という感覚で経営しているとするならば考えを改める必要がある。

売上を急に増やして資金繰りが回らなくなった会社、売上は10倍に増えたけど赤字に転落し倒産してしまった会社などはいくらでもある。もし売上さえ増やせば残る金が増える、という計算式が成り立つのであれば一定規模以上の売上がある会社は絶対に倒産しないが全くそんなことは無く、逆に売上の規模はそんなに大きくなくても会社に金が潤沢にあり非常に強い財務体質になっている会社もいくらでもある。

売上の額は会社がうまく行っているかどうかの判断基準には全くならないという事だ。では売上じゃなければ経営者は何の数字を見ればいいのか。

経営者が意識すべき3つの数字

限界利益(率)

今日は経営者が特に意識すべき重要な数字3つをお伝えするので是非これだけでもマスターして欲しい。

まず1つ目、“限界利益(率)”一般的にはあまり聞きなれない言葉かもしれないが管理会計の用語で経営者には必ず覚えておいていただきたい。限界利益は概念的には粗利益に近い物だが実は少し違う。限界利益は売上高から変動費をマイナスしたものをいう。

ここで言う変動費とは売上高に比例して発生する費用の事で売上がゼロなら変動費もゼロだし売上が増えていくとそれに比例して変動費も増えていく。限界利益率とは売上に対する原価利益の比率の事で売上が100円上がったらいくら限界利益が出るのかという事を表していて、基本的に限界利益率は一定になるという仮定を置いている。売上100円で限界利益が30円なら限界利益率は30%という事だ。

限界利益率が高ければ高いほど会社は利益を出しやすい体質になるという事だ。なので会社に残る利益を増やそうと考えた場合、この限界利益(率)をどうすれば高められるのかという点が非常に重要になってくる。限界利益の増やし方についてはまた別の機会にお伝えする。

固定費

そして経営者が意識すべき重要な数字の2つ目は、“固定費”だ。固定費とは変動費が売上に比例する費用というものに対して、売上の多寡に関係なく毎期必ず一定額発生する費用の事で例えば人件費や家賃がこれに該当する。人件費や家賃は売上の額がゼロだろうが関係なく払わなければならないというのは理解できるだろう。

つまり限界利益で固定費を賄い、それ以上に出すことが出来れば最終的に利益となり会社に内部留保を積み上げていく事が出来る。会社に残る利益を増やすという観点では固定費は少なければ少ないほどよく、固定費が減ればその分利益が増えるという事になる。但し、固定費の中身は販売費と一般管理費に分類することが出来、未来費用という概念も入ってくるためなんでもかんでも削減すればいいという事ではない。固定費の詳細についてもまた別の機会にお伝えする。

金(現預金残高)

最後、経営者が意識すべき重要な数字の3つ目は、“金”つまり現預金残高です。むしろ現預金残高だけ注意して毎月必ずプラスになるようにしていれば会社が倒産する事は無いのだが、驚くほど現預金の動きを適切に把握できている会社は少ない。どうしても目先の売上や税金の額に目が行ってしまうのが現状である。

最近相談を受けた経営者の中で決算書の内容がいい、つまりうまく行っている会社も沢山あり基本的に共通点として会社の数字を良く理解しているし良く見ているという特徴がある。だが、中にはあまり数字を見ていませんという経営者も数名ばかり存在していた。

それ見た事か、数字なんか見なくてもうまくいってる会社もあるじゃないか!と思うかもしれないがそう判断するのはまだ早い。よくよく話を聞いてみると確かに月次の試算表をこまめにチェックしたりはしていないのだが本日お伝えした3つの数字についてはかなり細かいレベルで管理していたことが発覚した。社長の中では当たり前のことをしているだけで自分は数字に強くないという認識だったが必要な所はきちんと押さえていて、だからこそ会社が良い状態になっているという事を改めて実感した。

ちなみに、会社の金の流れを適切に把握する為には資金繰り表が最も適している。資金繰り表と聞くと凄くレベルの低い帳票という印象を持たれる方もいるようだが決してそんなことは無く会社を経営するうえでは必須アイテムと言っても過言ではないほどの重要な資料で何故資金繰り表を作らずに経営しているのか理解に苦しむという程重要なものだ。

当然弊社でも1円単位で細かく作成しているし、これが無ければ先の資金繰りがどうなるのかが分からず不安だが、資金繰り表を作れば今後の金の流れが明確になるので不安は無くなる。資金繰り表を細かく見ていけば何故会社の金が増えないのかなど明確に理解できるようになり、数字に強くなることも出来るので、まだ作っていない、という事であれば騙されたと思って是非作成をして欲しい。そうすれば二度と手放すことが出来なくなるはずだ。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。