2022.06.07

【コラム】貸借対照表で意識すべきポイント

決算書の正しい読み方とは

全ての会社が(通常)1年に1回決算を行い決算書の作成等を行っていますが、その決算書を正しく活用できていますか?
決算は税金計算の為に行うわけではありません。もちろん法律で決まっている事なので税金計算も重要な事で当然行う必要はありますが、決算書にはもっと重要な役割があります。

決算書には現状を正しく把握し会社の未来を良くするために活用するという重要な役割があるのです。会社経営をして事業を行っていくうえで必ず目的や目標、5年後10年後に会社をどうしていきたい、という理想像や未来像を描いて日々経営を行っているはずです。その将来の目標を数字に置き換え、その数字を達成する為に何をするか、という行動目標をまとめたものが経営計画であり、その計画を元に日々経営を行い目標達成のために改善し続けていく事で理想の実現に近づいていきます。

たまにゴールの決まっていないマラソンでも常に全力疾走し続けられるような経営者、経営計画を作らず目標を決めずとも常に全力でやり切れる経営者もいますがこういった方はかなり特殊で、多くの経営者にとって経営を行っていくうえで経営計画書は非常に重要なツールになります。

将来の目標が決まっていたとしても、現状を正しく把握する事が出来ず今どこにいるのかが分からなければどうやって、どの道を通ってゴールに進んでいけばいいのかが分かりません。そこで現在の立ち位置を正しく把握するツールとして決算書が役に立つのです。もちろん月次決算を行い常に現状把握や目標の達成度合いを行い、こまめに軌道修正をし続ける事が目標達成のためには必要不可欠ですが、年に1回の決算書すら見ていないケースが多く見受けられるのが中小企業の現状です。

とは言え決算書を見ると言ってもどこをどう見ればいいのか分からない、誰も教えてくれないし、数字は苦手で会計事務所に任せてるから俺は現場で仕事さえしていれば大丈夫。そんな風に考えている経営者さんも多いのではないでしょうか?実はこれめちゃくちゃ危険な兆候です。なぜなら会計事務所が任されているのは過去の数字を正しく処理することだけであり未来を良くすることは含まれていないからです。

「税理士から何のアドバイスもない」と言う不満をよく耳にすることがありますがそれもそのはず、会社に経営のアドバイスをするという業務を請け負っている認識も無ければその能力もないという期待ギャップが生じてしまっているのです。もちろんすべてのケースがそうではないですし、能力の高い税理士・会計事務所も沢山あります。ただ残念ながら激安の顧問料で何でもやります、というスタイルでそこまで望むのは難しいと言わざるを得ません。

会計事務所は労働集約型の産業なので単価を落とすという事はその分顧問先1社あたりにかけられる労働時間が減るという事に直結してしまうからです。そこで会計事務所がちゃんと会社の未来のことを考えて、携わっているのか?それを判断する指標として社長が数字に強いかどうか?決算書をちゃんと読み内容を正しく把握しているかどうか?という点が挙げられます。

どういうことかよくわかりませんよね、詳しく説明します。
会社を経営しているのは税理士ではなくあくまでも経営者自身ですよね?その点異論はないと思います。つまり会社の未来を良くしようと考えた場合社長と一緒に現状を数字を見て正しく把握して、改善する為に何をするか、という事を考えていかなければならないのですが、社長が数字に弱い、見ていないという事はそのプロセスが行われていないという事になります。毎月毎月数字を見てあーでもないこーでもないとやっていれば必然的に数字に強くなっていくものなのです。

にもかかわらずそうなっていないという事は残念ながらそういう事です。そのまま成り行き経営を続けても継続的に成長し続けるという事は望めません。運よく一発当たると言う事はあるかもしれませんが継続できなければいずれうまく行かなくなります。

という事で本日は決算書の中でも特に重要な貸借対照表の読み方の基礎の基礎、について今日は解説していきます。

貸借対照表は何を表しているのか?

貸借対照表は3つのブロックで構成されていて、左側(借方)に資産の部、右側(貸方)に負債の部と純資産の部があります。左側(借方)と右側(貸方)のそれぞれの数字の合計額は一致します。貸方、借方が対照になっているになっているので貸借対照表という名前になっているのです。英語で言うとBalance Sheet(略してB/S)ですが、これは貸方と借方がバランス(一致)しているという事を表しています。(以下略してB/Sと表記します)

ではこのB/Sの左側(借方)と右側(貸方)それぞれが何を表しているのか、と言うと左側(借方)の資産の部は会社が持っている全ての資産のリストです。現預金、機械装置、車両運搬具、土地、建物、株、全ての資産がここに表示されます。これに対して右側(貸方)が何を表しているのかと言うと会社の持っている資産(資金)をどのような形で調達して来たのかという調達源泉を表しています。

例えば純資産の部に計上されている資本金は株主から調達してきた金、繰越利益剰余金は会社が過去に稼ぎ出した利益で調達した金という事を表しており、負債の部に計上されている借入金は金融機関などの会社にとって外部の第三者から調達してきた金という事を表しています。負債は当然他人から調達してきた金なのでいずれ返済しなければなりません。つまり将来的に出ていってしまう金です。これに対して純資産は自分(会社の持ち主である株主)で調達した金なので返済する必要はありません、つまり会社に残る金です。

会社の金の調達源泉として他人の金である負債がほとんど、という状態ではほとんどの資産がいずれ社外に流出していってしまう為いつまで経っても資金繰りは楽になりません。資金繰りを良くしようと思ったら会社の総資産に占める自分の金(自己資本)の比率を高めていく必要があります。

まず今日は、貸借対照表は3つのブロックで構成されている事、左側(借方)と右側(貸方)にはそれぞれ意味があり右側(貸方)は会社の金の調達源泉を表している事、左側(借方)は調達してきた金の運用使途を表している事、調達源泉によって将来出ていく金なのか会社に残る金なのかが異なっており、残る金の割合を増やしていかないと資金繰りが楽になることは無い事。を覚えておいていただければと思います。

資金繰り改善の方法、つまり自己資本の割合を増やしていくためにはどうすればいいのかという話はまた次回お伝えさせていただきます。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。