2022.06.10

【コラム】自己資本の増やし方

資金繰り問題のシンプルな解決法

貸借対照表の左側(借方)が資産の部、右側(貸方)が負債の部及び純資産の部で構成されているという話は以前お伝えしました。そして会社の資金繰りを良くして会社に残る金を潤沢にしお金の不安から解放されるためには自己資本を増やす事が必要という話でした。

貸借対照表の右側(貸方)は会社の資金の調達源泉を表しており、負債の部に計上されている金額は金融機関からの借入金をはじめとして他人から調達した金、つまり、いずれ返す金、払う金、会社から出ていってしまう金であり純資産の部は会社の持ち主である株主から調達した金と会社が過去に稼ぎ出した利益で構成されており会社に残る金、つまり本当の意味での自分の金(だから純資産という)なので、会社が持っている総資産がいくらあったとしてもそのほとんどが他人資本と呼ばれる負債という状況ではいずれほとんどが流出してしまう、という事を意味しており資金繰りが楽になるはずが無いのである。

会社の資産全体に占める純資産つまり自己資本の割合を自己資本比率というがこの自己資本比率を高めなければ資金繰り問題は解決しない。会社が1億円の資産を全部で持っていたとしても90%が負債(他人資本)です、という状態ではいずれ出ていく金が9,000万円ということなので資金繰りは非常に厳しいのは想像に難くない。逆に自己資本が90%という状態であれば出ていく金がほとんどないという事になるので資金繰りは相当楽になるのである。

ではどうすれば自己資本を増やす事が出来るのか?

この答えは非常にシンプルで、何か裏技は無いのかという声が聞こえてきそうだが残念ながら裏技は無い。これしか方法が無いんだという事を理解して真剣に取り組む以外に道は無いのである。ではどうすれば自己資本を増やす事が出来るのか、それは利益を出す事です。

それ以外には基本的にありません、株主に出資してもらって資本金を増やすという方法もありますがそれを行ってしまうと話がややこしくなるので今日はそれは出来ないという前提で話を進めます。実際中小企業の場合には社長が毎年出資するような会社は無いですし、第三者に株を発行して資金調達するという事も不可能ではないですがハードルがかなり高いので資本金は増やさない前提で話を進めます。

資本金が増えないとなると利益を増やすしかないというシンプルな答えになるのです。そしてこの利益というのは税金を払い終わった後で最終的に会社に残る利益、つまり損益計算書の一番下に出てくる当期純利益の金額を増やすしかないのです。

そんなん出来るならしてるわ!という声が聞こえてきそうですが、それをしないと自己資本を増やす事は出来ず結果として資金繰りを改善する事も出来ないのです。そのことをちゃんと認識してじゃあ利益を増やすために何をするか、どうやって利益を増やすか、という視点で経営出来なければ会社が良い状態になることは有り得ないという事です。

税金を払った後で会社に残る利益を増やさなければならないので、節税思考も捨てる必要があります。細かい計算などを抜きにすれば法人の実効税率は約30%程度になりますので、課税所得(税引き前の利益)に対して30%が税金として納める事となり70%が最終的に会社に残る利益になります。

税金を払いたくない、という想いが強いあまり毎年毎年節税しまくって税引き前の利益をゼロにしていたら税金はゼロですが会社に残る金もゼロ、いつまで経っても自己資本は増えずに資金繰りが楽になることは有り得ないのです。

本当の意味でこの事に気付き例え納税額が多額になろうとも利益をたくさん出して自己資本を潤沢に積み上げ続けた会社だけが本当の意味で資金繰りに余裕のあるキャッシュリッチな状態、強い財政状態を実現できるのです。税金を払わずに資金繰りを改善する裏技なんてない、今日はその点だけでも覚えておいていただければと思います。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。