2022.07.01

【コラム】最後の救済策”資本性劣後ローン”

資本性の意味するところとは?

今回は前回のコラムでコロナ融資で傷んでしまった会社の最後の救済策としてお伝えした”資本性劣後ローン”について解説する。
資本性劣後ローン自体は実はコロナ前から存在はしていたがほとんど活用されていない、というのが実態であった。しかし今回話題としてあげさせていただいているコロナ対策型の資本性劣後ローンは非常に活用しやすいものとなっている。

資本性劣後ローンは日本政策金融公庫や商工中金といった政府系金融機関を利用した融資制度で借入の期間が5年1カ月、7年、10年、15年、20年と長期にわたっており期限一括返済となるため、融資期間中の元本返済が不要とされている。つまり融資を受けた金額全額を事業に回すことが可能となる。一般的な証書貸付では借入をした瞬間から返済が開始されるため、実際には借入を行った全額を事業投資に回すのが難しいのだが資本性劣後ローンはそれが可能となっている。

金利も優遇されており、例えば日本政策金融公庫の場合、当初3年間は0.5%3年経過後は借入年数と業績によって変動するが赤字の場合はずっと0.5%、黒字転換した場合は借入期間によって2.6%から最大で2.95%となっている。2.95%は高過ぎると考える方もいるかもしれないが、この制度は本来新規の借入など出来ないような状態に陥ってしまった会社であっても取り組みが可能となっており、貸す側の立場から考えると相当程度リスクが高い融資となるため決して高いとは言えない。

資本性劣後ローンを利用するメリットは借入期間中元本返済が無い事、金利が低い事ともう一つ大きなポイントがある。それがこの資本性劣後ローンによって調達した資金は金融検査上自己資本とみなされる。という所にある。つまり他の金融機関が会社を評価する際に資本性劣後ローンを資本とみなしてくれるため、評価が上がり、他の金融機関からの借入も受けやすくなる。という事が考えられるのだ。

基本的にメリットしかないと言える資本性劣後ローンだが利用のハードルは当然低くはない。根拠のある経営計画書を作りこんで金融機関に提出することが必要なのはもちろんの事、一番のハードルは民間金融機関の強調同意を得る事といえる。

協調同意って何?

協調同意と協調融資は言葉は似ているが内容は全く異なっている。
実は銀行マンでも正しく理解していない方が多いのだが、協調融資は金額や期間などの条件面を揃えて複数の金融機関が協調して融資を行う事であるのに対して、資本性劣後ローンの条件となっている協調同意は政府系金融機関から資本性劣後ローンを受ける際にそれと強調して民間の金融機関も支援をするという取り組みの事を言う。つまり金額や期間などを揃える必要はなく一緒に支援(融資)をするという同意が得られれば良いという事だ。民間の金融機関の担当者もこの事を理解しておらず協調融資と混同して支援できませんなどと言ってくるケースもあるのでちゃんと相手が理解しているのかどうかを確認して話を進める必要がある。

いずれにしてもコロナ融資を満額まで使用してしまい、新規で融資を引っ張ることが困難な状況にある会社の資金難を解決する最後にして最強の救済策ともいえる資本性劣後ローン、興味がある方は是非取り組んでみてはいかがでしょうか。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。