2022.07.05

【コラム】消費税のせいで資金繰りがキツいは嘘

消費税の仕組み

毎年多くの経営者の頭を悩ませている消費税の納税問題、”消費税さえなければもっと資金繰りが楽になるのに!”そんな風に考えている方も多いのではないでしょうか?しかし本当に資金繰りが厳しいのは消費税のせいなのでしょうか。この点について明確な答えがありますので言わせてもらいますが答えは”ノー”です。つまり資金繰りが厳しいのが消費税のせいという事は基本的に国内で一般的な商品、サービスを提供し商売をしている事業者であれば有り得ない。という事です。

もし消費税のせいで資金繰りが厳しい、と感じているのであれば消費税の仕組みや自社の数字、経営状況や財務の状況を全く理解していないと言っても過言ではないと言える状況にありますので、まずは消費税の基本的な仕組みについて理解する必要があります。消費税は消費税という名前の通り消費に対する罰金的な性格の税金であり負担しているのは消費者であって事業者ではありません。

例えば最終的な消費者である個人がアパレルを営んでいるA社で本体価格10,000円のTシャツを購入したとします。その場合実際に支払うのは消費税1,000円を上乗せした11,000円になります。消費者は消費税分の1,000円多く支払う必要が生じるわけです。では販売した側のA社はどうなるのでしょうか?本来10,000円で販売している洋服に対してお客さんからは消費税分を上乗せして11,000円を受け取ることになるわけです。つまり本来受け取れるはずの金額おり多くの金が会社に入ってくることになります。

資金繰りを悪くするどころかむしろ資金繰りという意味では本来よりも売上代金を受け取った時点では良くなっているのです。ではその後この受け取った1,000円の消費税はどうなるのかというと、あくまでもこの1,000円はお客様から預かっているという状態の金であり会社の儲けではありません。仮に先ほど販売したTシャツを本体価格5,000円で消費税込み5,500円で仕入れたものだったとします。1年間の取引がこのTシャツを1枚仕入れて売っただけという事であった場合消費税はどうなるのか、というとお客さんから預かった消費税1,000円から仕入れ先に支払った(仮払の状態になっている消費税)500円をマイナスした500円を税務署へ納税する事になる。

個の税務署に納める事となる消費税の500円はもし日本に消費税というものが存在していなければA社に入ってきていなかった金であり、消費税の納税というのはその本来は無かったはずの金を納めているに過ぎないという事である。A社の資金繰りを消費税が悪くしているという事は一切ないという事がお分かりいただけただろうか?むしろ期中はずっと消費税を預かっている状態になるため資金繰り的には本来無いはずの金が入ってくることになるため、最終的には出ていくとしてもプラスの影響しかないのだ。

会社に残る利益について考えてみるともう少し理解しやすいかもしれない。もし日本に消費税が存在しなかったとすると5,000円で仕入れたTシャツを10,000円で販売したので会社に残る利益は5,000円となる。では今の日本のように消費税が10%だった場合はどうなるのか?仕入時に消費税含めて5,500円支払い、販売時に消費税含めて11,000円受け取り消費税を500円納税すると会社に残る金はやはり消費税が無い場合と同じく5,000円という事になる。

何故消費税のせいで資金繰りが苦しいと錯覚してしまうのか?

答えは簡単、金を使い過ぎているからに他ならない。先ほどのA社の事例で言うと会社に残る利益は5,000円なので使える金の上限は5,000円となるが消費税があると期中消費税を預かっている状態になるため5,500円使える状態になってしまう。そうなったとしても本来使える5,000円の範囲内にキャッシュアウトを抑えていれば何の問題もないのだが、本来使えないはずの(預かっているだけの)消費税分の500円も併せて5,500円使ってしまっているのだ。そうなると当然実際納税するタイミングで金が足りなくなってしまうので消費税の支払いがキツいと感じてしまうのだ。

そのような事にならないためには、ちゃんと期中の正確な数字をタイムリーに把握できる体制を構築し、預かっている状態の消費税がいくらあるのかを分かるようにしておく、そして同じ口座に金を入れておくと使ってしまうという事も事例としては多いので納税用に別口座を用意しそこに消費税分は移してしまい手を付けられないようにする。というのも一つの手である。いずれにしても資金繰りが回っていないのであればその原因を正しく特定して改善していく事が経営者には求められている。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。