2022.08.02

【コラム】スクラップアンドビルド

撤退は最も難しい経営判断

経営者が行っている仕事の中には、従業員に任せても大丈夫な仕事もあれば経営者がやるべき仕事もある。リソースの問題で難しい事もあるが従業員に任せられる仕事は本来経営者がやるべきではなく、経営者は経営者しか出来ない仕事に集中すべきである。その中でも経営者しか出来ない仕事の一つとして事業のスクラップ、つまり撤退がある。事業を撤退するという判断は基本的には経営者にしか行うことは出来ない。経営者にとっても最も難しい経営判断の一つである。

新規の事業の立ち上げ、事業の継続、そして撤退、この3つを難易度が難しい順番に並べると間違いなく撤退⇒立ち上げ⇒継続という順番になる。事業を継続する、という事は何の判断もいらない為、最も容易な選択肢である。事業の立ち上げも内容によって難易度は異なるものの撤退と比較すると容易に行うことが出来る。しかし撤退という経営判断を下すのは難しい。経営者は事業を立ち上げた以上はすべて成功させたいと思っている。最初から失敗する事を目的として事業を立ち上げる事はない。当然立ち上げた事業を成功させるために最大限の努力をするのも当たり前のことだ。

最大限の努力を続けたとしても必ず失敗する事はある。むしろ新規の事業立ち上げは失敗する事の方が多い。これは言葉の定義の問題でそのやり方ではうまく行かない、というデータが取れたという事は成功ともいえるからだ。会社を倒産に追い込んでしまう程の致命傷を与えるような失敗をしなければ、そのデータを元に次はもっと成功確率を上げて事業に取り組むことも出来る。だがうまく行っていないにもかかわらずダラダラと事業を継続し損失を垂れ流し続けていると、最終的には倒産となって会社自体が撤退に追い込まれ二度と挑戦すらできない状態になってしまうかもしれない。

そんなことにならない為にうまく行かないという事が分かったのであれば、致命傷になる前に撤退するという経営判断を下さなければならないのである。特に複数の事業を展開していたり、多店舗展開をしているような会社の場合には収益を生み出す部門ごとにしっかりと業績を把握して、赤字かつ改善の見込みが無いという事が分かった段階でスクラップ、撤退し、そのリソースで別な事業を始めたり、新店舗を作ったり(ビルド)していかなければならない。間違っても不採算部門を残し続けその赤字の穴埋めを他の部門からの利益で行うというようなことをやり続けてはいけない。

そうならない為にもスクラップアンドビルドを定期的に行い全ての部門で利益を出す、そういう姿勢で経営を行っていく事が求められている。このような経営判断、特に撤退を決めるという判断をするためには必ずタイムリーに正しい数字を把握できる事が必要不可欠、その状態は記帳代行では実現しない為、もし出来ていないのであれば自社の経理体制(経営管理体制)を構築するところからスタートして、これから益々早くなる変化に対応できるようにしていきましょう。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。