2022.09.30

【コラム】社長その数字デタラメですよ

月次決算やってますか?

会社を経営していくうえで、経営を行った結果として出てくる数字をタイムリーに把握する事は非常に重要です。上場企業などの大会社は当然として儲かっている中小企業も月次での振り返りとその結果に基づいた打ち手の検討を必ず行っています。数字を見ずに経営する事は不可能であり経営者がやるべき最も重要な仕事の一つが正しい数字の把握とそれに基づく打ち手の検討、つまり経営判断です。現場の最前線で汗を流す事は本来経営者の仕事ではありません。

この月次での正しい数字の把握を行う為には当然経理体制を構築することが必要不可欠です。経理というと単なる事務作業をする部署で稼ぐ部門ではないため重要性が低いという風に考えている方も多いですが、それは完全に間違いです。経理体制というのは即ち経営管理体制の事であり、これが構築されていないという事は経営管理体制が無いという事。そんな状態で経営を良くしていく事、未来を良くしていく事、理想の未来を実現する事など出来るはずが無いという事に気付く必要があります。

うちはまだ小さいから、とか稼げるようになったら、規模が大きくなったらちゃんとするというようなことを考えている方もいますが、順番が逆です。経理体制を構築して適切な経営判断を行っていくから成長するのです。ラッキーで儲かって大きくなる事もありますが、そこは本来運任せにするような所ではありません。新規事業を立ち上げてうまく行く確率はかなり低いですが、適切な経営を行えば当然ん生き残る確率を上げていく事は出来ます。

記帳代行で経理処理は丸投げしているというケースも多いと思いますが、記帳代行で丸投げでは正しい数字が出てくることはほぼありません。経営を行っていくうえで最も重要な情報という武器を失うことなります。数字が読めない方は会計事務所が出してくる数字何だから正しいに決まっているという希望を持っていますが使える数字がタイムリーに出てくることなど無いと断言できます。

相当高いフィーを支払ってほとんど専属の経理職員を雇っているのと等しいような形でフォローしてもらっているのであればもしかすると正しい数字が出てくるかもしれませんが、月3万円ぐらいのフィーでタイムリーに正しい数字が出てくることなどありえません。それをやっていたら100%会計事務所が赤字になるからです。比較的マシなケースで翌月15日~末ぐらいまでに前月の資料をまとめて渡して、そこから会計事務所が作業に入り数字が出てくるのは2~3カ月後、ひどい場合は半年遅れ1年に1回のみなどというケースも多いのではないでしょうか?

3カ月遅れの数字など経営判断するのに何の役にも立ちませんし、何度も言っている通り正しい数字が出てくることはほぼありません。これを聞いても信じられない、正しい数字が出ているはずだ、という方も多いと思います。そこで、正しい数字が出てきているのかどうかを判断するポイントとして5点あげさせていただきます。下記の5つのポイントを満たしているか確認して見て下さい。

ちなみに月次の処理と決算で会計事務所に渡す書類ややらなければならない処理が全然違う、つまり年次の本決算の時だけやたら作業が多くて大変だ、という事であれば月次は正しくないという理解で間違いありません。では5つのポイント上げさせていただきます。

①発生主義で処理している事。
売上や各種経費を計上するタイミングはその事象が起こったタイミングです。例えば建設業であれば工事が完了して引き渡しが完了した時点で売上を計上しなければなりません。入金が2か月後だろうが3カ月後だろうが関係ないのです。もし入金時に売上計上されていて経費の計上タイミングも全て出金時という事であればそれは現金主義という処理であり、全く正しい処理ではありません。ただ現預金の出し入れを記録しているに過ぎず認められた処理ではありません。

②売掛金や買掛金の管理を適切にしている事。
先に述べた①の発生主義と若干被りますが、現金商売でない場合売上の発生タイミングで売掛金という債権が発生し、売掛金を回収すると債権が無くなり現預金が増加するという処理を行います。買掛金も同様です。もし期中売掛金の残高が全く動かず決算時だけ調整しているという事であれば期中の業績が正しくあらわされる事はありません。

③消費税は税抜経理で処理する。
消費税の処理方法は税込経理と税抜経理の2種類の方法がありますが、税込経理で処理を行っている場合期中正しい業績を把握する事が出来なくなります。必ず税抜経理で処理してください。税込経理を採用する理由は会計事務所の処理が楽だからという理由以外になく会社にとっては何のメリットも無い処理になります。

④棚卸資産の残高管理。
棚卸資産の金額に重要性がある場合、期中の増減が大きい場合には必ず月次で棚卸を行う必要があります。実地棚卸は難しいという場合でも帳簿棚卸を行い理論上の在庫の金額を適切に把握し毎月末に正しい棚卸資産残高に洗い替えていく必要があります。もし期中棚卸資産残高が全く動いていないという場合には月次の業績は正しくないという事になります。

⑤年払経費の月次費用計上をする事。
例えば保険など1年分の費用を一括で支払っているようなケースがあると思いますが、これを一時の費用ととしてしまうと支払月だけ業績が著しく悪化するという事になり月次の業績を正しく把握する事が出来ません。減価償却費や賞与も同様です。これらの金額に重要性がある場合、1月分の金額を把握して毎月計上しなければ月次の業績を正しく把握できず、期中儲かっていると思っていたら決算月だけ大量の費用が発生してしまい実は赤字でしたなんてことが発生してしまいます。

いかがでしたでしょうか、これらはほんの一例ですが、最低限こういった処理が適切になされていなければ月次の数字は何の意味も持たないゴミ同然のものとなってしまいます。経理体制、経営管理体制を構築し正しく成長できる体制を構築していきたいですね。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。