2023.08.20

【コラム】信用金庫は救いの神!「信金との付き合い方」虎の巻3か条

今回は、金融機関の話をしていきたいと思います。金融機関の中でも、信用金庫についてのお話です。

皆さん、金融機関の種類について理解してますか。金融機関と一口に言っても、銀行や信用機関、信用組合など、いろいろ種類があるのです。他には、証券会社や保険会社も金融機関という風に呼ばれますね。

信用組合、信用金庫、銀行の3つを合わせて、皆さんは銀行という風に言うことが多いのではないでしょうか。ただお金を預けておくだけだったら、この3つはほとんど変わりがありません。

しかし中小企業経営者の皆さんにとっては、大きな違いがあるのです。この違いと、信用金庫との付き合い方を知っておくことが、 事業用の資金を調達しやすくなったり、事業を進めていく上で差がついてくるポイントでもあります。

ではまず、銀行の種類について少しお話していきたいと思います。
まず、都銀です。都銀というのは、メガバンクです。青い銀行と赤い銀行、緑の銀行があります。みずほ、UFJ、SMBCです。この3つが、いわゆる都銀と言われるものです。

その下に来るのが、 地銀です。地銀の中でも、規模が若干小さいところを第二地銀という風に言ったりします。地銀の中でも、ほとんどメガに近いような位置に、りそな銀行があります。ほとんどの中小企業が付き合うのは、地銀か第二地銀が多いでしょう。

銀行とは別に、信用金庫や信用組合と呼ばれるものがあります。信金、信組と略して言ったりします。 他に、労働金庫や、商工中金というものもあります。

これらの信金、信組、労金、商工中金を合わせて、中小企業金融専門機関と言います。

信金と銀行 その違いは?

では、信金と銀行の違いは何でしょうか?
形式的な話しをすると、銀行はいわゆる株式会社です。株式会社ということは、株主の利益が最優先されるということです。銀行は営利企業で、大企業を含めた全国の企業と取引をすることが可能という風になっています。 

これに対して信用金庫は株式会社ではありません。地域の方々が会員になって、地域の反映を図る相互扶助を目的とした共同組織です。主な取引先としては、大企業ではなく、中小企業、中小零細企業、その他個人や個人事業主です。

株主というものは存在していませんので、株主の利益ではなく、地域社会の利益、地域の繁栄というところが優先されます。

例えば、銀行や地銀などの場合、決算書の中身を見て、決算書の銀行格付けが悪かったら、融資不可という風に判断される場合があります。

しかし信金の場合、この会社は今は業績が悪いけど、「雇用をたくさん生み出している」、「地域社会にとってこの会社はあった方がいい」という風に判断することがあります。

今の状況が悪くても支援した方がいい、どうやって立て直していこうかというところを考えてくれるという違いがあるのです。

信金は手厚い支援、都銀はドライ

地域というところがポイントで、1番の違いでもあると思います。銀行というのは、基本的に全国の企業と取引できます。 その為、地方銀行が都内に支店を出して、都内の企業と取引をしたりしています。

これに対して、信用金庫というのは、もう活動エリアが決まっています。定款にも明確に書いてあります。 皆さんの企業も定款を作ってると思いますが、信金にも定款があり、そこに活動エリアが書かれています。

そこのエリアでしか活動できないんです。信金のホームページを見ればエリアが書いてありますので、是非見てみていただければと思います。

例えば、茨城に本社を作って大きくしていこうと言って、茨城の信用金庫と取引をする。そして、会社が大きくなってきて、都内に進出しないとダメだよねと、都内に本店を移したら、もう地元の信金とは取引できなくなってしまいます。

もちろん、信金で元々借りてたものを都内に出て行ったから返せという風にはならないですけれども、新規の取引は、もうできなくなってしまうということです。

その代わりに、地域内の企業を手厚く支援していますよというのが、信金です。都銀というところはかなりドライで、中小企業はほとんど相手にされないということが多いと思います。

都銀ほどではないにしろ、地銀も同じようなところはあります。さっきも少しお伝えしましたが、銀行格付け、つまり、決算書の内容の数字が悪かったら、基本的にはお金を貸してくれないわけです。

もちろん信金も、業績がどうこうというのは、当然見ています。貸したお金を返してもらえるのかというのは当然見てますけれども、どうにか支援できないかなというのを真剣に考えてくれたりするところがあるのです。 

やはり銀行にもランクがあって、都銀が1番上で、その下に地銀、第二地銀、信金、信組があり、なんとなくの序列があります。中小企業側は、やはり都銀と取引したいなという風に思われてる経営者の方が多いでしょう。

銀行側もやはり、企業をランク付けをして見てるわけです。大企業、中堅企業、中小零細企業、 中小零細の中でも、業績がいい企業か悪い企業かを見て、取引したいと思う会社かどうかを銀行側も見ているわけです。

やはり、会社の規模が大きかったり、状況が良ければ、上のランクの銀行と取引できるようになっていきます。小規模で、業績も安定してないという状態だと、やっぱり都銀や地銀などの上のランクの銀行は、なかなか相手にしてくれないわけです。

そういう銀行に相手にしてもらえないような企業であっても、信金であれば真剣に考えてくれるという特徴があります。では、信用金庫とどうやって上手に付き合っていけばいいのか、というポイント3箇条をお伝えしたいなという風に思います。

信金との付き合い方その1 メインバンクにすべし

その1。これが1番大事です。まず、メインバンクにすべしということです。経営者の方は都銀と取引があった方がかっこいいというようなイメージで都銀や地銀と取引したがります。

しかし規模の小さい会社、大体年商で1億から3億円以下ぐらいの会社の規模であれば、信金で十分なので、信金とがっつり組んで関係性を深めていくことをおすすめします。

会社の状況にも当然よりますが、プロパー融資で5,000万ぐらいは信金でも貸してくれます。これに加えて、保証協会の枠が8,000万円あるので、1億3,000万円ぐらいまでであれば、信金だけでも融資が受けられるのです。

年商3億円ぐらいの規模であれば大体それぐらいで事足りますよね。銀行と付き合っていく上で、「なんか他の銀行と競争させた方がいいんじゃないか」とか、「いろんな銀行を増やしていった方がいいんじゃないか」などの意見もあります。

もちろんそういう考え方もありますが、信金に関して言うと、競争させてどうのこうのということを考えるより、一個とがっつり組んでおいた方がいいと思います。

これは規模が小さい会社の話です。先ほどプロパーの話をしましたが、信金でお金を借りることになったら、メインは保証協会付きの融資になってきます。

保証協会付きで借りるのであれば、他の銀行も保証協会付きの融資で貸してくることになり、競争させる意味が全然ないのです。

どちらで借りても保証協会が最終的に審査することになるので、あえて敵を作る必要性がありません。信金とがっつり組んでやっていった方がいいというのがまず1つです。

信金との付き合い方その2 プロパー融資を取るべし

そして、信金との付き合い方のポイントその2、プロパー融資を取るべし。
保証協会付きの融資というのは、例えば会社が倒産しても、保証協会というところがその債権を保証してくれる、保証人みたいなものです。

信用金庫にとっては、たとえ貸した会社が倒産しても、そのお金は保証協会から入ってきます。信用金庫にとっては、保証協会付きだったらリスクがないということになります。

これに対してプロパーは、信用金庫側がリスクを負うということですね。 貸した会社が倒産してしまったら、その貸した銀行であったり信用金庫にその分損失が発生してしまいます。そういうものがプロパーだという風に覚えておいていただければいいと思います。

小さい会社だとプロパー融資はハードルが高いんですが、まずはプロパー融資を狙うべしということです。

「信用金庫の融資は保証協会がメインって言ったじゃん」という話なのですが、まずはプロパーの融資に挑戦して、その後保証協会を使うという流れの方がいいと思います。

保証協会付きの融資とプロパー融資はどっちが会社から見て融資を得るハードルが高いかというと、当然プロパー融資の方がハードルが高いです。

銀行を調べていくと、いろいろな制度融資というものがあるのですが、基本的にはこの制度融資というのは、保証協会ありきのものになっています。

先ほども言いましたが、保証協会付きの融資であれば、銀行も信金もリスクを負わなくて済む。保証協会が付くなら保証協会をつけといた方がいいです。これは、金融機関側の立場としては当然です。

よって、保証協会付きのほうが簡単に融資が出しやすいのです。保証協会がついてくれる、保証してくれるのであれば、銀行がお金出して全然返ってこなかったとしても、保証協会から代理弁済を受けることができます。

しかし、先に保証協会付きの融資を引っ張って、その枠を使い切ってからプロパー融資を受けるのは、正直難しいです。当然会社の状況によりますが、会社が相当儲かっていて、いい状態であれば、 先に保証協会の枠があっても、プロパーを受けられると思います。ただ、なかなかそんな会社は少ないです。 

しかし、逆なら可能性があります。プロパーで先に銀行から引っ張っておいて、プロパーはもう難しいという状態でも、保証協会付きであれば追加で融資受けるという可能性があるわけです。

まずはプロパーの融資に挑戦して、その後保証協会を使うという流れの方がいいと思います。 そういったことを何も言わず、単純に1000万必要だから1000万貸してくださいと話を進めていくと、 ほぼ保証協会付きの融資で話が進んでいってしまうでしょう。

プロパーの融資希望してるんですよということをちゃんと伝えて、話を進めていただいた方がいいと思います。プロパーで1億円借りるというのは、信金でやるのは相当難しいと思います。

ハードルがかなり高いですけど、5,000万円ぐらいまでであれば、信用金庫でも普通にプロパーで出せたりしますので、まずはそこに挑戦してみて下さい。

信金との付き合い方その3 取引を信用金庫に全部集約すべし

そして、信用金庫との付き合い方の最後、その3。取引を信用金庫に全部集約すべし。これは、その1の「メインバンクにすべし」とほとんど同じような意味です。 例えば、従業員さんへの給与の支払いの口座や、買掛金の支払い口座、売掛金の入金口座など、こういう会社の取引がいっぱいあります。

これらの取引の口座を信用金庫に集約していくのです。得意先に銀行を指定されてる場合はしょうがないですが、自分でコントロールできる範囲内であれば、基本的に全部の取引を信用金庫に集約していくということをやっていきます。 

信用金庫で振込をすると、ネットバンクや大手の金融機関と比較すると、手数料が若干高かったりするのです。しかし、手数料という小銭をちょっと得するよりも、関係性を深めていくことの方が重要です。担当者さんもそのほうが喜んで、真剣に取り合ってくれます。 

その他、融資への影響はないと思うのですが、定期積金なども信用金庫だと勧められると思います。少額でもいいので、やっておいた方がいいです。 

信金、信組だと、毎月1万円の定期積金を、毎月、毎月、担当者が集金に来てくれます。そうすると、毎月必ず会って、接点ができる。話したり、現況をお話ししたりとか、こちらの状況を伝えたりとか、そういう接点を毎月持てるわけです。 

金融機関との繋がりを深くしていくという意味で、すごくいいと思います。 5万、10万など、大きな額をやる必要はありません。1万くらいの少額でいいので、毎月1回必ず会う習慣を作るというのも大事かなと思います。

うちもちなみに、1万円でやっています。毎月担当者が来てくれて、1万円を手渡して判子押ししてもらうというのを未だにやっています。

経営者の方の多くは、地銀であったりメガバンク、都銀と付き合いたいという風に思いますよね。

でも、必ずしもそっちの方がいいとは限りません。 より大事にしてくれる方との関係性を深めていった方がいいのではないでしょうか。
年商ベースで言ったら、3億円ぐらいまでであれば、信金で十分かと思います。そのクラスだとそんなに大きな額は借りないので、地銀と取引しようと思うと、やはり銀行にとっては下位の取引先になるわけです。要は、重要な取引先じゃないという感覚になっています。あんまり、大事にされないのです。 

これが、5億、10億という風に大きくなっていくと、逆に信金で対応できなくなってくる部分があります。そういったところまできたら、地銀で取引を増やしていくという流れでいいのではないでしょうか。

メガバンクや都銀に関しては、取引のハードルがかなり高いです。 何百億の金額を一気に1社に貸すという感じでやってるので、「1,000万円貸してください」は、正直相手にされません。

年商10億ぐらいの会社でも、ほとんど相手にされないと思った方がいいです。 20億、30億、50億、100億と売り上げを増やしていった段階で使い始めれば十分でしょう。

それでも、メガバンクの中では下位の取引先という扱いになりますので、そんなに大事にはされないということがあります。その段階まで行ったら、地銀とがっつり組んで地銀に大事にされながら成長してく。どんどん成長して大きくなったらメガバンクとがっつり組んでやっていく。会社のステージに合わせて金融機関も変えていった方がいいと思います。

勉強の話でもそうなのですが、高校でトップクラスの学校に行って最下位になるより、ちょっとレベルの低い高校に行って、その学校の中で上位に入る人の方が伸びるのです。ちょっと頭いいからと進学校に行って、そこでビリになって落ちこぼれるよりも、進学校じゃないけどまあまあの高校に入り、そこでトップ取ったら、その人は伸びていきます。

メガでぞんざいな扱いを受けるよりも、地銀や 信金に大事にされる方が、会社としてもモチベーションが上がって伸びていくでしょう。
会社が伸びるタイミングに合わせて、取引する金融機関も徐々に変えていくと良いと思います。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。