2023.05.15
【コラム】今解決すべき中小企業の経営課題の解決のヒント
経営課題の解決のヒント
中小企業が抱えている多種多様な経営課題。その解決のヒントは一体どこにあるのでしょうか。ヒントを探しはじめる前にお伝えしておきたいこととして、企業を取り巻く内外環境には、常に変化があります。とくに中小企業は、その変化に合わせて自社事業・サービスなどを変えていかないかぎり将来的な縮小が避けられないでしょう。
人口減少、高齢化といった「国内条件の変化」を受け止め、グローバル化や海外情勢など「国外条件の変化」も柔軟に受け入れ、事業モデルの転換や新たなビジネスチャンスに応えることが必須だということをまず念頭に置いていただけますと幸いです。
経営課題を生じさせる要因・背景とは?
最初に、経営課題が生まれる主な要因・背景を考えてみましょう。
・生産年齢人口の減少
日本は、急速に少子高齢化が進んでいます。国内の出生数は2022年に80万人を割り、2023年4月に「国立社会保障・人口問題研究所」が発表した「2070年には日本総人口が約8700万人、2120年には5000万人を割る」という将来推計人口の結果が、広く話題となっています。高齢化が進むことによって日本の生産年齢人口は2030年には約6,700万人になる見通しだという調査結果もあり、社会経済の担い手は減る一方です。生産年齢人口の減少は、人材不足・採用難という経営課題を内包しています。
・DX化
最新テクノロジーをいかに活用するかは、企業にとって目下の課題でしょう。DX化の導入は企業ごとに対応が委ねられており、積極的に進めている企業とそうでない企業には導入度合いに大きく開きがあるようです。AIやロボット技術などの最新テクノロジーの活用に出遅れてしまうと、競合他社に大きく引き離されてしまい、最悪の場合には事業撤退につながる恐れがあります。
・グローバル化
自社のライバルは国内企業だけではありません。インターネット普及によって地理的な制約が解消され、企業活動のグローバル化が大きく進みました。国際市場での競争も狙っていくなかでは、他社との差別化を図る必要があります。いかに独自のサービス・製品を開発できるかが課題になってくるでしょう。
・消費者ニーズの多様化
インターネット検索機能やSNSの普及によって、あらゆる情報を手軽に得られるようになりました。誰もがそれぞれの嗜好に合った商品・サービスを探し出して実際に利用するようになった現在、多様化する消費者ニーズを企業側はいかに素早く的確にとらえ、ニッチ分野における独自性の高い製品・サービス開発をすることは重要な課題だと言えます。
経営課題と解決のヒントとは?
ここからは、先述の要因・背景を踏まえたうえで経営課題解決のヒントを探っていきます。
・人材不足の解消
企業においてもっとも重要なのは人であることは言うまでもないことですが、先ほども申し上げたように生産年齢人口の減少は進む一方です。解決の糸口としては、職場環境の改善が有効でしょう。とくにここ数年、転職サイトにおいては「リモートワーク」「フルリモート」が企業検索の人気ワードであり、応募者の関心の高さが読み取れます。リモートワークや育児・介護休業制度、フレックスタイム制などの柔軟な働き方を取り入れて多様な働き方が叶う環境を整えることは、求人への応募者数を増やすことにつながり、さらに、すでに働いている社員の人材流出を防ぐことにもつながります。
すでに人手不足に陥っている状況でしたら、IT活用やアウトソーシングによる業務効率化を進めてみてはいかがでしょうか。たとえば、2023年話題の「ChatGPT(チャットGPT)」、最近よく耳にするという方もいらっしゃると思います。ChatGPTは、メールの草案やキャッチコピーの案出しといった文書作成やリサーチを得意とする対話型人工知能です。機械が得意な部分は機械に任せて、人は人でなければできない新規事業の立ち上げや業務フローの改善などに注力するなど、新しい技術を共存することを勧めたいです。IT化の推進は少ない人員でも業務をまわせるような省人化の仕組みづくりにつながり、前述した「生産人口減少問題」への対策にもなるためです。
システムによって業務効率が大きく改善されることは多いです。その一方で、新しいことを始めるときには一時的に現場に負荷がかかることは否めませんので、事前に現場との話し合いを大切にしましょう。社員のみなさんからも「これは現場には合わない」「こんなツールを使いたい」という要望が出るかもしれません。
・収益性の向上と営業力の強化
いかに事業のシェアを拡大し業績・収益を伸ばしていくかは、企業にとって常に大きな課題です。収益性を伸ばすためには集客の仕組みの確立や営業力アップが課題解決のカギになります。まず、集客の仕組みやマーケティング施策を強化してはいかがでしょうか。
テレアポ営業で商品・サービスを提案する手法は、すでに一昔前のやり方と言われています。担当者のトークスキルや経験によって結果に大きな差が出てしまいますし、ノウハウは個人に蓄積されます。「マーケティングオートメーションツール」と呼ばれる顧客情報をクラウドやシステム上で一元管理するツールを導入すれば、集客の成果は企業側で管理ができます。顧客情報は俗人化せず、過去のアプローチ履歴等を関係者全員で共有することができ、蓄積された情報を分析して確度の高いリード顧客のみにリソースを割くなど効率的なアプローチができます。
中小企業では人材リソースが限られているため、受注率を高めて売上高を伸ばすためには、一人ひとりの営業力を伸ばすことも不可欠です。具体案として、営業に必要なスキルを見直し、それに合わせてセールス組織の体制を見直すことなどが有効です。また、外部主催の研修会・セミナーへの参加を促し、営業スタッフのインプット機会を増やすことも勧めたいです。こうした社員の成長・インプットへの投資は、収益向上に向けた有用な投資になり、決してムダにはなりません。
・ブランド力の向上
中小企業は、資本力のある大企業と比べると価格競争の面では確かに不利ですが、唯一無二のポジションが確立できれば一定の固定客を獲得することは可能です。自社の強みを知り、その強みを活かしてどんな商品・サービスを提供すれば喜んでいただけるのかを考えて行動を起こしましょう。
日本には、ニッチ分野において適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発をおこない、グローバル市場でトップの地位を築いている企業が多数存在します。2020年、経済産業省は「新たな厳しい経済環境の中においてもニッチ分野で勝ち抜いている企業や、国際情勢の変化の中でサプライチェーン上の重要性を増している部素材等の事業を有する企業」を「2020年版グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」として、113社を選定しました。中小企業の場合は「特定の商品・サービスについて、過去3年以内において1年でも、概ね10%以上の世界シェアを確保したことがあるもの」をグローバルニッチトップ企業の定義としています。ニーズが多様化している今、ニッチ分野でも確実に必要としている顧客がいる商品・サービスを高品質で提供できるかどうかがポイントです。
大切なのは、いかにアイデアを出しやすい風土・挑戦しやすい風土をつくれるかです。経営者への意見や新規事業のアイデアを社内で公募するのもいいでしょう。最初から結果に結びつくことは稀かもしれませんが、失敗したときに攻められたりペナルティがあるような環境では、人は新しい挑戦をしようという気持ちにはなりません。トライアンドエラーを繰り返すなど粘り強い取り組みのなかからイノベーションが生まれやすい会社をつくっていきましょう。
経営課題を発見・解決するのは難しい?
多くの打開策の例をあげましたが、これらの取り組みを始める前にまずは自社の経営課題を発見することが非常に重要です。しかし、本来やらなければならない業務をこなしながら自社内の課題を発見・分析することは、容易ではないでしょう。そして原因が見つかったあとも、その課題解決には専門的知識が必要になることが多いため、社員の人間だけでは課題に取り組む余力が足りないと悩む社長も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そんなときは外部の専門家に相談し、客観的な視点で経営課題を見極めてもらうことも一案です。内部の当事者では見極めにくい根本的な課題を見つけて、本質的なアプローチで解決に向けて伴走してくれるような経営コンサルタントは、います。できることならコストをかけずに社内だけで解決したいというお気持ちもよくわかりますが、もし行き詰まりを感じたときには、経営コンサルティングを依頼することでより効率的で効果的な経営改善が期待できます。
変化の早い現代において問題を先送りにすることはあまり得策とはいえません。時代の変化に適応できる企業になるために、いまできることから始めてみることを提案いたします。