2022.07.08
【コラム】現預金はいくらあれば安心できるのか?
絶対に潰れない強い会社とは?
企業経営を行っていくうえで最も重要な事、それは企業を継続・存続させ続ける事、つまり潰れない事が最も重要といえる。経営者の皆様はそれぞれ様々な目的・目標を持って日々経営活動を行っているが、会社が倒産してしまってはその目的や目標を果たしたり夢を実現する事は出来ない。経営目的を達成する前提条件として企業を継続・存続することが必要になるのだ。
では、不況や不測の事態が起こっても倒産することなく生き残り続けられる強い会社、とはどんな会社だろうか。
その答えは逆から考えるとおのずと導き出される。つまり会社はどのような状態になるのか倒産してしまうのだろう?
答えを1つに限定する事は出来ないが、ほとんどの会社の倒産原因は共通している。会社は金が無くなると倒産するのだ。金が無くなれば従業員への支払い、仕入れ先への支払い、銀行への返済、税金の支払い、あらゆる支払が出来なくなり結果として事業継続が出来なくなってしまうのだ。という事は基本的に金があれば倒産しないという事だ。
そこで、何があっても生き残り続けられる強い会社として自己資本比率が高く現預金を潤沢に持っている会社と定義している。自己資本比率が高ければ相対的に負債は少なくなるため出ていく金は少なくなる。その状態で手許の現預金を潤沢に持っていればちょっとやそっとの事で資金ショートする事はまずないと言える。もちろん災害や万一の事故などにあってしまう可能性はゼロではないのでそういった自分の力ではどうにもできない部分については保険などで別途リスクマネジメントする必要がある。
自分の力でどうにかなる部分、資金繰りに関しては経営者が正しい知識を持って意識的に行動をしていく事でリスクを減らすことが可能だ。
でも自己資本比率が高くて現預金潤沢といわれても、実際にいくら現預金を持っていればいいのか、基準が欲しいという方もいるだろう。
そこで私が提唱しているのがまずは第1段階として固定費の6か月分又は人件費の10か月分のいずれか多い方(借入金の元本返済額含む)を手許に持っておきましょうという事である。固定費の6か月分又は人件費の10か月分のキャッシュをを手許に確保できていれば、不測の事態が起こって一時的に売上が下がったとしてもすぐに倒産するようなことは無くなり、立て直しにかける時間を確保することが出来る。
これに対して現預金残高が固定費の1ヶ月分以下程度の低水準になってしまうと、仮に得意先からの入金が1月遅れてしまうと途端に厳しい状態に置かれてしまう。もちろん入金管理や与信管理は徹底的に行う事は必要だが、それでも入金が遅れたり回収できない債権が発生するはゼロではない。
そういった不測の事態にすぐに倒産してしまうような事なく安定した経営を行っていく基準として、まずは固定費6か月分のキャッシュを手許に確保する事を目指して欲しい。それを達成したら次の段階として固定費2年分のキャッシュを手許に持つという事を目的としていただきたい。
その状態を実現できれば仮にコロナなどの影響をもろに受けて1年間売上がゼロになっても潰れない強い会社といえる。
上場企業など外部の株主が存在する会社だと手許キャッシュを多額に持っているとそれを運用してもっと利益を出せ、と株主にツッコまれてしまう可能性もあるが、中小企業の場合には社長が唯一の株主という事も多く手許の現預金が多額にあっても文句を言う人はいない為、会社を継続・存続させるために現預金を積み上げていく事はむしろ推奨されるべき行為であると考えられる。
ちなみに、現預金残高の多寡を図るもう1つの指標として月商倍率というものがある。
これは月の売上高(月商)の何か月分の現預金を持っているのかという事を表している。月商の3か月分の現預金を持っておきましょうというコンサルタントなども多くいる。この点に関しては業種業態など細かい点を考慮して判断した方が良い。この指標がハマる会社もあれば実態と全く違う数字となってしまう可能性があるという事だ。例えば卸売業など原価率が高い業種の場合利益は少ないが売上高は非常に多くなる。
こういった業種にも一律に月商の3か月分などの指標を用いてしまうと実態とかけ離れた数字が導き出されることがある。例えば卸売業で月商が20億円、原価率が90%、固定費が月1億円という会社の場合月商の3か月分だと60億円の現預金が必要となるが、もし仮に不測の事態が発生売上がゼロになってしまった場合には同時に仕入もストップされることになるため、そこまで多くの金額は必要ないと考えられる。売上がゼロになれば動く金は基本的に固定費のみとなる。そうなった場合月額の固定費は1億円のみなのでそれを賄える程度の額があればいいという事になり60億円では基準としてはふさわしくないという事になる。
このように実際の所は一律の基準を設けるのではなく会社の実態を見て判断していく。
という事が必要になるが、まずは目安として固定費6か月分を目指してみてはいかがだろうか。
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