2025.04.15

【コラム】コスト削減とは?3つのコストに適した取り組み方法とポイントを解説

昨今の日本企業は、全体的に人手不足の傾向にあり、材料費や光熱費の高騰続きで経営も厳しい状況です。

このようななか、コスト削減は、企業が利益を増やすための効果的な戦略のひとつといえます。

しかし、コスト対効果を的確に把握してムダやムリを見極め、自社に適した取り組みを実践しなければ、大きな成果は得られません。

そこで今回は、そんなコスト削減の取り組み方法とポイントを中心に解説します。

コスト削減とは?

コスト削減のコストとは、商材を生産する際にかかる費用や原価のことです。企業の利益は、売上からこのコストを差し引いた額になります。

実際、「10%のコスト削減は40%の売上拡大に相当する」といわれていますから、実現できれば成果は大きいでしょう。

具体的に、売上高が1,000万円、売上原価0円、経費が800万円の企業を例に挙げて説明します。

この企業の営業利益は200万円、売上高営業利益率は20%ですが、この条件でのコスト削減と売上拡大の関係は次の通りです。

<コストを10%削減した場合>

売上:1,000万円-経費:720万円(800万円-80万円)=営業利益:280万円→売上高営業利益率は28%に上昇

<売上高営業利益率20%で売上を拡大して280万円の利益を出す場合>

280万円÷0.2=1,400万円 → 40%(400万円)の売上拡大が必要

ちなみに、コスト削減後の費用は事業の運営上、純利益として処理できます。だからこそ、多くの企業で積極的に取り組まれているのです。

企業にかかるコストは3種類

企業にかかるコストは、主に3種類です。

オフィスコスト

オフィスコストはオフィス内でかかる費用で、代表的なものは4つあります。

1.テナント料

2.光熱費(電力・電話・冷暖房・照明)

3.システム管理・維持費

4.備品・リース費(パソコン・コピー機・FAXなど)

日本の現状では、光熱費は高騰傾向にあるため、少しでもコストを削減したいところです。

経費コスト

経費コストとは企業の経済活動に必要な費用で、主に6項目あります。

1.商材の原材料費

2.宣伝・広告費

3.消耗品費

4.社内研修費

5.顧問弁護士・税理士への報酬

6.取引先との交際費

このうち、社外にかかる費用の大幅な削減は、難しいかもしれません。すぐに着手できる社内経費からコスト削減を検討しましょう。

人件費コスト

人件費コストは、自社従業員を雇用する際に発生する費用の総称で、代表的なものは次の5つです。

1.給与・賞与

2.役員報酬

3.福利厚生費

4.人財採用費

5.退職金

サービス業を除き、人件費の適正数値は売上高に対して50%以下とされていますが、コスト全体で見ても大きなウエイトを占めています。

だからこそ、多くの企業が人件費のコスト削減をできないかと模索しているわけですが、人件費は単に金額を減らすというコスト削減ではなく生産性を向上し従業員一人当たりで稼ぎ出す利益を増やすことで結果的に利益に対する人件費の割合を下げていく、という考え方が重要です。。

3つのコストに適した取り組み方法

この章では、先述の3種類のコストに適した削減の取り組み方法を紹介しましょう。

オフィスコスト

オフィスコスト削減は、次の3項目を中心に実施すると大きな成果を期待できます。

・光熱費

光熱費は、電気代・水道代・電話代・冷暖房費のことです。このうち、電気代・冷暖房費は、比較的取り組みやすいでしょう。

昨今は、電力の自由化で電力会社を選べる時代です。

なかには、通信費と提携して契約すると割安になるプランや、使用する時間帯で安くなるサービスなどもあります。

自社のワークスタイルに適した電力会社に切り替えれば、電気代を節約できるでしょう。

また、使わない部屋の電気を消す・冷暖房の温度をこまめに調整する・帰宅時にOA機器の電源をOFFにする、照明器具をLEDに交換するなど、組織全体の小さな取り組みがコスト削減につながります。

・ワークスタイル

ワークスタイルの検討も、オフィスコストの削減に効果があります。

コロナ禍以降は、シェアオフィスやテレワークを導入した企業も多いようです。

ハイブリッドワークの企業も、立地や店舗の規模・従業員数などから現在のテナント料が適正かどうかを今一度見直してみましょう。

1日の出社人数を抑えてオフィス自体を縮小すれば、テナント料を節約できます。

また、複数の部署での業務が多い・組織全体にモバイルが浸透している・固定電話を使用しなくてよい企業の場合は、フリーアドレス制もおすすめです。

フロアを集約することで電気代を抑制し、デスクや椅子・文房具・PCなどの共有で備品にかかるコストも削減できます。

・電子通信機器(リース・レンタル)

電子通信機器のリース・レンタルの見直しも、コスト削減に効果的です。

特に、リース・レンタルの契約後、製造して10年以上の旧型機を使用している場合は、新機種に変更するだけで約8割の消費電力を節減できるといわれています。

OA機器が発展し、クラウドでのデータ保存・共有ができる昨今は、コピー機の稼働量も契約当初から変動しているでしょう。

契約内容の見直しやスキャナを活用したペーパーレス化の実践で、コストを大幅に削減できます。

経費コスト

経費のコスト削減は、次の3つの社内費を中心に取り組むと効果的です。

・広告・通信費

広告・通信費とは、商材のメディア掲載料や切手代・振込手数料などのことで、特に、広告は費用対効果を細分化して見直しましょう。

最近は、広告代理店を介さずに自社で広告を企画し、自社HPやSNS・プラットフォームを介したMeta広告やGoogle広告などを活用する企業も少なくありませんが、しっかり費用対効果を検証しましょう。

広告代理店に手数料を払った方が結果として生産性が高くなるというケースも多くありますので単純なコストとしてみるのではなく結果を重視することが重要です。

広告キャンペーンのなかには、初心者が操作しやすいものもあり、SNSは一度バズれば、飛躍的な売上の向上も期待できます。

このほか、書類の電子化による切手代の節約や、各銀行の振込手数料の比較検討、ネット銀行の利用なども検討してみましょう。

・消耗品費

消耗品費とは、事務用品や日用品、パソコン周りの備品や什器などのことです。

それぞれは少額でも「塵も積もれば山となる」の典型で、小さな積み重ねが成果につながります。

具体的には、文房具類やトイレットペーパーなどの日用品は在庫管理を徹底し、まとめ買いや低コストの商品への切替などを検討しましょう。

このほか、ボールペンは替え芯を使う・コピー用紙は裏面も使用する・プリンターのトナーはリサイクル品への変更など、組織全体で徹底して取り組む姿勢が大切です。

・出張・交通費

出張費やガソリン代も、コスト削減の取り組みの対象です。

コロナ禍以降、Web会議を導入している企業も多いと思いますが、定例会や出張先との打合せをWeb会議に切り替えれば、交通費やガソリン代を大きく削減できます。

どうしても足を運ぶ必要のある出張も、回数券や早割の使用、格安の航空会社の活用などを検討しましょう。

人件費コスト

人件費コストは、削減の取り組みで大きな効果を期待できます。

ただし、退職の奨励や一方的な解雇通告は、労働基準法や労働組合法の規定に反する可能性もあり、注意が必要です。

また、給与や賞与の削減は、従業員の働くモチベーションが低下するリスクを考慮して慎重に進めなければなりません。

そこでおすすめしたいのは、業務効率化の観点からの取り組みです。

・業務委託・雇用形態

業界や業種に適したアウトソーシングや、非正規雇用の積極的な活用を検討しましょう。

人手不足の傾向が強い日本のビジネス社会で、全業務を自社で遂行しようとすれば、新規雇用の採用活動や賞与・退職金などのコストがかかります。

コロナ禍以降は、多くの企業がバックオフィスやカスタマーサポート業務をリモートワークによる業務委託やパート・アルバイトに切り替えているようです。

病院の成功事例でも、入院患者の食事の質を高めるために調理を外部に委託したところ、人件費や食材費を大幅に削減できました。

自社従業員にはコア業務に専念してもらい、周辺業務を業務委託や自社に適した雇用形態に切り替えれば、大きなコストカットにつながります。

・採用方法

採用方法の見直しも効果的です。

昨今は、自社の人脈から採用活動をおこなうリファラル採用や、人材データベースの登録情報を基に、企業が求職者を直接スカウトするダイレクト・リクルーティングを導入する企業も増えています。

これらの手法で得られる最大のメリットは、自社の求める人材と求職者とのミスマッチが少ないことです。

また、転職潜在層にもアプローチできるため、グローバル社会に必要な人材やこれまでの求人活動では叶わなかった出会いも期待できます。

・IT化

IT化も、おすすめのコスト削減の取り組み方法です。

単純で時間のかかる作業の自動化により、人件費と備品の双方でコスト削減を見込めるうえ、人的ミスも回避できるでしょう。

たとえば、業務管理やタレントマネジメントに関するシステムを導入すれば、勤怠管理や給与計算に加え、人事評価や人材育成・メンタルヘルスチェックなども一元管理できます。

自社の業種や規模によって、IT化すべき業務をじっくり吟味しましょう。

コスト削減の3つのポイント

この章では、3種類のコスト削減に取り組む際、注意すべき3つのポイントを説明します。

的確な現状把握と課題の洗い出し

まず最初に、的確な現状把握と課題の洗い出しが重要です。

コスト削減の成果を高めるには、自社のムダ・ムラ・ムリを見極めなければなりません。

年単位で利用頻度の少ないものや不要になったもの・縮小できるものなど、対象となるコストを全て洗い出してみましょう。

また、少し角度を変えて簡略化・簡素化できる業務の検討も、人件費のコスト削減に役立ちます。

なかには、時の経過でルーティン化している・省いても支障のない作業もあるでしょう。

各従業員の担当業務のムダに関する社内アンケートや面談の実施、倉庫の在庫調査やキャッシュフローの確認など、さまざまな観点から課題を探りましょう。

目標の設定と社内の周知徹底

次に、目標を設定し社内の周知を徹底する必要があります。

経営層や財務担当者が強引に進めても従業員はついて行けず、モチベーションが下がって思うような成果を得られません。

そこで、「冷房は28度、暖房は24度に設定厳守」など具体的な数値を入れた分かりやすい目標を掲げ、必要に応じて従業員が常に確認できるマニュアルを作成しましょう。

ムリなく続けられる目標を段階的に設定し、定期的に経過状況を従業員達と共有することが、コスト削減の成功を導くポイントです。

PDCAサイクルの活用

最後に、定期的にPDCAサイクルを活用しましょう。

「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取った「PDCA」は計画実行後に成果を分析・評価し、必要があれば業務を改善する手法です。

各ステップごとに仮説を立てて設定目標と外部環境を総合的に分析し、課題を見つけたら原因を突き止めたうえで改善していきます。

なお、改善策を策定する際は、別の観点から捉えたアプローチへの変更も視野に入れると効率的です。

まとめ

どのような企業にも、大なり小なりコストのムダ・ムラ・ムリは存在します。

取り組む際のポイントは、今回ご紹介した3種類のコストを自社に当てはめ、どこをどう削減すべきかを十分吟味し、確実に成果を出すことです。

また、段階的な目標を設定し、従業員にも組織全体で取り組むとの意識を浸透させる必要があります。

PDCAサイクルも活用しながらコストを削減し、自社をさらに発展させていきましょう。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。