2023.10.01

【コラム】役員報酬は利益の〇〇%がベスト。多くの経営者が間違えてる役員報酬について

経営者にとって、役員報酬の適切な設定は重要な課題の一つです。役員報酬の設定は、会社の状況や経営目標、個人の希望など様々な要素を考慮する必要があります。
また税金を基準にして報酬を設定する方も多いですが、そのやり方が必ずしも最善とは言えません。本記事では、役員報酬額の設定について徹底解説します。

役員報酬の間違った考え方:税金ベースの設定

多くの経営者が陥る誤った考え方の一つは、役員報酬を税金ベースで設定することです。つまり、最低限の税金を支払うために報酬額を調整しようとする傾向があります。しかし、このアプローチは本末転倒であり、本来の目標から逸れてしまいます。

取りたい額を優先しましょう

報酬を設定する際に大切なのは、あなた自身がどれだけの額を受け取りたいかです。極端な例を挙げれば、税金が高くなるからといって報酬額を抑えてしまう必要はありません。1億円取りたいのであれば、1億円を受け取るべきです。個人の所得が高くなれば、税金はそれに応じて増えますが、それがあなたの経営目標であるなら、それを実現するべきです。

報酬増加は手取りも増加

役員報酬を増やすと、手取りも当然増加します。税金の負担も増えますが、手取りが減るというパターンはありません。所得税率に関して、上限税率に到達することが不利になると心配する方もいるかもしれませんが、実際にはその境界点を超えた分だけ高い税率が適用されます。したがって、額面の役員報酬を増やすことで、手取りも増加し、経営者としての収益を最大化できます。

例として、所得が3,999万円の人と4,000万円の人を考えてみましょう。4,000万円の所得を持つ人は、最高税率の対象となります。しかし、4,000万円の人の全額が最高税率で課税されるわけではありません。4,000万円を超える部分だけが最高税率で課税され、4,000万円以下の部分はより低い税率が適用されます。具体的には、4,000万円を超える部分には所得税率45%が適用されます。どの所得範囲にどの税率が適用されるかは、国税庁のホームページで確認できます。

報酬を増やしても、手取りが減少することは基本的にありません。報酬を増やせば、手取りも増えます。
ただ、法人税を考慮に入れると、最高税率で課税されると所得税率が45%、住民税が10%の合計55%となり、例えば1億円の報酬からは約5,000万円の税金がかかることになります。そのため個人の所得税と法人税を合わせて考えると、法人に利益を残す方が税率的には有利と考えられることもあります。

しかし、社長としての経営目標や希望によって選択は異なるでしょう。税金を最小限にしたいという経営目標があるならば、その方向で進めばいいと思います。社長が1億円の報酬を希望しているのであれば、税金がかかっても報酬を1億円にするべきです。

経営の目標が税金の節約だけであれば、それは短絡的な考えかもしれません。経営の目的やビジョンに従って、適切な報酬や経営方針を選択することが大切です。

役員報酬のベストな設定方法

ベストな役員報酬額ですが、結局、社長の好きな額を受け取ってほしいと思います。しかし1億円の報酬を希望する場合、利益が出ていない会社ではそれは実現できません。例として、経常利益が300万円の会社で、社長が突然1億円の役員報酬を要求すると、結果として会社は1億円の赤字になってしまいます。

役員報酬の目安は年間利益の20%以内

役員報酬の設定の目安として、最終的な年間利益の20%以内が妥当と考えられます。ただし、年間利益は決算時にしか確定しないので、事前に厳格に決めるのは難しい点があります。会社の利益計画に基づいて、その利益から役員報酬を除いた残りの20%以内を報酬として設定するのが一つの方法です。

多くの報酬を取ると、会社の内部留保や純資産が減少し、再投資のための資金が減ることになります。結果的に、最初に多くの報酬を取ることで、長期的な報酬の総額が減少する可能性があります。そのため、理想的な報酬額は最大で年間利益の20%程度が良いと考えられます。

一方、社長が個人的な資産よりも会社の成長や利益を優先する場合、報酬額を低く抑え、その資金を会社の成長に注ぎ込むという選択も考えられます。最終的には、社長の経営方針や個人的な目標に基づいて、適切な役員報酬額を検討することが重要です。

最終ゴールを明確にする

経営者は自身の最終ゴールを明確にする必要があります。起業した初期の想いを忘れず、どの方向に進みたいのかを確認しましょう。最終ゴールを明確にすることは、役員報酬の設定において基準を定める重要なステップです。どこを目指すかで戦略が変わってくるからです。

バイアウトを目指す場合

もしバイアウト(企業の売却)を目指す場合、企業価値を最大化することが肝要です。バイアウトによるリターンは非常に大きいため、余分に多くの役員報酬を受け取ることは意味がありません。株の売却に対する税金が低いため、利益を最大化して企業価値を高める方針を採りましょう。

成長を目指す場合

一方、会社を大きく成長させ、利益を積み重ねたい場合は、一定の役員報酬を受け取りつつも、残りの利益を再投資に回すことが重要です。再投資を通じて会社の成長を支え、利益を最大化しましょう。この場合、利益率は最大で20%以内に抑え、未来への投資に充てるべきです。

現状維持を選ぶ場合

経営者の中には「現在の規模で従業員を守ることができれば良い」と考える方もいます。しかし、この考えは少しリスクがあります。社長が現状に満足していても、従業員が同じように満足しているとは限りません。従業員の満足度を確認することは重要です。

「現状維持」を目指す場合、経営者としての報酬を多めに取ることも問題ないかもしれません。しかし、本当の「現状維持」を望むなら注意が必要です。会社が衰退しないためには、一定の成長が必要です。未来への投資や会社の発展のために、一部の利益を再投資することは考慮するべきです。

会社の目標や規模によって、取るべき経営戦略は異なります。1000億円企業を目指す会社と1億円を目指す会社の経営方法は異なるでしょう。目的に応じて戦略を選び、それを基に経営判断を下すことが大切です。

借金がある場合の注意点

借金がある企業は、注意が必要です。現状維持を目指すだけであれば、再投資用の利益が残らなくても理論上は問題ありません。つまり、全ての利益を役員報酬として支払い、会社の利益がゼロでも現状維持は可能かもしれません。

しかし、借金がある場合、その返済が必要です。利益が出ていなければ返済は難しく、キャッシュフローがマイナスになり、企業の健全性が損なわれます。したがって、借金を返済できるだけの利益は会社に残すべきです。資金繰りを正しく管理し、目標達成のための適切な判断が求められます。

まとめ:役員報酬の決め方

本日は、経営者が役員報酬の設定で損をしないための最適な方法について話しました。経営者にとって、役員報酬の設定は単なる税金の問題ではありません。最終ゴールや成長戦略に合わせて役員報酬を設定することが重要です。
税金よりも、会社の発展と自身のモチベーションを考え、役員報酬を決めましょう。経営者や社員にとって、目標や夢を追求する方が長期的には幸せな結果をもたらすでしょう。

役員報酬を決定する際は、この考えを基にしていただきたいと思います。起業の本当の目的を思い出し、楽しみながら、しっかりと数字を管理し利益を上げていくことをおすすめします。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。