2023.11.30

【コラム】歯科医院の廃業が増加する理由と倒産しないためのポイントをご紹介します!

「コンビニの数より多い」といわれる歯科医院。

実際、厚生労働省によると、2020年時点で、全国のコンビニ件数は55,810件、歯科医院数は68,088件ということですから、確かにコンビニより多く存在します。

これまでずっと激戦状態が続いていた歯科医院も、コロナ禍で患者の通院回数が減り、予防部門の売上が30~80%近く減少したため、2020年には年間で1,700件の歯科医院が廃業に追い込まれました。

そんな歯科医院が、今後、競争力を維持しながら生き残るためには、廃業が増加する理由と倒産しないためのポイントを正しく理解することが重要です。

1. 歯科医院の廃業が増加する主な理由

歯科医院の廃業が増加する主な理由は、2つあります。

1.競争の激化と市場の飽和
2.経営管理と計画の課題

1-1. 競争の激化と市場の飽和

1つ目の理由は、競争の激化と市場の飽和です。

先述のとおり、コンビニの件数よりも多いといわれる歯科医院は、特に東京都や徳島県、福岡県など一部の地域に集中している傾向にあります。

実際、日本でも最大規模の激戦地区といわれる東京都では、人口10万人に対する歯科医数は約116人です。

ちなみに、耳鼻科医は約10人、眼科医は約15人、小児科医は約17人ですから、歯科医は10倍以上ということになります。

このように、歯科医業界はコロナ禍よりも前から競争が激化しており、市場は既に飽和状態なのです。

今後も、都市ごとの歯科医分布は特に変化がないとの予測も出ており、後継者の不在や経営不振に陥る歯科医院と、医業収入を十分見込める医院との二極化はますます進行するでしょう。

1-2. 経営管理と計画の課題

経営管理と計画の課題の見落としも、理由のひとつです。

昨今は、よい物件を見つけて開業したからといって、安心できる時代ではありません。

特に、激戦区では近くに競合の歯科医院ができれば、患者の一部が流れてしまう可能性があります。

今後は、高い治療技術はもちろんのこと、経営理念や経営方針をきちんと策定し、スタッフと共有することが重要です。

なかには、個人事業主のみでまかなえる起業して間もない医院もいらっしゃるでしょうが、一般的には、スタッフがいなければ歯科医院の経営は成り立ちません。

だからこそ、自院の経営理念や方針をスタッフと共有しておく必要があります。また、スタッフとの関係が「すれ違い」にならないよう、常日ごろから意思の疎通を図るよう心がける姿勢も大切です。

院長は、患者やスタッフの声にも耳を傾けながら、地域社会における自院のあり方や治療方針を明確にし、運営に何か課題があると感じたら早めに改善策を立てましょう。

2.効果的なマーケティング戦略

歯科医院が廃業を回避するためには、マーケティング戦略が効果的です。

日本は、世界でも有数の「虫歯大国」といわれていますが、患者の負担3割で受けられる一般的な保険治療では、痛みを取って噛めるようにする治療に限定されています。

そこで、最近はルールや制限がなく、最善の方法を選択できる自費診療の割合を増やす動きが出て来ました。

だからこそ、歯科業界では自費医療のサービスで他院との差別化を図るため、他の医科と比較して集患やマーケティング対策への関心が高まっています。

昨今のインターネット社会や競合の多い実情を考慮すると、院長が検討すべき効率的なマーケティング戦略のポイントは、次の2つです。

1. web露出の強化とSNS活用
2. 地域社会との関わりと患者獲得

2-1. web露出の強化とSNS活用

1つ目のポイントは、webへの露出の強化とSNSの活用です。

ホームページやSNSを作成・活用する際は、患者が何を目的に来院するのか、自院の与える安心感や強みが何かを明らかにしましょう。

一般歯科・審美歯科・予防歯科のどこに力を入れているのか、治療の流れや料金の目安、自院ならではのサービスに関する情報を、一見して分かるように盛り込むべきです。

また、患者の多くがホームページにたどり着くためには、Google・Yahoo!・Beingなどの検索エンジンや、Googleマップを活用するのが一般的です。

そこで、「診療内容+地域名」などのSEO対策で検索結果の上位に表示されるように工夫し、Googleマップで適切な情報を届けられるよう「Googleマイビジネス」に登録しておくとよいでしょう。

一方、InstagramやX、FacebookなどのSNSを活用する場合は、院内やスタッフの紹介に加えて、院での様子を写真とともに定期的に投稿すれば親近感が湧きます。

閲覧者が検索した時にすぐにヒットするよう、複数のキーワードやハッシュタグを活用してタグ化するのも忘れないようにしましょう。

2-2. 地域社会との関わりと患者獲得

2つ目のポイントは、地域社会との関わりと患者の獲得です。

エリアマーケティングは、地域への依存性が高い歯科医院にこそ、最適な集患手段といえます。

チラシやポスティング、新聞の折り込み広告などで診療エリア内における自院の周知度の向上を図ると効果的です。

また、地域の建物周辺で看板や街頭広告などの露出を強化すれば、地域密着型の歯科医院としてアピールできます。自院のイメージにも直結するため、看板や広告は設置箇所やデザイン、色にも配慮して作成しましょう。

昨今は、診療室や待合室の環境と患者の満足度が比例する傾向にあります。たとえば、予約システムによる待ち時間の短縮やキッズスペースや個室の完備など、患者の視点に立って院内環境を整えることも大切です。

SNSの活用が軌道に乗れば、地域の利用者から「初めて通って感じがよかった」「快適だった」「先生の印象がよかった」などの感想が口コミとして拡散される可能性もあります。

年齢や性別、職業、ライフスタイルなど商圏の属性から、地域に適したターゲット像を具体的にイメージし、自院の強みが伝わるようアピールしていきましょう。

3. 経営効率化とコスト管理

自院におけるマーケティング戦略を打ち出したら、経営の効率化やコスト管理にも意識を向ける必要があります。

今後、歯科医院が特に考慮すべきは、主に2つです。

1. 最新技術の導入と効率化
2. 人件費と運営コストの最適化

3-1. 最新技術の導入と効率化

他院との差別化を図るためにも、最新技術を導入して経営の効率化を図りましょう。

たとえば、歯科医院で業務の効率化を図れるツールやシステムには、次のようなものがあります。

1.カルテのオンライン・システム
治療の経緯に関する情報や画像を患者と共有しながら治療方針を伝えられ、スタッフ間でリアルタイムに情報を共有できます。

2.予約管理システム
患者がスマートフォンから気軽に予約ができ、来院してから治療までの一連の流れもスムーズになります。

3.オンライン診察アプリ
スマートフォンのアプリを経由して予約・診察・会計・薬の処方など処理を一連で完結でき、遠方からの受診も期待できます。

4.会計時の各種決済システム
クレジットカードに加えてQRコード決済などを充実させることで、現金の持ち合わせがない患者もスムーズに会計できます。

治療内容やこれまでの経緯を共有し、今後の治療方針が事前にわかれば患者も安心するため、リピート率の向上を期待できます。

また、予約や会計・決済など一連の手続きのシステム化・簡略化が、結果として院内スタッフの作業効率の向上やコスト削減など、経営の効率化につながるでしょう。

3-2. 人件費と運営コストの最適化

歯科医院の固定費のなかで、コストの削減・最適化に取り組みやすいのが、金額の大きい人件費です。

売上高における人件費率には、歯科衛生士などスタッフの給料や賞与および福利厚生費などがあり、売上高の人件費率が高いほど医院の人件費の負担が大きくなります。

売上高人件費率(%)は、「人件費÷医業収入×100」の計算式で算出でき、一般的に、個人医院における最適な人件費率はおよそ25%程度です。

この割合よりも大きい歯科医院は、人件費に課題がある可能性は高くなります。

主に考えられる課題としては、次の5つです。

1.残業代が多い
2.離職率が高い
3.教育コストがかかる
4.求人費が高い
5.採用が進まない

最近では、医療品や材料費の高騰もあり、スタッフの在庫確認や発注作業の負担などによる残業代の増加も考えられます。

また、人材がなかなか育たず長期雇用につながらなければ、求人費用や教育コストがかかっているかもしれません。

特に、在庫管理や発注などの業務は、歯科衛生士などのスタッフが通常業務の合間や業務終了後におこなうことも多いようです。

デジタル技術やIoT機器の導入で、業務改善、在庫・発注・品質管理、棚卸しなどの業務を自動化・可視化すれば、人間の目視で看過していた問題や傾向も把握できるでしょう。

4. まとめ

競合の多い歯科医院が地域社会で生き延びるためには、適切なマーケティング戦略を立て、経営の効率化やコストの削減に努める必要があります。

経営状態が悪化していれば、診療の収入だけでは資金繰りのやりくりが難しいため、経営を継続するための資金が十分あるかどうかも大きなポイントです。

自院が廃業することのないよう、経営管理によって現状を正しく認識し、何らかの課題があれば早めに対策を講じましょう。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。