中小企業がコンサルティング会社に経営コンサルティングを依頼することで、より効率的で効果的な経営改善が期待できます。会社を長く経営していくうえで自社や市場の状況を正しく把握して的確な経営判断を下すことは、必要不可欠です。しかし目前の仕事に手一杯で、なかなか市場分析にまで手がまわらない、リサーチしようにも何から手を付けたらいいのかわからない、といった理由で経営改革を後回しにしてしまいがちな経営者の方も多いのではないでしょうか。
そんな状況の経営者の力になってくれるのが、経営コンサルタントです。
経営コンサルタントは、専門家として第三者の視点で企業を分析します。多忙な経営者では見落としがちな経営課題を洗い出し、経営計画・経営改革などを策定し、問題解決の支援をおこなう役目を担ってくれます。
「より良い解決策を見出したい」「深い知見や経験からの俯瞰的なアドバイスがほしい」「社員の人間では課題に取り組む余力が足りない」など、会社によって導入目的はさまざまだと思いますが、つまるところ「安定した経営を長く続けたい」というのが、どの企業にも共通するコンサルタント導入の真の目的でしょう。
経営コンサルティングとは企業に対する幅広い支援をする仕事です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・経営課題の特定
自社の業務内容や市場の動向を調査し、問題点を特定するために分析をおこないます。戦略の見直しや数値目標の策定についての的確なアドバイスをします。
・経営計画などの策定
市場調査や競合分析の結果をもとにした具体的な解決策を提示します。計画やスケジュールを策定し、専門的な知識やノウハウを提供します。
・課題解決の実行支援
必要に応じて、企業の組織改善や人材開発などに関する支援をしたり遂行状況を評価して成果の検証もおこないます。たとえば企業の財政面に課題がある場合、コスト削減の提案をするだけでなく補助金や助成金の申請、融資などの資金調達まで支援するコンサルタントもいます。
・組織力強化
経営コンサルタントが伴走していなくとも自力で成長していける状態が、会社としての理想の在り方です。全体最適化された仕組みを構築するためのサポートをし、社員の生産性向上を目指した業務フロー見直しやツールの導入の提案などをします。
経営コンサルタントにかかる報酬の相場は、依頼側のニーズ、契約範囲、関与するコンサルタントの数、そして契約形態によって大きく異なります。
顧問契約型は、月額固定費を支払い、中長期的な課題解決への対応を依頼するケースで多い契約形態です。電話・メール・チャットツールによるコミュニケーション、定期的な会議への出席などを含みます。
スポット型とは、実稼働時間に応じて報酬が発生する契約形態で、セミナー講師などの臨時の依頼をしたいときなどに適した方法です。
成果報酬型は、コンサルティングの結果として得られた収入全体のうち、あらかじめ決められた割合を支払う契約形態です。たとえばM&A成功時や補助金審査の採択時に採用されます。また、顧問契約と併せて成果報酬を支払う場合もあります。
最後に、プロジェクト型。経営上の問題を解決するために、単一のプロジェクトに対して設定される形態です。プロジェクトによって契約期間はまちまちで、報酬は契約時間に応じて設定されることが一般的です。
いざ経営コンサルティングを導入しようとなったとき、ベストな時期は企業によってさまざまですが、適切な時期にコンサルタントを入れることでメリットを大きく享受できることにつながります。
・売上低迷や業績不振時
継続して売上が下がっているときや業績不振に陥ったとき、経営コンサルティングを導入するタイミングとして適しています。戦略立案のサポートはもちろん、費用削減案や、補助金申請・融資を含む資金調達のサポートを得意とするコンサルタントもいます。
すでに赤字が出ている状態で、さらなる出費が増えることをためらう経営者の方も当然いらっしゃるでしょうが、何もしないで損失が増えていっては手遅れになってしまう可能性が高まります。社内で有効な策が見つかっていればそれに取り組めば良いのですが、もし解決の糸口が見つかっていない場合には、早急に経営コンサルタント導入という選択肢を検討するべきです。
・新規事業を始めたいとき
新規事業を立ち上げる際には、市場調査やビジネスプランの策定など多くの課題があります。コンサルタントを導入することによって、効率的に問題解決ができます。
また、新規立ち上げと従来からの事業を同時並行で進めていくことになると、会社の内部には一時的に大きな負担がかかってしまいます。そんなときコンサルティング会社に依頼をすれば、クライアント側がゼロから資料を集めるよりも遥かに効率がいいです。これまでに幅広い業界の成功事例や失敗事例を見てきている経験があるため、失敗の回避にもつながります。
・成長の鈍化を感じたとき
目に見えて大きな問題は生じていないものの、「もっといいやり方があるのでは?」「工数に無駄が発生しているような気がする」と感じたら、一度コンサルタントに相談してみることをおすすめします。最適な業務フローや運用体制の構築は、外部からの視点が必要です。思いつきでルールを定めたとしても、実態にそぐわなければかえって非効率になってしまい現場がうまく回らなくなることは往々にして起こります。ここでも他社の成功・失敗事例をよく知る専門家ならではの提案が、業務改善への近道になると思います。
最大のメリットはやはり、外部からの専門的な視点を得られる点でしょう。内部では「当たり前」になっているけど実は効率の悪いやり方を中立的な立場から精査し、起こりうる問題を事前に発見してくれるのです。内部での閉じた視点から脱し、外部からの視点を取り入れることができます。
コスト面でもメリットがあります。コンサルタントのなかには、財務、労務、ITなどさまざまな領域のプロフェッショナルがいます。スキルのあるメンバーを集めたいと思っても、新たに採用するにはコストも時間もかかります。すぐにでも助けが必要な場合、スポット型のコンサルタントを雇うのは非常に良い選択です。
しかも、コンサルタントは多くの企業の事例を目の当たりにしてきたため、多面的なノウハウやアイデアを知っています。社員が積極的にコンサルタントと関わり、そのノウハウを身につけることができれば、コンサル契約終了後も会社が成長し続けることができます。
他にも、社内のメンバーだけで業務を回そうと考えても、本業以外に多数の業務を担うことになり、本来やらなければならない業務が回らなくなることがあります。その点、経営コンサルティングに頼めば、本来の業務に支障が出ることはありません。
一方でいくつかデメリットもあるので、念頭に置いておくといいでしょう。
まずはやはり、費用が掛かる点。コンサルタント会社もボランティアではなく仕事としてやっていますから、当然のことながら報酬を支払う必要があります。
次に、いくら有益な提案をしてくれたとしても、施策の効果が出るまでには一定の時間かかるため一時的にコストが増える面はあります。そのため、総合的なコストと見込まれる成果を考慮し、コンサルタントに相談しながら、とくに力を入れたい分野に絞って依頼をするのが得策です。
また、コンサルタントの中には、一般的な最適解は提示してくれるものの自社固有の問題に対する解決策を提示できない方が一定いるかもしれません。その点を考慮し、依頼する前に実績や得意分野を把握する必要があります。
外部から来たコンサルタントからの意見や提案を、社長であるあなた自身が素直に受け入れられなかったり、耳の痛いことを指摘されて反発の気持ちが芽生えてしまうことがあるかもしれません。そんなときに忘れないでいただきたいのは、コンサルタントは企業の経営課題を解決する専門家です。それを念頭に置き、助言には耳を傾ける姿勢をとりましょう。自分たちでは手に負えない課題があった、または課題を見つけられなかったためにコンサルタントに依頼するに至ったのだと思います。コンサルタントは敵ではなく、会社を良くしていきたいと望む経営者の、頼もしい伴走者であるということを忘れないでください。
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やみくもに新しい事業を立ち上げても、成功までの道のりは平坦ではありません。とくに立ち上げから軌道に乗るまでの初期段階は、赤字になってしまうケースは少なくありません。まずは、赤字に陥る原因にはどんなものがあるのか見ていきます。
・ムダな経費が多い
ムダな経費は赤字に直結します。できるだけ削減していきましょう。たとえ売上が多くとも、それを上回るほどに経費が発生すれば、当然の結果として赤字になってしまいます。
「経費削減」といわれたときに、あまり集客効果が出ていない広告宣伝費やオフィスの光熱費を真っ先に削ろうとする方がいるかもしれません。ただし広告のなかには、長期的に認知を浸透させる目的のものもあります。電気代が高いからといって普段使うオフィスの暖房の使用を制限したせいで、従業員が体調を崩してパフォーマンスに支障が出るはめになっては、元も子もありません。削減によって起こるメリット・デメリットを考慮し、本当のムダはどれなのか、従業員の意見も参考にしながら検討することをおすすめします。
・売上が足りない
そもそも売上が低ければ、赤字になります。黒字経営をおこなうために「最低でもいくら売上が必要なのか」を算出しましょう。そして目標値に対して売上が足りていないことがわかった場合には、売上が少ない理由の分析が必要です。競合の台頭や原材料費の高騰など、原因はさまざまだと思います。原因を洗い出したら、それぞれの対策を練っていきましょう。
また、売上が上がらない原因としてターゲット選定が間違っていることも考えられます。ペルソナ(ユーザー像)の設定は、自社の商品・サービスとズレていませんか?ターゲットへのアプローチは、適切な方法を選んでいますか?方向性が正しいかを見直してみると、きっと何かしらの改善点が見つかることでしょう。
始まったばかりの事業の場合、尚のこと軌道修正をする機会を適宜設けるべきです。
・売上総利益率(限界利益率)が低い
経済産業省によると売上総利益率とは「売上総利益(粗利益)を売上高で除したもので、売上高に対する利幅を示す。この比率は、企業の収益性を判断するための基本的な指標の一つである。この比率が高いほど収益性は高くなる」とあります。粗利が少ないと、そこから光熱費や人件費などの経費を差し引いた際に赤字に陥ってしまう可能性が高まります。売上高に占める粗利の割合は業種ごとに一定の目安があり、グロービス経営大学院によれば「製造業で15〜60%、小売業で20〜30%程度」とあります。在庫を持たないサービス業などは、もっと高い割合になる傾向があります。
会社にとって事業規模はさまざまなので一概には言えませんが、業界平均などの数字をおおよその目安として、自社の利益が十分かどうかを一度確認してみましょう。
事業を黒字化するために、いったい何から手を付ければいいか悩みますよね。
まずは、以下の四つの方法から検討することをおすすめします。
1. 競合の少ないマーケットを狙う
事業を黒字化させるためには、「どのマーケットで勝負するか」は非常に重要です。需要(顧客)よりも供給(競合)が多いマーケットは参入障壁が高く、後発で参入して黒字化させることは、大変険しい道のりになると想像できます。できることなら競争相手が少ないマーケットを選ぶべきでしょう。ここで気を付けるポイントとして、「競合が少ない=顧客ニーズがない」とも考えられます。事業立ち上げの際には市場調査をおこなうと思いますが、需要があるかどうかは念入りに調べましょう。
2. 固定費を抑える
黒字化を目指すなら、利益を上げることと費用を抑えることの二軸で対策を打つことが重要です。申し込んだもののほとんど使っていないサブスクリプションサービス、入ったままほったらかしになっている保険料のような「固定費」を抑えることは、赤字対策の基本だといっていいでしょう。
高い固定費の代表とも言える人件費に関していえば、新規事業立ち上げ時は多くのイレギュラー業務が頻発して人が足りなくなると考えられます。しかし、事業が始まり、仕組みが整えば、限られた人員でも運用することは難しくありません。最初の必要なときだけ多めに人を投入することで、人件費を抑えることが可能になります。社内のメンバーに一時的に加わってもらうことが難しい場合は、外部に委託することもおすすめです。
3.外部委託を活用する
前述したような繁忙期の一時的な外部委託だけではなく、継続的に苦手な業務を委託することは、会社にとって決して悪い選択ではありません。コスト面を懸念する経営者の方もいらっしゃるでしょうが、自社に得意なメンバーがいない業務をおこなうために新たに採用・育成をするには、一定の時間も費用もかかります。苦手領域は専門知識・知見をもつ外部の力を借り、得意な領域に力を注げば、それは新規事業成功の近道になることでしょう。外部委託をうまく頼ることは、むしろコストパフォーマンスが良い選択だといってよいかもしれません。
4. 早めに撤退判断ができるようにしておく
会社を経営するなかで、思いもよらない事態というものは付きものです。事業撤退の判断をしなければならない場面が今後起こる可能性は、大いにあります。無理に続けて赤字が膨らみ、既存事業にまで悪影響が出てからでは、遅いのです。ですから、あらかじめ撤退の判断基準を決めておき、いざというときには速やかに撤退の判断を下せるようにしておくことも、経営者として必要な備えです。
事業撤退の判断基準や撤退検討時の市場分析については過去コラムで詳しく話していますので、そちらをお読みいただければと思います。
新規事業の黒字化を目指すためには、前述のような黒字化に導くポイントとともに、赤字から抜け出せない企業の特徴も知っておきたいところ。黒字化できない企業に共通している特徴として、ノウハウ不足や人選ミスが起きていることが見られます。
まず、新規事業立ち上げに必要とされるスキル・ノウハウは、既存事業と異なります。既存事業で培ったこれまでの成功経験があるがゆえに新たな事業に適さない方法を続けてしまい、結果として赤字になってしまう事態が起こることがあるのです。試行錯誤のなかで学ぶのももちろん大事ですが、予算や資金には限りがあります。とくに中小企業には、何度も失敗できるような余裕はない場合がほとんどでしょう。可能であれば、初期段階には立ち上げ経験の豊富なメンバーに加わってもらい、そのノウハウを共有してもらいながら進めていくことが理想的です。
似たような話になってしまいますが、新規事業立ち上げのとき人選ミスは赤字化の大きな要因のひとつになり得ます。何もない状態から新たに生み出すことを指す「ゼロイチ(0→1)」という言葉があります。立ち上げメンバーには、ぜひゼロイチが得意な方を選びたいところです。事業が軌道に乗ってからは、1から10へ伸ばすことが得意なメンバーと配置転換をすることも検討しましょう。
新規事業を黒字化させるためには、自社の強みと弱みを見極めること、適材適所の人員配置、これらが大事なポイントだと言えるでしょう。
さらにもう一つ重要なポイントとして「PDCAサイクルをまわすこと」が挙げられます。Plan(計画)、Do(実行)、Check(検証)、Action(改善)をぐるぐるまわしていくことで、事業の黒字化に近づきます。まずは経費の削減目標や売上目標はいくらを目指すのか、できるだけ具体的な数字で決めましょう。黒字化達成に向けた計画、実行。おこなった結果の検証。最後に改善策を練ります。PDCAサイクルを正しくまわし続けることを徹底し、黒字化を目指しましょう。
新しい事業を黒字化させるには、時間がかかる事も多く、事業を軌道に乗せるためには3年〜5年ほどの時間がかかる事も往々にしてあります。また、社長の皆さんが短期的な成果を求めてしまうことは事業失敗の確率を高めます。新しいことに挑戦しにくい空気が社内に広がり、会社の成長のためにも望ましくありません。一定の時間がかかるのは当然、ということをまずは理解しておいていただきたいなと思います。
ただし、楽観的になりましょうという意味ではありません。短期間での黒字化が難しいことは理解したうえで、立ち上げ時の市場調査やペルソナ設定、人選などを慎重におこない、各種数値目標を細かく定めて、計画的に事業をスタートしましょう。そうすれば、たとえ初期段階は赤字だったとしても、将来的に黒字化を目指すことが可能になります。赤字脱却の際には、ぜひ本コラムの内容を参考にしていただければと思います。
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