2023.07.17

売上増えても金が減る!その理由を公認会計士が教えます!

今回は、多くの方が勘違いしている売上とお金の関係について解説していきます。売上を増やしても、逆にお金が減るということがあるのです。なぜだかわかりますか?

どうすれば会社に残るお金を最大化できるのか、今回の解説を読むとご理解いただけるかと思います。売上が増えたけどお金がなくなった、ではなくしっかりと会社に残るお金を最大化していくという話をしていきます。

会社に残るお金を最大化するためには? 

コロナの影響もあって、資金繰りが厳しいという会社が急速に増えてきています。資金繰りが厳しくなってくると、資金繰りを改善するために、売上をどうにかして増やそうと考えている会社が非常に多くなります。

売上を増やすということ自体は全く間違っていません。売上が増えるというのは会社にとって当然いいことなのですが、お金の管理をしっかりしておかないとまずいですよ、という話です。

売上が増加するとすぐに手元のキャッシュが増加するかというと、そうはなりません。こういう話をすると、「いや、売上じゃなくて大事なのは利益っていう話をするんでしょ」と思われる方も多いと思います。

 それは当然そうなのですが、いくら売上が増えたとしても利益が残らなければ、 手元に残るお金は増えない。

例えば、1,000円で仕入れてきたものを500円で売れば、売上なんていくらでも増やせます。しかし、当然そんなことをしたら、手元のお金がどんどん減っていく。1個売るごとに500円減っていきますという状態です。

それで売上を増やしても、当然キャッシュは減っていく。要は、利益がマイナス500円という状態なので、当然キャッシュは減ります。

そんなことする人はいないと思いますが、極端に言えばそういう話です。1つ1つの取引でしっかりと利益を生み出していくというのは、大前提として当然あるわけです。

建設業は受注するときに注意が必要

今回の利益の話で言うと、特に建設業は注意が必要です。工事を受注するときに、しっかりと実行予算を組んでない会社は意外と多いです。感覚で受けてしまっている。

すると、工事を受注して売上は当然上がりますが、工事を実行した結果、赤字工事でキャッシュとしてはマイナス、全利益もマイナスになる。どんどん手元のキャッシュが減っていくということが本当に多いのです。

とは言え、職人を遊ばせておくわけにはいかないし、赤字になるかもしれない工事も取らなければいけないという話も聞こえてきます。 それは正直、企業努力不足ではないかと思います。

赤字工事は基本的に受ける意味がない、と思っていただいた方がいいです。 そういう認識を持たなければダメだということです。しっかりとすべての工事を黒字にできる体制を作る必要がある。そうでなければ、会社を継続、存続し続けていくことはできないのです。

もちろん、1つ赤字工事を受ける代わりに割のいい工事を受注できるということが確約されているなど、赤字とわかっているけれど戦略的に取るのであればいいかもしれません。

会社の実績を作り、それを元に次の案件を受注していこうなど、戦略的な宣伝広告目的があるのであれば話はまた変わってきます。ただ売上が欲しいためにやるというのは絶対にダメです。

工事を受注するときに精度の高い実行予算を組み、黒字になる金額で見積書を出して受注する。当たり前のことですが、これが重要です。 

この当たり前は、建設業をやってない方からすると、おそらく普通に当たり前と思われるようなことです。しかし、行われていないことが実はとても多いのです。実行予算を組み、しっかりと利益が出るような工事を取ってくるという、当たり前のことをやりましょう。

例えば1,000万円の工事を受注したとします。受注した段階で予算として700万円の原価がかかるから、300万円の利益が出ます。

大体何かイレギュラーなことが起きるので、予定以上に原価が発生してしまい、200万円ぐらい余計にかかったとします。まだ100万円余裕あるから大丈夫という風に考えられる方も結構多くいます。

大体、予定より利益が減っていくというパターンが多いのですが、発想を逆にする必要があります。300万円の利益の予定で予算を組んだのであれば、この300万円の利益をどうにかして400万円に増やせないかということを考えていかないといけません。 

そういう視点で考え、利益を削り出していくのが重要だと思います。 あと注意が必要なのは、身の丈に合わない工事を受注するというのも絶対にNGです。

普段は数百万円の案件なのに、「1億円の案件をやってくれないか」みたいなことを言われると、飛びついてしまう。1億円の売上が1件入って喜ぶ。これはもう絶対ダメです。 

確実にその案件を自分の会社でこなせるという根拠があればいいのですが、とりあえず売上が欲しいから受けるというのは本当にやめた方がいいです。

結局、自分のところの従業員でこなせずキャパオーバーとなり、外注を使いまくって大赤字を出す。要は、1億円の工事を原価1億円以上使ってしまうということです。現場の指揮管理もうまくできずに外注を使いまくり、お金が垂れ流し状態になってミスも多発し、 1個の工事で大赤字を出す。

さらに、その工事に人を入れすぎて、通常受けていた普通に利益が出る数百万の工事を断ってしまい、 もう目も当てられない負のスパイラルに入ってしまう可能性があります。身の丈に合った工事を、しっかり管理できる範囲内でやっていくということが必要だと思います。

原価の管理が重要というのは、言われたら当たり前のことです。しかし、この当たり前を愚直に行う会社が本当に少ないので、そこにお金が埋まっているということです。

そういうことを強く意識していただいて、予算作るのなんかめんどくさいと思っていても、きちんと作成してください。そうしないと利益が残りません、という話です。

 売上を増やしても、お金が減るのはナゼ?

今回の本題は、売上より重要なのは利益、という話ではありません。きちんと利益が出る案件を取ってきて売上を増やしても、お金が減る場合があります。むしろ多くの場合、お金が減るというお話をしていきたいと思っています。

「利益が出る案件しか取らないなら、お金が増える」と思いますか。 確かに売上の回収まですべて完了し、次の取引で何もなければ、当然残るお金は増えます。

実際には、ビジネスというのはずっと続いていくので、売上が上がってお金を回収する前に次の仕入れが発生したりするわけです。回収する前に、どんどんお金が先に出ていってしまうのです。

そもそも、今言ってるのは運転資金の話のことです。

BS(貸借対照表)の運転資金部分だけを抜き出します。売上債権と在庫を合わせたものと、仕入債務の差額が運転資金です。

売上債権とは、売上が上がっても、まだお金として入ってきていない状態のものです。在庫は、物を買ってお金を先に払ってる状態、お金が出ていってる状態のことで、まだキャッシュになっていません。これから売るものです。

売上債権と在庫を合わせたものからマイナスするのが仕入債務。仕入債務とは、在庫を買ったけどまだ払っておらず、お金として出ていってない状態のことです。売上債権と在庫から仕入債務をマイナスした差額が、一時的に建て替えることになるお金の運転資金ということです。

例えばコンビニに行くと、在庫が常にあります。1店舗、例えば1,000万円の在庫が置いてあるとします。

その1000万円の在庫は先に仕入れて、お金を払ってお店に準備し、お客さんが来たら買ってくれてお金になるというビジネスモデルです。売れたらまた仕入れて補充する。

つまり、今の例で言うと、常に運転資金1,000万円が必要という状態であるということ

です。この1,000万円は、先に常に払って、お店に在庫として置いておかなければなりません。

5年経とうが、10年経とうが、1,000万円は常にお店に置いている状態です。在庫がなければお客さんは来なくなるので、在庫を置かなければいけない。常に出ている状態、立替ている状態になっているお金を運転資金といいます。

売上を急拡大すると、キャッシュとしてマイナスになるというのはどういうことでしょうか。例えば、コンビニ1店舗経営したら1,000万円の運転資金が必要で、その1,000万円が出ていってる状態になります。2店舗に拡大したらどうなりますか。

両方とも1,000万円の在庫を置かなければいけないので、2,000万円の運転資金が必要になります。つまり、先出しするお金が2,000万円になる。その分売上も当然増えますが、出ていってるお金、運転資金が2,000万円必要という事実は変わりません。

最終的には回収しますが、常に2,000万円の在庫は先出しで払っておかなければいけない。3店舗、4店舗と増えていけば、当然その必要運転資金は増えていきます。

よって、急激に規模を拡大していくと絶対にキャッシュが足りなくなるのです。例えばコンビニだったら1,000万円かもしれませんが、ホームセンターを経営するとなったら1億円かそれ以上の在庫を用意しなければいけません。

その場合、先出しで払わなければなりません。どこかで急拡大していくと、必ずキャッシュが足りないということが起こるのです。もちろんこの話は業種的に例外もあります。 

例えばコンサル業など、仕入れが発生しないような商売です。原価が発生しなければ、先に払うものはありません。 売上のお金が入ってくるだけということなので、売上が増えれば、それだけお金が増えていきます。

あとはクラウドファンディングなどを使う場合もそうです。物販などでクラウドファンディングを行った場合、先払いでお金をもらうことになります。こういう場合は、運転資金が必要なく、入ってきたお金で仕入れて、 物を作って売るということができます。

しかし、先に仕入れたり作ったりしてから売るという流れが一般的です。そうすると、やっぱり先にお金が出ていってしまうのです。 そういう商売をする場合には、やはりきちんと資金繰りを管理しておかければいけません。売上が伸びてるのに資金ショートを起こすということは、当然ある話です。

強い会社にするために資金繰り管理を徹底的に行いましょう

しっかりと売上が伸びていて、業績が良くなっているという状態であれば、通常は銀行が貸してくれると思いますが、銀行が貸してくれるにしても限度はあります。

根拠のある経営計画や資金繰り予定表を作り、「借りたお金は必ず返せますよ」と銀行に示すことができないと、 借りられないという可能性もあるのです。資金繰り管理はどんな会社でも必ず、徹底的にしっかりとやっていく必要があります。

特にこれから伸ばしていこうという風に考えているのであれば、資金繰り管理は必須です。物販なんかやってる方の場合、例えば今仕入れられれば絶対売れるのに、資金がなくて仕入れるチャンスを逃すみたいなことが結構あります。

手元キャッシュを積み上げておくことは、チャンスを逃さないためにも重要です。手元キャッシュが余裕だから高級車を買うなど、すぐに使う人は、突き抜けるのは絶対無理です。

年収2,000〜3,000万円ぐらいしかないのに高級車を買ってしまうというのは本当にもったいないです。そのお金をまた事業投資に回せば、年に何倍にもなって返ってきます。 

このような発想にならなければ、本当に会社を安定した強い会社にしていくことはできないと思います。ぜひ資金繰り管理を徹底的に行って下さい。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。