2025.05.15

【コラム】金融機関のおすすめの選び方|種類やポイント・注意点を徹底解説

日本には、いわゆるメガバンク以外にも、さまざまな業務形態の銀行が存在します。

特に、コロナ禍以降はネット銀行の伸び率が目覚ましく、口座数もこの5年間で2倍の400万件を超えました。

そんな金融機関と取引する際、「名称を知っている」「オフィスに近い」などの単純な理由で選んで問題ないのでしょうか。

今回は、企業が取引する際に役立つおすすめの金融機関の選び方やポイントについて詳しく解説します。

金融機関の種類と特徴

金融機関には、主に6つの種類があります。

1.政府系金融機関

2.信用組合・信用金庫

3.メガバンク・都市銀行

4.地方銀行

5.ゆうちょ銀行

6.ネット銀行

この章では、各金融機関の特徴を説明しましょう。

政府系金融機関

政府系金融機関とは、政府の出資によって設立された金融機関のことです。経済を発展させる目的で政府と連携し、政策目標に沿って民間の金融機関では十分に提供できない業務を補完しています。

日本の政府系金融機関は、大きく分けて次の5つです。

名 称主な業務
1日本政策金融公庫小規模事業者を含む中小企業の支援融資など
2日本政策投資銀行産業の振興に関連する融資や投資、インフラの投資など
3商工組合中央金庫商工組合の支援融資など
4国際協力金融銀行海外の開発プロジェクトやインフラ整備の支援融資など
5沖縄振興開発金融公庫沖縄県の経済発展を目的とする支援融資など

このうち、中小企業に馴染みがあるのは日本政策金融公庫(以下、日本公庫)で、一般にハイリスクといわれる創業融資にも積極的です。

日本公庫の主な事業は3つで、個人向けの「国民生活事業」、企業向けの「中小企業事業」、農産物や食品に関する「農林水産事業」があります。

小規模事業者の規模によっては、国民生活事業と中小企業事業の双方に該当する場合もあるため、今後のビジョンも考慮に入れてどちらかを選択しましょう。

信用組合・信用金庫

信用組合・信用金庫は、いずれも共同組織による非営利法人で、会員資格は、当該地域に所在または事業所の設置などを条件としています。

会員の条件が所在地や事業所と関係する意味では、地方銀行と同様に地域密着型の金融機関といえるでしょう。

小規模事業主や小企業の会員が多く、きめ細かな対応や相談を特徴としています。

なお、信用組合の業務範囲の対象は原則的に組合員のみですが、信用金庫は融資対象のみ会員限定で、預金の業務範囲には制限が設けられていません。

メガバンク・都市銀行

メガバンク・都市銀行とは、全国に拠点を設置し、大企業向けの大口融資を主な業務とする大手銀行のことです。

明確な定義はないものの、「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」の5行は「5大都市銀行」、特に先の三行は「三大メガバンク」と呼ばれています。

知名度や安定度が高いため、多くの企業で利用されていますが、都市銀行は再編・合併によって減少傾向です。

地方銀行

地方銀行とは、各都道府県や地域で営業を展開する銀行のことで、「第一地方銀行」と「第二地方銀行」の2種類あります。

1.第一銀行:地域の支援目的で地元に所在する大中小企業から預金を集めて融資する

2.第二銀行:相互銀行や信用金庫が転換したもので、景気低迷による破綻などもあり減少傾向

いずれも、主な取引先は中小企業ですが、地方銀行は必ずしも融資に積極的とは限りません。イベントや相談会などを実施している銀行は、融資に前向きと捉えてもよいでしょう。

ゆうちょ銀行

ゆうちょ銀行は、日本郵政グループの普通銀行で、全国の郵便局を拠点に約2万4,000店舗と約3万2,000台のATMが設置されています。

これまで、一般企業向けの融資は対象外でしたが、2024年8月に200億円規模で中堅中小企業の再編支援や事業再生を目的とするファンドの立ち上げを発表しました。

今後は、ゆうちょ銀行も企業をサポートする方向にシフトチェンジするようです。

ネット銀行

ネット銀行は、インターネット経由で業務をおこない、実店舗を持たない銀行のことです。

取引する際も対面方式のサポートや相談窓口はなく、オンラインのチャットまたは電話の問合せのみとなります。

企業の事業融資は、Web上でスピーディーに受けられる反面、金利は高い傾向です。

金融機関の選び方のポイントは6つ

金融機関の選び方のポイントは、次の6つです。

会社の規模・ステージ

まず、会社の規模やステージに合わせて選びましょう。

小口や大口融資に対する方針や金利・限度額など、各金融機関ごとの特徴を把握しておく必要があります。

また、自社が、4つの企業ステージ「創業期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のどこに属するかで選ぶのも効率的です。

・創業期:日本公庫(国民生活事業)・信用金庫・信用組合・地方銀行を中心

・成長期:メインバンクとサブバンクで分け、地元の金融機関を含め3~5行程度

・安定期:メガバンク・商工中金を含めて5行以上

営業実績のない創業期は、融資を受けられる金融機関も限定されます。成長期は、メインバンクを中心に融資を支援してもらえるような付き合いを意識すべきでしょう。

安定期になると、信用保証協会の無担保枠を除き、年商に比例して借入額が大きくなるため、金利の低いメガバンクとの取引を検討する頃合いといえます。

いずれにせよ、融資は審査にある程度の時間がかかるため、規模や年商など成長度合いに応じて早めに視野に入れておくと安全です。

金融機関の特徴

金融機関の特徴も押さえておきましょう。金利や審査基準は全て一律ではなく、支店長の性格などで対応が異なることもあります。

また、創業融資に前向きな日本公庫の審査は、綿密な事業計画と十分な自己資金があれば通りやすいでしょう。

このほか、非営利の信用組合や信用金庫と懇意にしている企業の場合は、損益計算書や貸借対照表などの内部資料で審査に通過するケースもあるようです。

融資制度

融資制度で金融機関を選ぶのも一案です。

特に、スタートアップ企業は、原則的に無保証人・無担保で、運転資金1,500万円を含む3,000万円の融資を受けられる日本公庫の「新創業融資」を優先すべきでしょう。

また、国民生活事業を活用すれば、運転資金の4,800万円を含む7,200万円、中小企業事業の場合は、運転資金の2億5,000万円を含む7億2,000万円を限度に融資を受けられます。

このほか、担保は付きますが、若年層や女性・シニア層・廃業歴のある方には、返済期間や金利を優遇する「新規開業資金」もおすすめです。

金利

金融機関を選ぶ際は、金利も確認しましょう。

金融機関金利
日本政策金融公庫約1.2%~2.0%程度
メガバンク約1%前後
地方銀行約1.5%~4.5%程度
信用組合約1~3%程度
信用金庫約2.5%程度
ノンバンク約2.9%~4.5%程度

上記のように、比較的審査の通りやすい信用金庫やノンバンクは金利が高くなります。

特に、ノンバンクは返済が遅延した場合のペナルティが高額で、多重債務の原因となりやすいため注意しましょう。

手数料

振込手続きなどの手数料を比較するのも、金融機関の選び方のひとつです。

多くの金融機関は、同行宛の手数料を無料にしていますが、3万円以上または他行への振込は手数料も高くなります。

ちなみに、5大銀行は、現金での手数料は一律880円、自社カードによる手続きは165円〜440円程度で、なかには個人と法人宛で手数料の異なる金融機関もあるようです。

たかが数百円とはいえ、取引先や振込件数が多ければまとまった額になります。

サービス・サポート

金融機関を選ぶ際は、サービスやサポートも検討しましょう。昨今は、店頭の相談窓口だけでなく、Webでのチャット形式の相談を導入している金融機関も珍しくありません。

特に、創業期の企業は、何かあればすぐに相談でき、口座開設後のサポートが充実している金融機関を選んだほうが、その後の事業もスムーズに進むでしょう。

金融機関の選び方での注意点

この章では、金融機関の選び方における4つの注意点を説明します。

企業規模も考慮に入れる

次のように、企業規模によって選ぶのも大事なポイントです。

企業規模金融機関選び方のポイント
小規模企業信用組合・信用金庫個人事業主や小規模企業を大事にし、小口融資でも多少の無理を聞いてくれる可能性が高い。
中規模企業地方銀行信用組合や信用金庫に比べて限度額が大きく、金利が低い傾向がある。最初は「信用保証付き融資」から始め、実績が出たら「プロパー融資」を申請する。
大規模企業都市銀行大規模企業や年商10億円など実績のある企業が事業拡大する際は、メガバンクのプロパー融資の申請を視野に入れて資金繰りを安定させる。

自社が、企業ステージのどの段階にあるかも勘案して検討しましょう。

融資を受ける際は順序がある

融資を受ける際は順序があります。創業期の企業は、先述の無保証人・無担保で融資を受けられる日本政策金融公庫や地域の信用金庫、信用組合から打診すべきです。

もし、審査が通らなかった場合は、都道府県や自治体が各地に設置し、信用保証協会の保証と地方自治体の利子補助とが連携している「制度融資」の活用を検討しましょう。

固定金利または低金利で借入期間も長く、スタートアップ企業にとってはメリットも大きいでしょう。

この2つで審査が通らない場合は、信用金庫や地方銀行の「信用保証付き融資」を申請する方法もあります。

目的によって使い分ける

目的によって使い分けるのもおすすめです。一般に、企業が資金を調達する目的は、主に4つあります。

1.開業・起業資金(テナント料・オフィス什器・光熱費など)

2.運転資金(仕入費用・経常運転資金など)

3.事業拡大(工場・店舗の増設費など)

4.設備投資(機械の追加導入費・設備修繕費など)

自社が融資を受ける目的を明確にし、企業ステージと規模に即して金融機関を選びましょう。

メインとサブで使い分ける

メインとサブで金融機関を使い分けるのも、重要なポイントです。

企業経営では、常に資金を手元に置いておかなければなりません。急に資金調達が必要になったとき、メインバンクの一行だけでは断られたら経営が難しくなります。

自社の規模や企業ステージに無理のない範囲で、メインバンク以外にも資金調達の間口を広げておきましょう。

まとめ

金融機関から融資を受ける際は、返済時の金利の確認だけでは十分ではありません。企業規模やステージ・融資の目的によって、選び方のポイントも異なります。

また、企業ステージが進むにつれて、メインバンクのほかに複数のサブバンクを作っておくのも重要なポイントです。

今回ご紹介した各金融機関の特徴や注意点も踏まえたうえで、融資の目的や状況に適した金融機関を選びましょう。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。