2023.06.30

【コラム】事業拡大のカギ!経営計画策定のプロセスとその活用法とは?

1.ビジネスを加速する経営計画の重要性

1-1. 経営計画の役割と業績への貢献

経営計画とは、「『目標』を達成するための『具体的な取り組み』をまとめた計画※」のことです。企業の成長のための設計図のようなもので、経営者が持つ企業理念やビジョンといった将来についての目標に基づき経営戦略などを明確にします。これまで経営者の頭の中だけにあった「会社がどこをどのように目指すのか」を、社員や関係者に共有しやすいかたちにまとめるのです。何をしたいのかよくわからない会社のことを、誰も応援したり協力したりはしません。ですから目標達成に近づくためにも、経営計画を立てることが非常に重要になってきます。

経営計画と業績は、密接な関係にあります。経営計画の進め方と実行は、企業の業績に直接影響を与えるのです。明確な目標を設定し、それに向けた戦略やアクションプランを立てることにより、会社は優先順位をつけて活動を進めることができます。

適切にリソースを割り当ててムダなコストを削減し、生産性を向上させ、その結果が会社の業績向上につながるのです。反対に、あいまいな計画のもとで立てられた戦略を実行していると、余計なコストが発生し、生産性を低下させ、業績に悪影響があるということですので、注意していただきたいと思います。

※引用:経済産業省

1-2. 経営計画によるビジネスへの実際の影響

経営計画をつくったことで起きるメリットは、経営者が考える会社が今後進みたい方向性を従業員に明確に示すことができ、関係者全員と共有しやすくなる点です。

目標までの道筋とプロセスが明確になれば、たとえば「もしこの方法を選んだら、会社が目指す道筋からは外れてしまうかも」というように、仕事上で判断に迷った際の指標になります。

計画を立てるということは、会社の未来を、中期的・長期的な視点で見据えていくということです。そしてそれは、現状の課題発見の機会になります。定期的に計画を見直すことで、課題を解決するためのより実現可能で具体的な経営戦略をたてることや、新たな事業機会や成長領域を見つけることにつながってきます。

また、経営計画がある企業のほうが取引先や金融機関からの信用が高くなります。信用が高まることで資金調達や融資を受ける際に有利に働くことがあることもあり、これは非常に大きなメリットです。

このように、経営計画はビジネスへさまざまな影響を与えます。

2.経営計画策定の詳細なプロセス

2-1. 市場分析と競争力分析を用いた経営計画の作成

続いて、経営計画策定の詳細なプロセスを見ていきましょう。

経営計画策定にあたって最初に取り組むべきは、自社の現状分析です。自社の現状、強み弱み、そして課題、これらを整理することが不可欠です。売上高や利益構成、主要顧客、顧客が自社に求めているものなど、あらゆる情報を洗い出しましょう。

自社の顧客のフィードバックを集めてみると、ニーズに応えるための改善点や新たな商品・サービスの方向性の芽を発見できることがあります。消費者のセグメンテーション(さまざまな切り口で分類・区分けすること)やターゲット層の特性などを分析し、自社の商品やサービスがもっとも効果的に受け入れられる市場を特定します。ターゲットに合わせたマーケティング戦略や販売戦略を計画することが重要です。

その次に取り組むべきことは、市場分析です。市場分析は、経営計画の策定における土台になります。ニーズとトレンドを把握することで、より世の中に受け入れられやすい商品やサービスの開発につながります。

市場分析から、市場の成長性など将来の予測をすることも可能になってきます。市場規模や成長率、新たな市場の発展予測をふまえて、自社の成長戦略や目標の設定をおこない、持続的な成長を実現するための方向性が描かれた経営計画をつくるべきです。

経営計画は、市場の現状を分析し、将来性を予測し、そのうえで戦略をたてるというプロセスで進めましょう。市場分析は、既存環境の理解と自社の競争力の把握に役立ちます。正しい市場分析データを活用し、市場や他社の動向を知ることで、自社だけの強みや自社にしかできないサービスなどの競争力が浮かび上がってきます。

勝ち目のない土俵での勝負は、誰もが避けたいと思います。勝ち筋のある事業か否か、正確な情報をもとに仮説を立てていきましょう。

2-2. 具体的な目標設定の進め方

次に、具体的な目標設定の進め方を説明します。

経営計画における目標設定は、以下のプロセスでおこなうことが一般的です。

まずは、長期的なビジョンやミッションを明確にし、企業の方向性を定めます。具体的で測定可能な目標をたてるには、「SMART」の原則に基づいて設定するとよいと言われています。

「SMART」の原則:Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Attainable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の5つの要素。

努力せずとも容易く達成できてしまう目標は、いい目標ではありません。また、どんなに努力しても到底届かない目標を設定すると、ただの無茶ぶりになってしまい社内のモチベーションが下がるため、これもよくありません。「SMART」の原則要素を考慮して、「具体的で、達成の測定が可能で、努力すれば達成可能性があり、関連性があり、そして適切な期限が設けられた」目標設定をしましょう。

さらに、目標の進捗を定期的にモニタリングし、必要に応じて調整が必要です。ターゲットにどのようなモノ・サービスが刺さるのか、自社の商品やサービスがどのような価値を与えられるのか、価値を生み出すためには自社はどのような設備や技術が必要になってくるのか、しっかりとした根拠に基づいた目標を設定し、会社全体で目標達成のために何をすべきか考えて取り組んでいきましょう。

3.経営計画の有効活用と課題克服

3-1. 経営計画の定期的な見直しとアップデートの重要性

経営計画は「立てて終わり」ではありません。定期的な見直しをすることで、よりよいものにすることができます。将来を考えていくにあたって、企業の現状を可視化し、最近の課題もあぶり出していくためには、定期的な実績の解析をおこなうことです。

最初に立てた経営計画のままでは、ただ経営計画を掲げただけで有効活用はできていません。企業をとりまく環境が目まぐるしく変わる時代では、定期的な実績の解析が重要になってきます。計画と実績がかけ離れていた場合、計画の見直し・立て直しも必要になってきます。

3-2. 経営計画策定と活用の際の主要な課題と解決策

経営計画策定と活用の際に起こり得る課題には、不確実性と環境変化があります。

前項でも述べたように、会社をとりまく環境は常に変化しています。予測の誤差や外部の変化によって計画の実行に影響が生じる可能性があります。経営者は不確実性を管理し、適応性を高める必要があります。

繰り返しになりますが、不確実性や変化に対応するためには定期的な計画の見直しやチューニングをする必要が出てきます。短期的な目標やタスク設定は、進捗を注視しながら、柔軟に対応することが重要です。

また、情報収集や市場調査などの手段を活用し、環境変化を把握することも重要です。業界の情報や他社の動向情報は、常に最新の情報を得られるようにアンテナを張っておくべきです。

4.まとめ

「経営理念」を作るためには、「経営戦略」を立てる必要があり、また、「経営戦略」を進めるために重要なものは「経営計画」です。つまり、経営理念、経営戦略、経営計画はすべてつながっており、切っても切れない関係なのです。自社に合った経営計画を立てて、会社全体が同じ目標を共有し、その目標に向かって進んでいけるような環境を目指しましょう。

経営計画を活用するうえでの課題とその解決策を考えると、いくつかの重要なポイントがあります。不確実性と変化に対応するために柔軟性と適応性を持った計画策定と実行が必要です。また、目標の設定においては、具体性や挑戦性を併せ持った適切な目標を定めていただければと思います。

そして計画の実行においては、タスクの優先順位付けや適切なリソース配分、社内コミュニケーションが必要です。多様な関係者の関与を促すために、コミュニケーションの確保と意見の収集を心がけ、フィードバックを取り入れながら計画の質を向上させましょう。

経営計画が組織のビジョンやミッションと一致していることは、事業拡大の必須要件です。組織全体の協力とサポートを得なければ、計画の達成はありえません。経営者として会社の目指す方向性を明確にした経営計画をつくり、データ分析に基づいた戦略を立て、そして自社に適した目標の達成に向けて進むこと、それが事業拡大のカギとなることでしょう。

【YouTubeショート動画】 
お金にまつわる情報やトリビアを発信中!
https://youtube.com/playlist?list=PLxXnJwi3Fej_IdpJXB2wvfvB_hyNjzPxR

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。