2023.01.05

コラム

【コラム】中小企業の決算書分析

中小企業の特徴

中小企業庁によると、日本国内の企業全体に占める大企業と中小企業の割合は、2016年6月時点で大企業が0.3%、そして中小企業・小規模事業者が99.7%です。中小企業とは「中小企業基本法」という法律に基づき、業種ごとに資本金と従業員数の範囲が定められています。ただし、これらはあくまでも「原則」であり、「法律や制度によって『中小企業』として扱われている範囲が異なることがある」とも書かれています。たとえば法人税法における中小企業軽減税率の適用は、資本1億円以下の企業が対象です。もし中小企業対象の制度を利用する際には、その制度によって定められている「中小企業の定義」に自社が当てはまることを確認のうえ利用していただきたいと思います。

中小企業の経営者のなかには、「赤字回避」と「税金対策」を目的として、最終的な利益が多くならないように計画的に操作している方が少なくないようです。赤字決算になってしまうと金融機関や取引先からの信用力が低下します。回避したいと考える経営者が、経費削減に注力しているのでしょう。反対に利益が大きくなり過ぎてしまった場合は、納税額も大きくなります。税金を減らすために、財務諸表上であまり利益が出過ぎないように調整しているようです。

つまり、本当に儲かっているか否かの判断方法として「財務諸表上の利益だけを見る」以外の方法が必要なのです。

貸借対照表分析

貸借対照表とは会社の財政状況を表した決算書です。

資産-負債=純資産

という式が、常に成り立ちます。

財務分析をする際に外すことのできない、自己資本比率について見ていきましょう。自己資本比率とは、総資産(総資本)に占める、自己資本の割合のことを指します。計算式は、〔自己資本比率=純資産÷総資産〕です。自己資本比率が高い会社ほど安全性が高い、すなわち倒産しにくい会社だと言えます。

いつかは債権者に返さないといけない負債が資産よりも多い状態を、債務超過といいます。基本的には利益の積み重ねが自己資本になりますから、毎年利益があまり出ていない中小企業は自己資本がなかなか増えず、自己資本比率が低い傾向が見られます。自己資本比率がマイナスになると「安全性」という観点からは非常に不安定な状態だと言えますが、「収益性」の観点からは自己資本比率が低いほうが良いとされることもあります。

ROE(自己資本利益率)と呼ばれる「事業に投入された自己資本がどれだけ純利益を上げたか」を示す指標があります。自己資本が向上するとROEは低下します。自己資本が下がることは、つまり負債が増えることを意味しますが、その負債が事業展開を見据えた投資目的の負債であれば、将来的に利益を回収できる可能性がありますので、負債が増える=悪いこと、とはならないのです。「安全性」と「収益性」、多方面から分析すると、企業についてより深い理解ができます。

役員報酬の特徴

赤字回避と節税対策、いずれの目的でも使われていて利益の調整に利用されやすい科目のひとつが、役員報酬です。経営者目線で考えたとき、会社が万が一の場合には社長の個人資産を投じて切り抜けるという手段をとることもあり得ますので、役員報酬はしっかりと確保しておくことが必要です。

反対に業績が落ちてしまった場合、赤字回避のために役員報酬を減らすことも考えられます。さらに税金の観点から、利益で残すよりも役員報酬を多くした方が、結果的に法人と個人を合わせた税負担が軽くなるケースもあります。

いずれにせよ、役員報酬で調整することで会社の会計上の利益を安定させている会社は多々見受けられます。ここで注意していただきたいことは、役員報酬は期初に決定されるということです。節税目的での期中の増額は税法上は認めらず増額分を損金算入することは出来ません。役員報酬額変更には、国税庁が定めた要件を満たした正式な手順を踏むことが必要です。

「経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じた」ような場合は、役員報酬の減額を認められる可能性があります。

各種財務指標

会社の財務状態・業績を把握し評価するための指標を、財務指標といいます。財務指標を使えば、規模が異なる会社と自社の状態を比べることが可能になります。

非常に多くの種類の財務指標が存在しますが、とくに活用しやすいものは、収益性分析、安全性分析、成長性分析、生産性分析です。

収益性分析
会社が費用を上回る収益を生み出せるかどうかを示しており、おもに損益計算書と貸借対照表から読み取ることができます。

安全性分析
安定した経営をしているかどうか、返済する力があるかどうかを示します。貸借対照表から読み取ることができます。

成長性分析
会社の売上高や総資産がどのくらい伸びているのかを分析し、成長度合いを測ることができます。前期と当期の売上高や、前期と当期の利益を比べることで、伸び率がわかります。

生産性分析
従業員一人当たりがどれだけの売上をあげたのか、また投下した資本に対してどれだけの付加価値が生まれたのか、それらの数字が多ければ多いほど生産性が高いと判断することが出来ます。

運転資金分析

「会社の事業を運営していくなかでかかる費用をまかなうための資金」を運転資金と言います。算出するための計算式は、貸借対照表上の〔売上債権+棚卸資産−仕入債務=運転資金〕。

棚卸資産・売上債権はお金になるのを待っているいわば入金待ちの状態で、一方、仕入債務はこれからお金がでていく出金待ちの状態です。出金よりも入金待ちの数字のほうが多いときは、会社がお金を立て替えている状況といえます。

請求が来たらすぐ支払いをしてしまっている経営者の方は、ご注意ください。いま手元にある資金や直近の入金予定はいつなのかということを把握して、いざという時にはすぐに使える資金があるような状況を長くするべきです。

キャッシュフロー分析

続いて、お金がどこからきてどこへ行ったかを表すキャッシュフロー計算書を分析します。キャッシュフロー計算書は、次の3つの活動に分けられます。

営業キャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフロー。会社の本業から生じるお金の増減です。税引前当期純利益から、今期中に回収できない受取手形などの債権や、キャッシュが動くのは購入時のみで今期のキャッシュは実際に減らない減価償却費を加減算することで、書類上の利益とキャッシュのズレを、調整します。ここがマイナスになっているときは本業でお金を生み出せていない状態だということです。

投資キャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフロー。設備投資や不動産・株の売買などで取得した、投資のために生じるお金の増減です。有価証券や固定資産などの資産が、総額でいくら増えていくら減ったのかがわかります。マイナスになったときは投資に現金を使ったという意味なので、マイナスだからといって心配することはありません。

財務キャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフロー。資金の調達や返済で生じる、お金の増減です。借入による収入・借入金の返済による支出や、新株発行によるお金の調達などがここに記載されます。

最後に、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計した「フリーキャッシュフロー」を説明します。会社の現状維持に必要なお金を含んでいないため、会社が投資・返済などのために自由に使うことができるキャッシュフローです。基本的にはプラスになっているほうが追加の融資を必要とせずに新たな投資が計画できますから、財務状況として望ましい状態だと言えます。もしマイナスの場合はすでに積極的な投資をしているということですから、将来的に投資分を回収できるかどうかが経営に大きな影響をもたらす可能性があります。

このようにキャッシュフローを分析することによって、会社が営業活動でいくらお金を増やし、そのうちどれだけ投資に使い、余ったり不足したお金を、どのように返済・調達したのかが明らかになるのです。

まとめ

税金対策と儲けることの両立はできません。しっかりと安定した利益を出し続けて税金を納めること、それが事業を存続させるための唯一の方法です。納税額をおさえることにリソースを割くのではなくて、事業や業績を伸ばすことに注力しましょう。

そのために、決算書を活用することを提案します。今回ご紹介した貸借対照表分析や運転資金分析、キャッシュフロー分析を理解して、ぜひ一度ご自身で分析してみていただければと思います。そうすることによって、これまで見落としていた会社の改善点が見えてくることでしょう。気づいたときが、チャンスです。経営改善に向けて動き出すきっかけになれば幸いです。

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