2023.06.16

【決算書】ここを見れば社長の人格までわかる!公認会計士が貸借対照表のポイントを解説します!

今回は、「5分でわかるBS(貸借対照表)」ということで、改めて決算書の基本的な読み方、考え方をお伝えします。

BS(貸借対照表)は会社の全てを表すもの

経営者は、PL(損益計算書)の方を意識して見てるという方が多いと思いますが、実はBS(貸借対照表)の方が圧倒的に大事なのです。BS(貸借対照表)は、会社を設立してからこれまでの全てが表されているというぐらい非常に重要な決算書になっています。

BSの構造は、3つの区分に分かれています。BSの左側が「資産の部」で、右側は「負債の部」と「純資産」の2つです。簿記を勉強している方は、A/L/Eと書くことも多いでしょう。ALEは英語表記であり、Aはアセット(asset)、Lはライアビィティ(liability)、Eはエクイティ(equity)です。

純資産は厳密にネットアセットといいますが、エクイティというのはどちらかというと、株主資本や自己資本という意味合いです。純資産イコール自己資本なので、Eという表現をしています。

このBSの右側と左側にはそれぞれ数字が入っていて、全部を合計すると右と左が同じ金額になります。合計額は必ず一致するように構成されています。

右側は資金の調達方法で、調達源泉ともいいます。左側が何を表しているかというと、調達してきた資金の運用方法です。 

負債というのは借金であり銀行から借金してお金を調達したもので、これが負債となります。株主が出資するのは資本金であり、自己資本や財産に入ります。

問題は、これらはどこから調達してきたお金なのかということです。調達をしてきたお金は、何らかの資産に置き換えて運用していかなければ意味がありません。お金のまま保有をしていても、利息ぐらいしか利益を生みません。

例えば、運送業であればトラックを購入し、トラックを走らせて利益を生み出し、運用して利益を最大化します。

利益を生むものを運用して最適化し、利益を最大化していくのが必要になっていくわけです。イメージとしては、持っている資産を回して運用し、利益を生み出していくのが経営といわれるものです。

しかし、ぐるぐる回らず利益を生み出さない資産があると、稼ぐ効率が悪くなってしまいます。BSの資産は、会社が保有している持ち物が全て含まれます。資産を見ると、社長の人格が分かるといわれます。

BSがしっかりと利益を生む資産で構成されていればいいのですが、利益を生まない資産がたくさんあると問題です。

例えば高級車やクルーザー、社長が個人的に贅沢するために使うようなものがたくさんあるような状態です。この場合、社長が会社を私物化する人だということが分かってしまいます。

純資産の部の自己資本で社長の能力がわかる

純資産の部は、中小企業の場合、基本的には資本金と繰越利益剰余金の2つで構成されています。この利益は、過去に生み出してきた利益の積み上げが計上されているのです。

純資産の部の自己資本を見ると、社長の能力がわかります。 社長の能力とはどういうものでしょうか。例えば、会社が50期の会社だったとします。 繰越利益剰余金、過去に積み上げた利益が1,000万円の会社だとしましょう。

この会社の社長の能力は高いと思いますか?低いと思いますか?これだけではわからないと思うかもしれません。これをどう考えるかというと、 50期で過去に積み上げた利益(1,000万円)で年間平均いくら稼いできたかがわかります。

計算すると、アベレージ20万円、年間20万円稼げます。年間20万円を50年間稼げば、1,000万円になります。つまり、この会社の社長は1年間会社経営をすると、20万円稼ぐ能力がある社長です。

その社長は能力が高いと思いますか?低いと思いますか?このような聞き方をすると皆さんは、この社長は能力が低いと答えるでしょう。こういうことが、BSを見るとわかってしまうのです。

そしてこのボックスを見た時に特に何が重要かというと、会社の資産全体に占める純資産、自己資本の割合がとても重要です。

私も決算書を見る場合、まず最初にここを見ます。例えば、全部で1億円の資産を持っている会社があったとします。その会社の自己資本比率、全体に占める自己資本の割合が5%だとすると、それはいい状態だと思いますか?悪い状態でしょうか?

おそらく、自己資本比率5%や10%などといわれても、いいか悪いかよくわからないかもしれません。負債は、自己資本に対して他人資本といわれますが、自己資本比率が5%の会社は他人資本比率が95%です。そうすると悪い状態の会社である、というのがだんだん分かってくると思います。

他人資本比率が95%というのは、会社が1億円の資産を持っていても、9,500万円は他人のものです。要は、借金等で構成されているのです。

負債である他人資本はどういう性質のものかというと、いずれ払うお金、返すお金、出ていってしまうお金です。このような状態で資金繰りが楽になるはずがありません。資金繰りを良くして会社を安定させようと思ったら、この自己資本を増やさなければいけないのです。

では、この自己資本はどうすれば増えるのかと言うと、資本金と利益剰余金で構成されているので、このどちらかを増やさないといけません。

中小企業では、資本金は毎年毎年社長が出資するものではありません。利益を増やしていくしかないのです。 特に借金があるような会社は、利益を出して自己資本を増やしていかなければなりません。

なぜなら借金は返済が必要で、負債からお金が出ていくわけです。では、出ていくお金はどこから来るのでしょうか。

貸借対照表は右と左が同じ額になるので、 負債から減らそうと思ったら、どこからそのお金を持ってくるのかという話です。

利益を増やして自己資本を増やし、負債を外に出すということであればいいのかもしれません。しかし利益がないと、持っている資産つまり手持ちの資産を減らして借金を返しているという形になってしまいます。 

会社は、利益を生み出すために資産を持っているという話しをしましたが、利益を生むために持ってるはずの資産を借金返済に充ててしまっているのです。

これはどんどん稼ぐ力が弱くなっていくことになるので、会社にとっていい状態のはずがありません。そのため、利益を出さないといけません。本当の意味で借金返済とは、利益を出さないとできないのです。 

本当にお金を持っている社長は、口を揃えて「税金を払わないとお金は残らない」といいます。利益を内部留保していくためには、税金を払ってさらに残った利益を溜めなければなりません。税金を払わず利益だけ増やすことはできません。

お金を持ってる経営者は、税金を払わないとお金が残らないことをわかっています。もちろん脱税はしないという前提です。脱税をすれば、税金を払わずにお金を貯めることができるかもしれませんが、単なる犯罪です。そのため、税金を払ってさらに残る利益を増やすしかありません。

しかし、自己資本比率が5%、他人資本費率が95%で、ほぼ借金で成り立っているような会社であるにも関わらず、会社のお金で贅沢してる会社は結構多くあります。

例えば会社の資産として高級車を購入するケースです。高級車は価値が下がらないから後で売ってお金になるという話もあるかもしれませんが、一時的にお金が出ていくので、これは無駄でしかありません。お金に余裕ができたらいいのですが、借金95%の状態でやることではありません。

また税金対策として、多額の交際費を計上している会社もあります。しかし、うまくいってる会社はそういうことはやりません。家計に置き換えて考えてみてください。 家計において、借金をして消費者金融でお金借りて、無駄遣いするのはおかしいですよね。

これは知識がないからということが大きな原因だと思います。手元にお金はあるけど、それは借金だということを知らないのです。本当にお金がなくなる前に手を打って改善していかないと、後になってから気づいても手遅れです。

BS(貸借対照表)を見て財務構造を改善しましょう

現在、手元のキャッシュがあって多少余裕があるという状態であったとしても、BSの図を見て財務構造を見直した方がいいと思います。

実は回っていないという可能性は結構あります。ほとんど他人資本という状態は、ただ借金で回っているだけです。自分の能力でもなんでもなく、稼げていないということです。

稼げる状態や利益が残る状態、お金が残る状態にしていかないといけません。ぐるぐる回らず無駄な資産があるのであれば、それは処分してください。無駄な資産を売ったことによってお金ができたら、そのお金は借金返済に充てることもできます。

BSの全体のサイズが大きければ大きいほどリスクが大きくなります。BSが小さくスリムで利益率が高い会社は、本当に強い会社です。このようなことを考えて、徹底的に改善していくことをおすすめします。

ただ闇雲にBSを削るのではありません。利益を生むものまで処分をしてしまうと、会社は何も稼げなくなってしまいますので、見極めが重要です。利益を生まない資産があれば、処分してお金に変えることが必要になってくると思います。

今回は、まず自分の会社の決算書を見ていただき、「自分の会社はどうなんだろう?」というところをまずは把握してください。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。