2024.01.11

【コラム】「取引先が倒産しそう…」加入しておくといざという時に会社を救う制度を紹介

取引先が倒産した時、連鎖倒産や経営難を防ぐための方法を知っていますか?
それは倒産防止共済です。これは非常に重要な制度の一つです。この制度は、得意先などが倒産した際に、積み立てた資金の最大10倍まで借り入れることができるもので、経営危機や倒産のリスクから会社を守るための重要なツールです。
本記事では、倒産防止共済の詳細な仕組みと、最適な加入タイミング、そして注意点について詳しく解説します。

倒産防止共済とは

倒産防止共済の概要

  • 目的: 企業の倒産を防ぐための保険的な制度。
  • 掛金: 月々5,000円から20万円まで、任意の額を積み立てることができる。
  • 税務上のメリット: 積み立てた金額は全額、会社の利益から税務上の損金として差し引くことが可能。これにより、年間最大240万円までの利益を圧縮し、税金の支払いを減らすことができる(ただし、実質的には税の繰り延べに過ぎない)。

具体的な利点

  1. 節税効果: 例えば、年間240万円積み立てる場合、その金額分の利益が圧縮され、税金の支払いが減少する。
  2. 倒産防止機能: 得意先が倒産した際、積み立てた額の最大10倍(最大800万円積み立ての場合は最大8000万円)まで借り入れが可能。これにより、予期せぬ資金不足に対応し、企業の倒産を防ぐことができる。

注意点

  • 税務上の処理: 解約時(40ヶ月経過後)には100%戻ってくるが、戻ってきた金額が税務上の利益となり、その年の税金がかかる。
  • 使用方法の理解: 節税だけでなく、本質的な意味合い(倒産防止の機能)を理解して使用することが重要。

加入タイミング

倒産防止共済に入る最適なタイミングは、企業の利益が年間1,000万円以上ある状況が理想的です。この理由は、倒産防止共済への加入に伴う支払いが税務上の損金に計上される一方で、実際のキャッシュフローにも影響を及ぼすためです。例えば、年間に240万円を共済に支払う場合、その金額は現金として支出されることになります。

利益が少ない、または資金が十分でない状態で共済に加入することは推奨されません。これは、支払いによって企業の財務状態に余計な圧力をかける可能性があるためです。
したがって、企業が年間で少なくとも1,000万円の利益を上げている状態、つまり共済への支払いを行っても依然として十分な利益が残る状況である時が、倒産防止共済に加入するベストなタイミングと言えるでしょう。

このように、倒産防止共済への加入を考える際には、企業の財務状況とキャッシュフローを慎重に考慮することが重要です。利益が安定しており、共済への支払いが財務に大きな負担をもたらさない場合に加入を検討することが望ましいでしょう。

税率差を利用できるなら節税になる

節税とは、税金の支払いを永久的に減らすことを指しますが、これは税率差を上手く利用することで真の意味での節税になることがあります。法人税の基本的な税率は一律30%程度と考えられがちですが、実際には所得によって税率が異なります。例えば、800万円以下の利益に対しては税率が約23%、800万円を超える部分に対しては約33.34%となります。この約10%の税率の開きが、節税戦略の鍵となります。

倒産防止共済に加入し、支払う時に利益が800万円を超えて高い税率が適用される場合、その高い税率の税金を減らすことができます。そして、解約して戻ってくる時に低い税率で受け取ることができれば、本来30%以上の税率で取られる税金が20%台に減少することになります。このように節税効果を享受できる可能性があります。

しかし、利益のコントロールは簡単ではなく、このような節税効果を狙うのは実際には難しいかもしれません。特に、毎年1,000万円以上の利益を出している会社にとっては、税率が低くなるタイミングがほとんどなく、節税効果は限定的です。

それよりも、この制度の本質的な利点は、得意先が倒産した際にすぐに借り入れができる状態を作ることです。資金繰りに余裕がある場合、積み立てておき、万が一の時に最大8,000万円までの借り入れが可能になる状態を作ることが重要です。

この制度を利用する際は、単に税金を減らすことを目的とするよりも、企業の安定と成長を図る方がより効果的です。細かい節税を考えるよりも、年々利益を増やし、企業にとって長期的なプラスになるような戦略を取ることが重要です。

貸付制度

倒産防止共済には、積み立てた金額の一部を借り入れることができる貸付制度があります。この制度では、最大で積み立て額の95%までの借入が可能です。例えば、800万円を積み立てた場合、760万円まで借り入れることができます。

ただし、借入可能な割合は積立期間によって変わります。例えば、最初の11ヶ月間は借り入れができませんが、12ヶ月目以降は特定の割合(例えば65%や75%)に95%を掛けた額を借り入れることができます。

この貸付制度の利点は、積立によるキャッシュアウトが資金繰りを悪化させるかと思われがちですが、実際には借入を通じて一定額を手元に置いておくことができる点です。たとえば、800万円の利益を出した場合、税率30%で計算すると、240万円の税金がかかり、手元には560万円が残ります。しかし、同じ800万円を倒産防止共済に積み立て、貸付制度を満額利用すると、760万円を借り入れることができ、納税した場合よりも手元のキャッシュを200万円多く確保できることになります。

ただし、借り入れには利息が発生します。例えば年利0.9%の低い金利が適用されますが、これは借り入れ額に応じて発生します。このように、倒産防止共済の貸付制度は、資金繰りの悪化を防ぐ有効な手段となり得る一方で、利息の発生も考慮する必要があります。

この制度は、資金繰りの悪化を防ぎながら、税金の支払いよりも手元のキャッシュを増やすことが可能なため、賢く利用することで企業の財務状況をより良く管理する助けとなるでしょう。

会計処理

倒産防止共済の会計処理には主に2つの方法があります。一つ目は、掛け金を損益計算書上の経費として計上する方法です。例えば、掛け金が年間240万円の場合、これを経費として処理すると、決算書上の利益が240万円減少します。

二つ目の方法は、掛け金を資産計上、つまり「保険積立金」として計上する方法です。この方法では、掛け金が経費にならないため、決算書上の利益は減少しません。このため、決算書の見た目が良くなります。

どちらの方法を選ぶかによって、決算書に表れる利益の金額が異なります。加入する場合は、積立処理を選んだ方が銀行や金融機関に対して利益を多く見せることができます。たとえば、掛け金を240万円支払った場合、赤字になることなく、税務上も損金で落とすことが可能です。

ただし、重要なのは、倒産防止共済を損金に落とすためには特定の要件が必要です。法人税の申告書には「別表」を添付し、倒産防止共済に払った金額を記載する必要があります。多くの場合、税理士がこの処理を行いますが、半分以上の企業で別表の付け忘れが発生しているため、確認が必要です。

結論として、倒産防止共済に関する会計処理では、積立処理を行い、法人税の申告書に別表を忘れずに添付することが重要です。これらの点を押さえることで、税務上の適切な処理を保証し、企業の財務報告の質を高めることができます。

最適な選択肢は?

会社としての財務戦略において、倒産防止共済の積立処理は一つの選択肢ですが、必ずしも最善の方法とは限りません。積立処理をすることで、決算書上の利益は減少しませんが、この方法だけに依存するのではなく、他の選択肢も考慮することが大切です。たとえば、内部留保を積み上げて、決算書を充実させることで、銀行からより多くの資金を借り入れる可能性が高まります。

また、倒産防止共済を利用して手元のキャッシュを増やすことは可能ですが、それだけを目的とするのはあまり意味がないかもしれません。金融機関からの資金調達は、利益を積み上げることでより容易になります。特に、節税を目的に倒産防止共済に加入することは、税率差を利用できない限り、あまり意味がありません。利益が毎期1,000万円以上出ている状態では、税率差を利用する機会はなかなか訪れません。

企業経営の観点からは、倒産防止共済への積立よりも、どのようにして会社の利益を最大化し、会社に残る利益キャッシュを増やすかに焦点を当てるべきです。このように経営に集中し、利益を最大化することが、トータルでの手残りを増やす最良の方法であると言えるでしょう。倒産防止共済はその一部として検討されるべきであり、経営全体の戦略の中でその役割を考慮することが重要です。

まとめ

今回は、倒産防止共済について詳しくお話ししました。この制度は広く知られており、多くの方が既に利用しているかもしれません。しかし、積立処理の実施や別表の添付といった重要な注意点が見落とされがちです。これらの点を怠ると、税務調査で問題が発生し、余分な税金を支払う可能性があります。ですから、これらのポイントはきちんと押さえておくことが重要です。

総合的なアドバイスとしては、資金繰りが悪い場合、まずは収益を増やすことに集中するべきです。倒産防止共済は節税のためだけに利用するのではなく、資金繰りの改善を目的として考えるべきです。また、倒産防止共済の貸付制度は便利ですが、最初の11ヶ月間は利用できない点や、満額までの貸付割合が低い点に注意が必要です。これらの点を考慮すると、単に納税して内部留保を増やす方が、結果的にはよりプラスになるかもしれません。

倒産防止共済にはキャッシュアウトが伴います。この点を忘れず、税金が減るだけを理由に加入するのではなく、全体的な財務戦略の一環としてこの制度を利用することが肝心です。キャッシュフローに注意しながら、倒産防止共済を含めた総合的な経営戦略を練ることが、企業の健全な成長につながります。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。