2025.04.30

【コラム】生産性向上とは?企業が得られるメリットと効果的な6つの施策を解説

少子高齢化が進むなか、競争の激しいグローバル社会で日本企業が存続・発展していくためには、生産性向上の実現がカギとなるでしょう。

また、生産性の性質や向上のメリットを正しく理解したうえで自社に適した施策を検討し、実践しなければ大きな成果は得られません。

そこで今回は、生産性向上の重要性や企業が得られるメリット、および効果的な6つの施策について詳しく解説します。

生産性向上とは?

そもそも、生産性向上の「生産性」とはなんでしょうか。

経済学上では、生産性とは、経済政策に関する労働や資本などの寄与の程度や、自社資源の付加価値を生み出す際の効率の度合いのことです。

企業が自社の商材を提供するためには、事業の拠点や機器などの設備・原材料・エネルギー・人手などのリソースが不可欠で、ビジネス上では「生産要素」と呼ばれています。

生産性は、経済学的にいえば、これらの「生産要素」を投入する際の商材との割合を示すものです。

従って、少ない「インプット(投入・投資)」で「アウトプット(産出された成果・付加価値)」が多ければ生産性は高いことになり、下記の式で表されます。

「産出量÷投入量=生産性」

生産性向上とは、このような生産性とインプット・アウトプットとの関係から分かるように、アウトプットとなる成果や付加価値(産出量)を増やすことです。

ビジネス上では、生産活動における効率性の指標として用いられていますが、自社の生産性向上を検証する際は、何を基準に評価するかに着目する必要があります。

というのも、インプットとアウトプットの対象によって、生産性にかかる向上の意味合いやニュアンスが変わってくるからです。

生産性には2種類ある

このような生産性を向上させるためには、2種類の生産性「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」について理解しておく必要があります。

・物的労働生産性

物的労働生産性とは、従業員1人につき、どの程度効率的に生産しているかを表す指標のことです。

商材の生産数や販売数量など物理的な数値をアウトプットとし、各従業員の労働時間をインプットとする考え方で、下記の数式で算出できます。

生産量÷(従業員数×労働時間)=物的労働生産性

特に、自動車や食品などの製造業・工場・有形の商材を取り扱っている業界では、物的労働生産性からのアプローチが効果的です。

同じ従業員・時間で生産量が増えていれば、生産性は向上したことになります。

・付加価値労働生産性

付加価値労働生産性とは、売上から諸経費を差し引いた粗利が、従業員1人につきどのくらいあるかを表す指標のことです。

IT業界や美容業界・教育業界を含むサービス業など、無形商材を取り扱う業界では、付加価値労働生産性からのアプローチのほうが適しています。

数式で表すと、下記の通りです。

付加価値額÷(従業員数×労働時間)=付加価値労働生産性

たとえば、指名料やコース単価のアップ・経費節減など売上高の増加や原価の削減によって付加価値額が増加すれば、生産性は向上したことになります。

企業で得られる3つのメリット

生産性向上によって企業で得られるメリットは、大きく分けて次の3つです。

人手不足の解消

生産性向上は、人手不足の解消につながります。

昨今、日本のビジネス社会は人手不足が恒常化しており、自社の利益を上げるには、新たな従業員を雇用する求人活動とは別のアプローチも考慮しなければなりません。

たとえば、AIやソフトウェア・ロボットで業務を自動化(RPA)すれば人的ミスを回避できるうえ、従業員は人間にしかできない業務に専念できます。

従業員数を増加できない企業も、本来の業務を効率化すれば生産性の向上とともに人件費コストも削減できるでしょう。

従業員満足度の向上

従業員満足度の向上も、生産性向上のメリットのひとつです。

生産性を向上させるためには、ムダ・ムラ・ムリをなくして自社の現状を変えていく必要があります。

従業員が働きやすい環境を整え、限られた時間で業務に集中できるように配慮し、効率的に作業できるよう改善していかなければなりません。

また、従業員のスキルアップをサポートしていくという企業側の意識も重要です。

これまでの業務上の課題が解決し、各従業員の残業時間が減って有給を取得しやすくなることで従業員のワークライフバランスが整い、従業員満足度も向上するでしょう。

これに伴い、従業員の自社に対する愛社精神や働くモチベーションが高まれば、生産性向上につながります。いわば生産性と従業員満足度は、表裏一体の関係にあるといってもよいでしょう。

働き方改革の実現

3つ目のメリットとして、生産性向上によって働き方改革を実現できます。

昨今は、厚生労働省をはじめ国全体が、柔軟な働き方やダイバーシティを容認している時代です。

少子高齢化社会で生産年齢人口がさらに減少していくなか、企業が発展するには、育児や介護などと両立できるような労働環境を整備する必要があるでしょう。

実際、コロナ禍以降は、ハイブリッドやリモートワークを導入している企業も少なくありません。

時短やフレックスタイム制なども導入すれば、これまで家庭の事情で退職せざるを得なかった従業員も離職しないで済むため、従業員満足度はさらに向上するでしょう。

このように、働き方改革の実現によって、生産性と従業員満足度の関係性はさらに強化されるのです。

生産性向上に効果的な6つの施策

この章では、生産性向上に効果的な6つの施策について紹介します。自社に適していて、すぐに始められるものから着手していきましょう。

現状業務の可視化と課題の洗い出し

1つ目の施策は、現状業務の可視化と課題の洗い出しです。

規模や従業員数にもよりますが、業務が細分化されて各従業員の業務を把握できていない企業も多いのではないでしょうか。

各従業員の業務と生産性には、主に2つの要素「量的要素」「質的要素」が関係しています。

量的要素:従業員数・就労時間・商材の原材料・光熱費などのコスト・有形固定資産など

質的要素:作業工程・ノウハウ・スキーム・従業員のスキルやポテンシャルなど

この2つの要素から生産性を向上させるためには、可視化によって現状を把握し課題を洗い出す必要があります。

まずは、次の8項目に関する自社の情報を収集しましょう。

1.組織図

2.システム相関図

3.業務マニュアル・手順書

4.従業員の労働時間

5.フローチャート

6.スキルマップ

7.原価管理表

8.目標管理・課題達成シート

特に、従業員の労働時間・スキルマップ・原価管理表の照合・分析は、企業で大きな割合を占めている人件費コストに関する課題の発見とも密接に関わっています。

業務の効率化・標準化

業務の効率化や標準化も、効果的です。

生産性向上は、自社の業務のどこにムダ・ムラ・ムリがあるかを探り、改善することでもあります。特に、標準化はコストを下げ、生産性を向上させるために有効です。

昨今は「ノウハウの時代」ともいわれ、先輩や上司から業務を引き継いで高品質の商材を提供すれば競合他社と勝負できます。

しかし、担当している従業員の異動や退職によって、系統的に該当する業務のノウハウが蓄積されていかなければ属人化してその場限りとなり、競合他社にも負けてしまうでしょう。

標準化によって経験の浅い従業員でも当該業務をできるようになれば、より安価な人件費で同じ作業を遂行できます。

なお、効率化・標準化を検討する際は、専門性の高い業務や今後力を入れて展開したいビジネスに関わる業務と分けて考えるとよいでしょう。

人材配置の見直し

人材配置の見直しも、生産性向上に効果的な施策のひとつです。

業務内容や難易度、スキルなどを総合的に勘案し、適材適所に各従業員を配置したつもりでも、その後、資格取得や技術の向上で仕事のパフォーマンスの質が以前より高くなった従業員もいらっしゃるでしょう。

また、時の経過によって部署やチーム自体の業務内容が増減し、求める技術や能力・人材が以前と同じではなくなっているかもしれません。

ただし、人材配置の見直しは、従業員満足度やモチベーションに影響が出ないよう、1on1ミーティングなどで従業員本人の希望や意志を尊重しながら慎重に進める必要があります。

実践する際は、チームや部署で働くとの観点から、スキルや能力だけでなくリーダーシップや協調性などの性質を加味することも重要です。

将来的に伸びる可能性のある各従業員のポテンシャルや、従業員同士の相性なども十分検討しましょう。

アウトソーシングの活用

生産性向上には、アウトソーシングの活用も効果があります。

実際、株式会社ブリヂストンや株式会社ベネッセコーポレーションなどの大企業は、ノンコア業務をアウトソーシングに切り替えました。

その結果、品質の平均化や業務の効率化を実現し、従業員も集中して取り組むべき業務に集中できるようになり、従業員の企業に対する信頼度もより高まったようです。

コロナ禍を境に、以前はシステム開発やデータ入力・WebデザインなどのIT関連の業務中心だったアウトソーシングも、バックオフィスやカスタマーサポートなど業種の幅も広がっています。

自社の従業員が遂行した場合や機械化・自動化とも比較検討したうえで、導入すべき業務を見極めることが重要です。

ITツールの導入

ITツールの導入も、生産性向上に効果的な施策のひとつです。

コロナ禍にリモートワークを実施する際、従業員との連絡をスムーズにするためにコミュニケーションツールを導入した企業も多いでしょう。

通信環境が発達しDX化を奨励する時代の流れもあり、昨今は、ほかにもさまざまな分野でITツールを活用できます。

たとえば、勤怠管理や給与計算システムのほか、自社の人材配置やメンタルヘルスチェック・スキルマップなどを一元的に管理できるタレントマネジメントシステムなどです。

アウトソーシングとITツールの導入のどちらが費用対効果が大きいかも検討したうえで、自社業務の最適化を図りましょう。

従業員のスキルアップの支援

生産性向上には、従業員のスキルアップの支援も効果があります。

「好きこそものの上手なれ」ともいうように、各従業員が興味のある業務やそれぞれの得意分野でスキルアップすれば仕事が面白くなり、能力はさらに向上するでしょう。

たとえば、資格取得支援制度の導入や資格取得手当など、福利厚生で自社従業員をサポートするのも一案です。

企業側のバックアップによって、従業員も「自分の能力を必要としてくれている」と感じ、働くモチベーションや企業に対する満足度が高まれば、Win-Winの関係を構築できるでしょう。

まとめ

生産性向上を実践するには、業務のムダ・ムラ・ムリをなくしてコストを抑えなければなりません。だからこそ、業務の効率化や標準化・簡素化などと大きく関係しているのです。

また、生産性と従業員満足度の向上が相互関係にあるため、従業員を「人財」と捉えて働きやすさの観点から課題を解決し、スキルアップの支援や適切な人材配置の見直しも検討する必要があります。

まずは必要な情報を収集して自社の現状を正確に把握し、課題を洗い出してみることから始めましょう。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。