2023.07.03

コロナ融資で借金不可能!?銀行から融資受けられなくても会社存続できますか?

今回は、 コロナ融資を使っている経営者の方や、財務担当者の方に、注意喚起の意味も込めて、解説していきます。もう銀行も国も助けてくれないという話です。

中小企業は銀行から折り返し融資が受けられない!?

ちょっとゾッとするお話です。2020年にコロナが始まり、政府主導で、活動自粛や経済を止める施策を行ってきました。約2年の間、中小企業は国から各種支援がありました。

持続化給付金や家賃支援給付金、 雇用調整助成金、事業再構築補助金などです。このような施策であったり、コロナ融資として手厚い支援を受けてきました。

ただ、もう気づいてる方も多いと思いますが、潮目は変わってきています。もうこれまでのように簡単に融資が出ることはありません。 貸し剥がしまではまだ起こってないですが、貸し渋りというのは起こっています。

困っていても貸してくれないという事態が、すでに起こり始めているのです。 この方針は緩まるかというと、どんどん加速していくことになります。儲かっていて資金も潤沢である会社は借りることができます。しかし、お金に困ってるような会社はもう貸してもらえない可能性が高いという話です。

皆さんどう思われますか。これ以上銀行から1円も借金できなかったとしても、事業継続ができますか。 銀行から新規融資を引っ張ってこれなくてもお金は足りるでしょうか。以前は、不足したら銀行の折り返し融資と言って新しいお金を出してくれていたので、回っていました。

そうやって回っている会社も多いのではないかと思うのですが、もう折り返し融資が出ないと体感してる会社もあるでしょう。そもそも、融資の必要なお金とは何なのかという話です。

融資に必要なお金は「投資」か「運転資金」

基本的に融資は、「投資」か「運転資金」のどちらかです。


「投資」は、新規事業や新規設備、新規の機械や車両など。新規の投資が必要な場面は、事業投資であれば当然銀行がその事業の計画を見て、大丈夫そうなら融資をしてくれる。これは、事業資金や設備などの投資に対してお金を貸してくれるものです。

もう一つは「運転資金」です。運転資金の定義はここではお話しませんが、要は会社が一時的に立て替えるようなお金です。

日々の経費の支払いや人件費の支払いではありません。いわゆる正常運転資金と呼ばれるものです。これに関しては、銀行から借りて調達するというのは問題ないのですが、実際には足りないから借りてるという会社は本当に多いのではないでしょうか。

足りないお金を借りてしまうと、返すのが大変です。 投資であれば、借りてきたお金を使ってそれ以上に稼いで、稼いだ分で返すということが可能です。

しかし、足りないから借りるということは、不足資金に補填されているので、「その借りてきたお金はどうやって返すのか」という話になります。

基本的に、不足資金を借りるということ自体が間違っているのですが、コロナ前はそういう会社が非常に多くありました。コロナ期間中も、コロナ融資で不足資金を借りていた会社が非常に多くありました。

 例えば、コンビニで考えていただくとわかりやすいと思いますが、コンビニは常に店いっぱいに在庫を抱えてます。雑誌や、食料品、お酒、タバコなどが、仮に1店舗に1,000万円分の在庫があるとします。

実際には、もっと少ないと思いますが、1店舗に1,000万円の在庫があり、この商品があることによって、お客さんが来てそれを買っていきます。

その1,000万円の在庫は、全部売れて終わりではなく、売れたらまた仕入れます。1,000万円分ぐらい必要なのであれば、常に同じぐらいの在庫を抱えているわけです。そうしないと、お客さんが来ませんから、5年、10年経とうが、コンビニは多くの在庫を抱えているわけです。

その1,000万という金額は、常に出してる状態で、先にお金を払ってものを仕入れています。 つまり、常に先にお金が出ていっている状態です。常に一定額、ずっと必要で立て替えることになるお金、これを運転資金と呼びます。

元本返済のないタイプの借入で調達しないと、返済が進んでいくにつれ、運転資金は足りなくなります。折り返し融資でまた借金をして返して、また借金をして返す。

このようなギザギザの状態で、借りている会社が多くありました。本来、一定の返済がないタイプの借入で賄うのが正しい借り方です。

設備投資は、普通に返済のあるタイプで借ります。例えば機械装置を使って、10年間使えるとします。10年間の返済を組んで借金し、機械の価値が落ちていくのと同じように、借金の額も返済して減っていきます。投資した資産と、借入金が、同じように価値が出ているという状況です。

しかし、運転資金も同じように、返済のあるタイプの借入で賄ってる会社が実際には多いです。返済が進んできて、お金が足りなくなったら、折り返し融資という形で、新しい借金をする。こんな形で成り立ってた会社が、これまで多かったのです。

定期的に借金してる会社は財務構造の見直しが必要

今後に関しては、会社が儲かっていてお金に余裕がある場合と、財務状態や財政状態が悪くない場合以外は、この折り返し融資は出なくなる可能性があります。

足りないから借りるというのは、正直難しいという状態になっています。そもそもこういう形で運転資金を調達してたとしても、状況が良ければ不足しません。要は良い状態の会社であれば、不足して折り返し融資を受ける必要性がないわけです。 

足りなくなってるという時点で、あまり良い状態とは言えない。相当運転資金の数が多額に必要ということであれば、最初は必要かもしれません。ある程度内部留保をたくさん積んできて、現預金を集めていけば、運転資金は自己資金で賄えたりするようになってるはずです。

実際には、そうなってる場合は少ないのですが、正しく成長していけば、無借金でいけるような状態になっていくはずです。しかし実際には銀行からの融資でなんとか成り立っているという状態の会社、中小企業は特に多いわけです。

定期的に借金してる会社は結構多いです。毎年毎年、新規融資を受けていたり、2年おきに新規で融資を受けていたり。運転資金が足りなくなったら借りるということが、同じようなスパンであれば、まだ問題ないかなと思います。

このスパンがどんどん短くなっているという場合は注意が必要です。 これは、うまく回っておらず、そもそも資金が回ってない可能性が非常に高いということです。

元々2年おきだったのが、1年おきになり、10ヶ月おきになり、8ヶ月おきになり、気がついたら半年しか経っていないのに、またお金を借りるという状態になります。

こういう状態になると、危険信号です。そもそも投資をしないのにお金を借りるということ自体が、あまりいい状態とは言えません。このように、運転資金を間違った形で借りてしまっているのがお金が足りない原因です。

単純に、お金がもう回っていないという可能性も結構ありますので、自社の財務構造がどうなってるのかを見直しておきましょう。売り上げが10億円あろうが20億円であろうが、回ってない会社はたくさんあります。

数字を見ていないと、見た目の売上が10億になっていると、資金が実際には全然回っていなくても回ってないということに気づかないケースもあります。これは本当に注意が必要です。

売り上げの額は重要じゃありません。キャッシュ、資金繰りが回っているかどうかを見る必要があるのです。もしも社長ご自身で見られるのであれば、必ず確認してください。

「決算書は見たことがない」という状態であれば、1度本当に見直しておいた方がいいと思いますので、お問い合わせください。

コロナ融資を満額使っている会社は要注意!

「コロナ融資借りていると、なぜもう借りられないの?」という話についてです。これは、銀行の融資をざっくり分けると、プロパーと保証協会付きという2種類があります。

何が違うかというと、プロパーは銀行がリスクを負っています。そのため、会社が倒産して返済できなくなると、銀行が損をします。銀行が貸し倒れを負担することになるのです。1億円貸して返ってこない場合、銀行が1億円損するという形です。

保証協会付き融資は、もしも貸した会社が倒産しても、保証協会が代わりに代理弁済して銀行に返してくれるというものです。銀行はリスクを負ってないということです。

銀行がリスクを取らない保証協会付き融資が出るのであれば、銀行は会社が倒産しても別に構わない。仮に倒産したとしても銀行としては損しないので、保証協会付きの融資の方が当然受けやすいでしょう。

どちらの借金がハードルが高いかというのを考えていただくと、プロパーの方が銀行がリスクを負うことになるため、ハードルが高くなります。

コロナ融資はというと、保証協会付きの融資になります。コロナ融資を満額使うなどして保証協会の枠を使い切ってる場合、追加で融資を受けるためには、プロパーで受けるしかありません。

ハードルの低い保証協会付きの融資をもう借りられない会社が、プロパーで借りられるかというと無理でしょう。 つまり、コロナ融資を満額使っているような会社は、もう借りられない可能性が非常に高いということです。

今後、今年来年と倒産する会社がどんどん増えていくでしょう。先にご説明したとおり、保証協会付きの融資であれば、保証協会に代理弁済してもらえますので、銀行はあまりダメージを負いません。

プロパーの融資を出してる会社が倒産してしまうと、銀行はダメージを受けます。すると、銀行の業績は当然悪化するわけです。銀行も営利企業なので、当然業績が悪化するのはよろしくありません。

現在、銀行がどういう動きをしてるかというと、保証協会付きのコロナ融資を出せる会社にどんどん出しています。そして、貸していたプロパーの融資を回収するということを行っているのです。 

本来は、保証協会付きの融資を引っ張りプロパーの融資を返済するということは、救済振り替えと言って禁止されています。

しかし、例えばコロナ融資で3年間据え置き、元本返済が3年間ないような融資を引っ張ってきて、 プロパーの約定ベースで毎月毎月の返済が進んでいけば、結果的に救済振替えと同じことが行われているわけです。

コロナ融資で借りてきたお金を使って返済してるような形になります。つまり、プロパーをコロナ融資で返済してるという状態が実際には起こっている。銀行からすると、ずっと回収してるという状態が起こっているわけです。

これにはいろいろ事情もあります。銀行には、BIS規制というものがあり、銀行の自己資本比率が8%以下になると、国際的に活動することができなくなるような規制です。

お金を貸してる会社がどんどん倒産して貸し倒れが起こり、万が一自己資本比率8%に引っかかってしまうと、銀行が倒産してしまう話になります。あまりにも業績が悪い会社には、お金は貸せないという事情もあるわけです。

実際には倒産しなかったとしても、状況が悪い会社にお金を貸すと、引当金というものを積まなければなりません。要は決算書の内容が悪い赤字の会社にお金を貸した瞬間に、将来この貸したお金が貸し倒れる見込みで、銀行は引当金を経費に入れておかなければなりません。

貸した瞬間に銀行の業績が悪化してしまうので、そういう会社には貸せないということになります。そういう意味もあって、悪い状態にある会社というのは、本当に今後どんどん借りられなくなっていくわけです。

おそらく現時点では、決算書の数字、 PL(損益計算書)の数字や自己資本比率が悪い状態であっても、コロナ融資で借金して手元のキャッシュが潤沢にある状態の会社はまだ多いかもしれません。

しかし、今潤沢にある手元のキャッシュが、毎月減っていくような状態だとすると、その資金が尽きた時点で終了になってしまいます。

 財務体質、経営体質の改善を行いましょう

今は余裕だとしても、余裕があるうちにどうやって生き残っていくのか、 財務体質、経営体質の改善に早急に着手することが必要です。

多分大丈夫だろうという曖昧な状態であれば、本当に大丈夫なのかを確認してください。資金繰り予定表を作れば、キャッシュがプラスかマイナスかは一目瞭然に分かります。

どこでマイナスになってるかがこれを見ればすぐわかりますから、資金繰表だけは作ってください。作り方がわからないという方は、ホームページからご相談いただければと思います。

まずは自社の状況を皆さんが確認してみてください。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。