2023.07.04

多くの会社が間違えているコストカット!固定費減らすよりまずこれをやってください!

今回は、多くの会社が間違えてしまっている「コスト削減」、PL損益計算書の損益改善をどうしていけばいいか、についてお話しをしていきます。

コスト削減は、固定費の削減だけではない

業績が悪化してきたときに必ず出てくるのが、固定費の削減という話です。多分これは、誰に相談しても出てくる話です。

もちろん、利益を生まない経費を使う意味は全くありません。無駄な経費やコスト自体は徹底的に削減していくべきです。しかし、固定費の削減にばかり目が向いてしまい、もっと重要なところがあることに気づいていない、そこに着手できていない会社も結構あります。

「もううちは削れるところがない、どうしよう」とおっしゃる会社は多いかもしれません。しかし、固定費の削減は全体最適化の中の1つの改善点にすぎません。もっと重要なこともあります。

それは変動費の削減です。「変動費なんて下がるわけがない、可能なら最初からやっている」とおっしゃる方は多いでしょう。ですが、本当にそうでしょうか?実際は「そんなことはない。本当に変動費を削れるところまで削り出している」という会社はほぼ無いのではないかと思っています。

固定費と変動費、それぞれの削減の一例

まず、固定費と変動費についておさらいしていきましょう。

変動費とは、売上の数量に比例して大きくなっていくコストを指します。卸売業と小売業で例えると、仕入れが変動費にあたります。建設業などの業種であれば、外注費も変動費に入ってきます。

売上がコストの合計を超えたところが、いわゆる損益分岐点です。損益分岐点よりも売上が増えれば、赤字ではなく黒字になります。この損益分岐点を下回ってしまうと、マイナス……つまり損失になっているという意味になります。

コストから固定費を削減する効果はわかりやすいです。固定費が下がり損益分岐点が下にいけば、全体のコストもその分下がります。例えば、固定費1億円のコストが削減できれば、利益がそのまま1億円増えることになります。

では、変動費はどうでしょうか。例えば製造業なら、材料に使用している1個10円のネジの仕入れ値を、1本あたり1円下げたとします。「1円なんてたかが知れている」「固定費を削減した方が、効果は非常に大きい」と思うかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?

10円のネジのコストが1円下がったら、10%のコスト削減になります。変動費がもし仮に10%も下がったら、大変なことです。1個の単価は1円かもしれませんが、それが積み重なっていけば、非常に大きい金額になっていきます。

こうした点は、当たり前になってしまったら本当に気づかない部分ですから、外部の目は入れた方がいいと思います。本当に0.数%も動かせないですか? そこまで徹底していますか? ということです。

数字で見た方が分かりやすいと思いますので、数字の例も出して説明します。売上が20億円で、変動費が売上に対して45%、9億円が発生したとします。売上から変動費を引いた限界利益が11億円。固定費が10億円で、最終的な計上利益は1億円という会社があったとしましょう。

この会社で、頑張って固定費を1,000万円削減したとすると、固定費が9億円になります。そうすると、経常利益は1億1,000万円になります。これが固定費削減です。

次に、売上の45%に対して変動費が発生しています。これが仮に1%下がったらどうなるでしょうか。44%に削減できた場合、20億円の44%は8億8,000万円です。1%削減するだけで、2,000万円も利益が増えます。

頑張って固定費1,000万円を減らすよりも、効果が大きいということです。もし変動費を5%も下げることができたら、利益は1億円です。

変動費の見直しを徹底的にしているか

「そうは言っても、1%も下げられません」とおっしゃるかもしれません。本当にそうでしょうか? やれることを全部しているでしょうか。さっきお話ししたネジの話もそうですが、仕入れ先から見積もりをとっていますか。

1円のためにそこまでしない、と思うかもしれませんが、こうした小さなコストの削減を積み重ねて大きくしていくのが変動費の削減です。

「うちは30年前からこの問屋から仕入れているから、ここが1番いいんだよ」とおっしゃる会社もあるでしょう。しかし、その根拠は何でしょうか。

その問屋に仕入れ値を下げてくれと言っても「うちも厳しくて」と言われるかもしれませんが、他社から仕入れたら半額になるかもしれません。1社だけから仕入れる、今までのやり方をずっと踏襲していくのが最適解なのか、確認してみてはいかがでしょうか。

確認した結果それが1番いい、という結論に達するかもしれませんが、他社から相見積もりをとることは最低限やるべきです。

そういった値段交渉はもちろん、そもそもこの製品にネジがこんなに沢山必要なのか、10個もネジを止めているが5個でいけるのではないか、といった話もあります。

部品の点数を見直すことでも、原価の削減に密接に繋がってきます。部品の点数が減れば、それだけ材料も必要なくなります。しかも、10本のネジを締めるのに1分かかるとしたら、5個なら30秒でできるということで、作業員の工数も減らせる可能性もあります。

人件費は固定費と思われるかもしれません。確かに人件費は基本的に固定費ですが、例えば外注さん、パート社員、派遣社員などの時間給で働いている人の働く時間が減れば、その分コストは削減できます。

例えば製造業なら、工場の動線などの最適化をしているでしょうか。工場の中で、稼働しているラインが3列あったとします。

右から1列目に商品を投入して、左端まで進んだら、次の2列目はまた右から始まって左端まで進み、3列目もまた同じように右から左端に進んでいくとしましょう。例えば、この2列目の進行方向を左から右に進むように入れ替えたとします。

1列目が終わった時、2列目の左端からスタートして右に進んでいけば、1列目の左端から2列目の右端に移動する距離が必要なくなるのではないでしょうか。

これは極端な例かもしれませんが、こういった改善点は本当に普通にあります。外部の人が見たら「どう考えてもそれ無駄だよね」ということでも、当たり前に日々業務していたら気づきません。

そういうことを徹底的に見直すために、外部の目は入れた方がいいと思います。これは製造業以外にも同じ事が言えます。例えば飲食業なども、徹底的に無駄を排除していけば絶対に変動費を下げられます。

本当にやれることを全てして、1%も下げる余地はないでしょうか。変動費が下がったらこんなに効果は大きい、ということを意識して、徹底的に変動費の見直しをしていただきたいと思います。

売上単価のアップを試みているか

次に、変動費を下げるのと同じぐらい効果が大きいものとして、売上の単価があります。

売上の単価が1%上がれば、その分だけ利益が見込めます。

一例として、20億に対して単価の売上が1%上がれば、2,000万円売上が増えます。その2,000万円は丸々利益になるわけですから、変動比率を下げるのと同じぐらい効果がある。

「いやいや、値上げは本当に無理です」とおっしゃる社長は多いです。しかし意外にも、単価を上げればそれだけですべての問題が解決することがあります。

「単価を上げたら売上が減ってしまう」と思っていたら全然減らなかった、減ったとしても最終的に利益が増えていたということもよくあります。逆に、単価を上げたら顧客に「社長のところは安すぎて大丈夫かなって心配してたんだよね」と言われた、といったことも普通にあります。

しかし、経営者の方は「そうは言っても単価を上げるのは怖い」と値上げを怖がる傾向にあります。確かに、単価をいきなり倍にしたらお客さんも減るでしょう。しかし、顧客と交渉して売上単価0.7%アップ、0.5%アップ、0.3%アップも無理でしょうか? その位であれば、どうにかなる場合もあるのではないでしょうか。

例えば、単価が0.7%上がり、変動費を0.3%下げたとします。するとトータル1%の利益効果が出ます。売上20億の会社で1%利益が増えれば、利益が2000万円増えるわけです。この0.数%も動かせないでしょうか、そこまで徹底しているでしょうか。

一発で経費を何億円削減する、単価アップも売上利益もアップ、といった裏技みたいなことをコンサルに期待されている方は多いですが、そのようなものはありません。細かい改善を積み重ねて、やるべきことを全てして、結果として大きな利益を生み出していく。これをやるしかない。こういうことを徹底的にやると、結果として大きな差になってくるわけです。

小さなコスト管理も、積み重ねれば大きな効果につながる

うまくいっている会社は、細かい調整を本当に徹底的にしてしています。多くの方は「そういう話を耳にしたことはあっても、うちは無理だよ」とおっしゃいます。しかし、決して本当にできないことじゃない。無理な理由は、めんどくさい、やりたくないといったものなのです。

やり方も知っている、やろうと思えばできる。じゃあやろう。うまくいっている会社とそうでない会社の差は、そこにしかありません。たとえ、効果が小さく「ひとつひとつは意味が無いのではないか?」と思うようなコスト管理も、積み重ねていけば大きな効果になっていきます。

何か絞り出せるものないか?を徹底してしていただき、利益を積み上げていくと良いのではないかと思います。

ということで、今回は、多くの会社が間違えてしまっている「コスト削減」ついて「固定費の削減ではなく変動費の削減ができないかを考えてみましょう」というお話をさせていただきました。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。