2025.05.31
【コラム】融資の目安はどのくらい?中小企業に役立つ金額の決定方法やポイントも解説
企業経営では、開業・独立後も運転資金などで資金調達が必要になります。
そんなとき、経営者であれば、融資の目安額がどの程度かが気になるところでしょう。
実は、融資の目安額は、目的・使途に加えて業績や担保状況など企業の要素から想定できます。事前に把握しておけば、その後の手続きもスムーズです。
そこで今回は、中小企業に役に立つ融資金額の目安額の決定方法やポイントについて解説します。
1:融資の金額の目安は?
融資の金額の目安は、目的によって異なります。一般的に、企業の融資の用途は主に4つです。
1-1:運転資金
企業の融資の多くは、人件費や仕入れ費、テナント料・光熱費などの運転資金です。この運転資金の目安額は、月商の3ヶ月程度といわれています。
※ここでいう運転資金とは所謂経常運転資金とは異なるので注意が必要です。
日本政策金融公庫・総合研究所が公表した「中小企業白書2021」によると、中小企業の売上高の中央値は1,500万円で、12ヶ月で割った月商は125万円です。
従って、月商の3ヶ月分の375万円程度が、平均的な中小企業の運転資金の目安額といえるでしょう。
なお、運転資金の目安額をより正確に把握したい場合は、次の2つの方式でも算出できます。
1.回転期間方式:取引や売上の回転期間から時間的なサイクルを中心に運転資金を算出
平均月収×(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-買入債務回転期間)
2.在高方式:企業が現在保有する資産や負債状況などから運転資金を算出
売掛金+卸売資産-買掛金
1-2:設備資金
建物やインフラ、機械・設備などの事業拡大や効率化を図る際も、設備資金の融資が必要です。
設備資金は、どの程度の売上を見込めるかが融資の審査に大きく影響するでしょう。
業種にもよりますが、一般的には、純利益に減価償却費を加えた簡易キャッシュフローの7〜10倍、または設備の導入で得られる売上の約3割以内が上限額といわれています。
見積が甘ければ、「満足な融資を受けられない」「計画通りに返済できない」などのリスクもあるため、注意しましょう。
1-3:創業資金
創業資金は、スタートアップ企業などの新規事業で必要な運転資金や諸費用・設備投資費用などです。
日本政策金融公庫が公表した「2021年度新規開業実態調査」では、創業時に金融機関から受ける融資の平均額は803万円でした。ただし、平均額であって、実際はもっと少額しか融資を受けられなかった企業も含まれます。
企業規模にもよりますが、融資の目安額は、自己資金の3〜4倍程度でしょう。ちなみに、日本政策金融公庫の創業融資では、融資額の平均額は約800万円、中央値は約550万円です。
1-4:折り返し融資
折り返し融資とは、自社が一定額まで先の融資を返済した時点で返済額を再度借り入れることです。
たとえば、融資を受けた2,000万円のうち1,000万円を返済し、再度2,000万円の融資を受ける場合は、1,000万円の融資を新たに受けることになります。
折り返し融資の目安額は、先の融資の返済額が3〜5割程度または3分の1まで減少したタイミングになるでしょう。先の例でいえば、少なくとも600万円程度を返済する必要があります。
2:融資の目安となる企業の要素
金融機関の審査で目安となる企業の要素は、大きく分けて4つあります。
2-1:資金使途
まずは、資金使途が重要です。企業の融資の目的は、主に4つに分類されます。
1.起業・開業資金(オフィス賃料・光熱費・事務機器など)
2.運転資金(経常運転資金・仕入費用など)
3.事業拡大(店舗や工場の増設費など)
4.設備投資(設備修繕費・機械の追加導入費など)
起業・開業資金は、将来的なビジョンや方針によって、事業拡大や設備投資は、飲食店やIT企業などの業種で目安額が変わってくるでしょう。
2-2:会社の規模
会社の規模も、融資の目安となる要素のひとつです。
先の「2021年度新規開業実態調査」では、月商が100万円未満の企業は45.9%、100〜500万未満は41.6%でした。つまり、日本の9割近くの中小企業は、月商が500万円以下ということになります。
通常の運転資金は、月商の3ヶ月分程度が融資の目安額ですから、小企業であれば300万円以下、中企業は1500万円以下と考えておくと安全です。
2-3:業績
金融機関の融資は、業績の善し悪しでも左右されます。融資の目安額は、次の3つの指標を参考にするとよいでしょう。
1.月の平均売上の約3~5倍
2.純利益+減価償却費の約10倍
3.借入金が総資産の約50%以下
企業ステージや業種にもよりますが、これらの目安額を考慮に入れながら金融機関との交渉を進めるとスムーズです。
2-4:担保・保証の状況
担保・保証の状況も確認しておきましょう。担保には、2つの種類「物的担保」「人的担保」があり、下記のように分類されます。
<物的担保>
・預金
・売掛債権
・不動産
・有価証券
・その他(機械設備や車両など価値のある動産)
<人的担保>
・連帯保証
・保証人
経営者保証や自社の資産を担保にして借り入れた後、折り返し融資を受ける場合は、計画通りに約3割程度を返済できていると、融資を受けやすいでしょう。
3:融資金額の目安を決定する方法
この章では、融資金額の目安を決定する4つの方法を説明します。
3-1:資金使途を明確にする
1つ目は、資金使途を明確にすることです。
資金調達の4つの目的「起業・開業資金」「運転資金」「事業拡大」「設備投資」のうち、店舗・工場の増設・従業員増員の採用活動費や新設備の導入などの「事業拡大」と「設備投資」は、設備資金に包括できます。
これら3つの資金使途に関する融資の目安額は、以下の通りです。
1.起業・開業資金:
自己資金の約3〜4倍
2.運転資金:
月商の約3ヶ月分
3.設備資金:
簡易キャッシュフローの7〜10倍または設備導入で得られる売上の約3割以内
融資を受けた資金をどう使うのか、将来的なビジョンを具体的に思い描いてみましょう。
3-2:経営計画書を策定する
融資後の経営計画書を策定するのも、ひとつの方法です。
使途が明確でも、頭で考えているだけでは具体的な戦略もまとまりません。しっかりした経営計画書があれば、金融機関の融資審査にも役立ちます。
経営計画書には、下記の情報を盛り込みましょう。
<主な情報>
経営者:経歴・創業の動機・事業に関連する知識やスキル
事業:取り扱う商材・市場とターゲット層・コンセプト・メリット・従業員の情報
戦略:想定する仕入先・販売先・外注先
業績:成長性・収益性・経費予測・売上予測・利益予測
対策:想定リスク・回避策
融資:融資希望額・融資の種類・資金調達の方法(借入・助成金等)
損益計画・返済計画などの添付書類も準備し、金融機関の担当者が理解できるよう業界用語などを用いず客観的に記述することが重要です。必要に応じて専門家にも相談しましょう。
3-3:自社の会社規模から判断する
自社の会社規模から判断するのも一案です。金融機関は今後の事業の見通し以上に、企業の返済能力を重視します。
業種にもよりますが、自社の簡易キャッシュフローの7〜10倍、または設備投資による売上の約3割以内を目安として交渉を進めるとスムーズです。
3-4:銀行格付けの算式から逆算する
融資の目安額は、次の4つの算式から逆算する方法もあります。
1.インタレスト・カバレッジ・レシオ
企業の借入金について利息の返済能力を算出する指標で、数値が高ければ信用度が高い
算式:(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払利息+割引料)
2.月商倍率
月商の何ヶ月分を借り入れているかを示す指標で、企業の経営状況を判断する
評価基準は小売・製造・サービス業は1.5倍、卸売業は0.8倍が安全圏で、倍率が高ければ危険とされる
算式:(年商÷12か月)×1~6か月
3.償還年数
借入金の全額返済に要する年数のことで、融資の目安額は年間で返済できる額の10年分とされる
算式:年間返済可能額×10年
4.収益面
経常利益をベースに、収入と支出の双方の視点から客観的に判断する指標
算式:過去3年分の経常利益の平均×50%×”5~10”
最近は、金融機関の融資審査は以前より厳格で、収益面を重視する傾向です。また、償還年数による算式は、今後の環境の変化や自社の運営に伴って変化する可能性があります。
4:希望金額で審査を通過させる5つのポイント
希望金額で融資審査を通過させるため、次の5つのポイントを押さえましょう。
4-1:できるだけ自己資金を確保しておく
できるだけ自己資金を確保しておく必要があります。自己資金が多ければ、融資も少なくて済むでしょう。
また、自己資金の約3〜4倍が目安額となる創業融資の場合は、自己資金が多いと融資の増額も期待できます。
自動車・不動産の売却や設備投資・資金に「みなし自己資金」はないか、家族から贈与を受けられるかなど、あらゆる方向性を探りましょう。
4-2:説得力の高い事業計画書を作成する
次の4点に注意し、説得力の高い事業計画書を作成するのも大事なポイントです。
1.融資の目的や使途を明確にする
2.ビジネスプランの詳細と現実的な数値を記載する
3.必要な資金・自己資金・融資希望額は根拠を示す
4.資金繰りが安定する融資希望額を提示する
金融機関の視点で、現在の経営状況を含めた具体的な事業計画書を作成しましょう。
4-3:残債を減らしたうえで申請する
融資は、残債を減らしてから申請しましょう。
特に、折り返し融資は、どの程度返済し終えているかも審査に影響します。
きちんと借入を返済している旨を提示できれば、経営の安定している企業として金融機関からの信頼度も高くなるでしょう。
4-4:業績好調のタイミングを見計らう
業績好調のタイミングを見計らうのも重要なポイントです。業績が好調であれば事業計画書や決算書の数値もよくなります。
昨今の金融機関の審査が収益面を重視する傾向を考慮し、過去に遡って自社の経営状況の推移からタイミングを予測してみましょう。
4-5:金融機関の決算タイミングを考慮する
一般的に、金融機関の決算のタイミングは次の通りです。
・月次決算:1ヶ月に1回
・四半期決算:3ヶ月に1回
・中間決算(半期決算):6ヶ月に1回
・本決算(年次決算):1年に1回
融資を申請する際は、各決算の約1〜1ヶ月半前に準備を進めておくとよいでしょう。
金融機関は企業への融資の利息で収入を得ているため、決算前に申請すれば、融資額が増える可能性があります。
企業側も、決算前に融資を受けることで、キャッシュフローの改善や業績向上につながるでしょう。
ただし、次回の決算で借入残高が増加するリスクを恐れ、逆に審査を厳しくするケースもあり、注意が必要です。
5:まとめ
金融機関からの融資の目安額は、企業の4つの要素が大きく左右します。資金の使途によっても異なるため、少しでも審査を有利に進めたければ、根拠のある事業計画書の作成も不可欠です。
また、折り返し融資を検討している企業は、残金を減らしてから申請すると、審査がスムーズに進む可能性が高くなります。
自社の使途に必要な融資を受けられるよう、できるだけ多くの自己資産を確保し、金融機関の決算のタイミングも確認しましょう。



