2025.09.30

【コラム】経営改善計画書の6つの注意点とは?必要な項目や書き方も解説

経営が思わしくない企業は、経営改善計画書を作成すると自社の課題を可視化できます。資金調達や借入金の返済でも必要になるため、作成しておいて損はないでしょう。

経営改善計画書を策定する際は、基本の8項目の定義を理解する必要があります。また、注意点にも気をつけましょう。

今回は、経営改善計画書に必要な項目と書き方、および6つの注意点について詳しく解説します。

1.経営改善計画書とは

経営改善計画書とは、財務状況や事業内容など自社課題を分析し、経営を立て直すために必要なアクションと具体的な数値を表すものです。

金融機関の資金調達でも提出が求められるほか、自社の将来を見据えながら目標や事業の進捗を整理・確認するうえでも役立ちます。いわば、今後の進路を照らす指標といってよいでしょう。

2.経営改善計画書の作成で必要な8項目

経営改善計画書を作成する際は、具体的な数値を入れて簡潔に書くよう心がける必要があります。この章では、基本となる8項目について具体的に説明しましょう。

2-1.ビジネスフロー

まず、ビジネスフローで自社の事業モデルを読み手にわかりやすく伝える必要があります。

経営改善計画書のフォームは特に決まっていませんが、最低でも次の5つの要素を記載しましょう。

1.対象となる顧客
2.商材と提供方法
3.自社の強みとボトルネック
4.各業務の人員配置
5.仕入・売上・回収方法

金融機関では、融資担当者が人事異動で交代となることも珍しくありません。昨今は、働き方改革などの影響もあり、金融機関も以前のように企業を訪問して現状を把握する時間的な余裕がなくなっているようです。書類は丁寧に記載したほうが印象もよくなります。

一度、精度の高い経営改善計画書を策定しておけば、融資担当者が変更した場合の引き継ぎもスムーズです。まずは、日頃の業務を振り返ってみましょう。

2-2.自社の状況

次に、自社の状況を記載しましょう。特に必要なのは、以下のような所在と経営の責任範囲を示す情報です。

1.グループ会社または親会社の有無
2.親会社の場合は子会社との関係性
3.自己資本の詳細
4.貸借・売買の詳細
5.委託(受託)の有無と詳細
6.役員・親族の資本の詳細
7.保証の関係
8.後継者の有無

なお、保証人や担保については、2020年の民法改正で保証人を保護する観点から、契約後の状況変化に応じて負担を軽減する仕組みが強化されています。

また、政府は2023年4月に「経営者保証改革プログラム」を施行し、経営者保証に依存しない融資を推進しました。以後、金融機関が保証を求める場合は、その必要性や解除条件の説明・記録が義務づけられています。

さらに、現在は売掛債権担保融資やスタートアップ企業等を対象とする「事業(成長)担保制度」の導入も検討中です。従って、ここでの保証関係の記載は、詳細よりも現状を明確かつ簡潔に伝える程度で十分でしょう。

2-3.企業の概要

企業の概要については、金融機関との関係にもよりますが、一般的には次の情報を記載します。

1.企業の沿革
2.業績の推移
3.財務状況と課題(キャッシュフローの推移・改善が必要な財務項目など)
4.銀行との取引状況(借入・預金・振込等)
5.現状と改善すべき課題
6.改善計画の基本方針

特に「5.現状と改善すべき課題」は、自社の現状をどう捉え、改善すべき課題が何かを明らかにする必要があります。企業の概要のなかでは最重要項目です。

「6.改善計画の基本方針」は、今後の業績を見越したうえで、基本的な方向性を記載しましょう。たとえば、営業利益の回復や債務超過の解消などは、数値を明示したほうが伝わりやすくなります。

2-4.事業計画

事業計画は、金融庁や金融機関が財務指標として求める数値にとらわれ過ぎず、今後3〜10年間の損益計算書をベースに自社で実現可能な計画を記載します。

とはいえ、収益組織である企業が存在理由を示すためには、それなりの利益を出さなければなりません。理想とされる財務指標とも照合しながら自社の存続に必要な一定の収益を見込めるプランを作成し、改善戦略を策定しましょう。

2-5.具体的な施策

具体的な施策は、計画を実現するためのアクションを詳しく記載します。自社の課題を洗い出し、次の4項目を中心に作成しましょう。

1.資金繰り安定:在庫回転率・売掛金回収の改善、固定費の見直しなど
2.売上向上:販路開拓・商品単価の見直し、既存顧客への提案など
3.コスト削減:低収益商品・不採算部門の整理など
4.組織・業務:IT導入による効率化・人材配置の見直しなど

金融機関への説得力を高めるためにも、定量的な裏付けを加えることが重要です。

2-6.実施計画の詳細

実施計画の詳細は、「2-5.具体的な施策」を実現するため、各項目のアクションに5W2Hを入れて簡潔に記載しましょう。

なお、「How many(どのくらい)」と「How much(金額)」とに分け、施策の効果を数値で裏付ける計数計画として示すのもポイントです。

2-7.資金計画

資金計画は、実績として資金繰り表で過去1年、少なくとも前期分を提出しましょう。過去数年を示したほうがよい場合は、キャッシュフロー計算書の提出も効果的です。

資金繰り表は、最低6ヶ月、可能であれば12ヶ月分を用意すると、1年間のサイクルで自社の現預金の増加傾向を提示できます。

なお、資金計画は返済や日頃の運転資金に加え、設備投資や売上に伴う仕入費、将来的な役員退職金などを見越しておく必要があります。それを踏まえ、季節変動や資金不足に備える安全弁として資金プールの方針を示せば、金融機関からの信頼も高まるでしょう。

2-8.返済計画

返済計画は、これまでに記載した項目を実践すれば、どの程度の金額を返済できるかという視点で記載します。

この金額を返済するためにはどのくらい利益を出す必要があるかという視点では、状況の変化や不測の事態が起きた場合の修正が難しくなり、自分で自分の首を絞めることになりかねません。

将来的な税金納付や退職金、減価償却によるキャッシュフローの変動も考慮に入れつつ、無理のない返済計画の策定が重要です。

3.経営改善計画書を作成する際の6つの注意点

この章では、先述の8項目に基づき、実際に経営改善計画書を作成する際の6つの注意点を説明しましょう。特に新規借入を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。

3-1.実現可能な内容にする

まず、実現可能な内容を記載しましょう。数年以内に赤字を解消・5年以内の債務超過の解消など、確実に収支改善を目指している姿勢を示すことが重要です。新規借入が目的であるならなおさら、希望的観測に基づいた計画書では金融機関を説得できません。

なお、返済条件を見直すリスケジュールの場合は、既存借入の返済が80%に達していなければ新たな融資は難しくなるため、注意が必要です。楽観視せず、かといって消極的になり過ぎない「落としどころ」を見極めましょう。

3-2.現状を的確に分析する

現状を的確に分析するのも、作成時の注意点のひとつです。ここ数年のコロナ禍の影響や長引く物価高で経営状態が厳しい企業も多いでしょう。

そこで、不測の事態の起こり得る外的環境よりも、組織として内部環境を見直し、経営改善の戦略を策定するほうが現実的です。過去3年程度の決算書の会計データから、次の4項目の動向を分析してみましょう。

1.財務体質
2.収益の構造
3.商材売上の変化
4.生産性の推移

具体的には、これら4項目に外部環境を加えた「強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)」の4つの観点から見る「SWOT分析」や、各要素を組み合わせて戦略の方向性を探る「クロスSWOT分析」を活用すると、自社の傾向がつかめます。

3-3.債務超過を解消する目処を立てる

債務超過の場合は、解消する目処を立てておきましょう。債務超過をそのままにしておくと新規融資が難しくなり、計画書自体の信頼性の低下につながります。

経営改善計画書に記載する際は、数年以内に純資産を黒字に戻す具体的な施策を盛り込むことが重要です。M&Aによる不採算部門の売却や増資など、積極的で確実に実践できる手段を検討しましょう。

また、コスト削減や売上の増加、役員報酬の抑制や借入金の返済による内部留保の積み上げで堅実な経営体制を示すのも一案です。

3-4.効果を測定できる具体的な数値を入れる

作成する際は、効果を数値化すると、進捗や改善点が明確になります。戦略や方向性を示すだけでは不十分です。実現できる旨を数値で裏付ける必要があります。

たとえば、純資産がマイナス2,000万円の債務超過の企業が、3〜5年程度で毎期400〜600万円の利益を積み重ねる計画を策定した場合は、「5年で借入残高を2,000万円(約20%)削減する」などと記載すすれば分かりやすいでしょう。

また、「SWOT分析」なら、強みと機会を活かして「新規販路の開拓で売上を25%増」、弱みと脅威から「原価率を5ポイント改善」など、実際に数値で示すと説得力も高まります。

このような数値化は金融機関対策のみならず、自社の進捗状況の確認にも役立つでしょう。もちろん、計画の実効性を証明する物差しとしても有効です。

3-5.内部要因の反省を盛り込む

内部要因の反省も盛り込むべきでしょう。そもそも、経営が順調であれば、改善計画を策定する必要はありません。だからこそ、これまでの課題を徹底的に洗い出し、今後に活かそうとする意識が重要です。

例えば、経営層の意志決定の遅延や販売戦略の判断ミス、組織体制の課題から役員や代表者の報酬減を示すのもよいでしょう。今後の組織体制の強化や仕組みづくり、意志決定の迅速化に関する改善策を添えるのも効果があります。

状況によっては、意志決定の遅延の原因を情報共有の不足、販売戦略は市場分析の甘さなど、なぜこうした課題が生じたのかを端的に記載しましょう。自社の過去の課題と真摯に向き合い、再発を防ぐ意志や姿勢を示すことが大切です。

3-6.表現や用語を分かりやすくする

経営改善計画書を作成する際は、表現や用語も分かりやすくしましょう。金融機関の担当者は融資のプロであっても、企業の業務内容までは精通していません。

同業界では常識的な用語でも、専門用語や技術的な記述が多い場合は、十分に内容を理解してもらえない可能性があります。金融機関では、多くの企業から提出される経営改善計画書で、それぞれ融資の可否を判断しなければなりません。

「努力する」「強化する」などの抽象的な表現を避け、「現状→課題→施策→成果」のストーリー性を重視し、一見して分かりやすくする工夫も必要です。

表現や用語だけでは説明が難しい場合は、図表や画像などを添付するのも効果があります。自社の今後を左右する重要な書類ですから、金融機関の担当者の目線で作成しましょう。

4.まとめ

経営改善計画書は、自社の今後を左右するカギになるといっても過言ではありません。だからこそ、きちんと現状を把握して自社の課題を洗い出し、どうすれば改善できるかを簡潔かつ明快に示す必要があります。

特に、金融機関から新たに融資を受ける場合は、今回紹介した6つの注意点を参考にしながら、基本8項目に沿って担当者に伝わりやすく、説得力の高い経営改善計画書を策定しましょう。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。