2026.01.31
【コラム】経営者個人がすべき税金対策とは?おすすめ8選と注意点を解説
経営者個人の税金対策は、所得税や住民税など個人にかかる税金が対象となるため、法人向けの税金対策とは異なります。
しかし、事業と家計のバランスを整えながら適切な税金対策を実践すれば、資産形成や手取りの最適化にも直結し、将来のリスクを低減できるでしょう。
経営基盤を安定させるために、経営者個人の税金対策も重要です。そこで今回は、経営者個人におすすめしたい税金対策8選と、実施する際の注意点について詳しく解説します。
目次
1:経営者個人が支払う税金の種類
経営者個人が支払う税金の種類は、法人とは違って個人課税が中心です。実際に支払う主な税金は、5つの項目と8つの種類に大別できます。
| A:所得にかかる税金 | |
| 税金の種類 | ①所得税 |
| 区分 | 国税 |
| 課税対象 | 個人の所得 |
| 注意点 | ・累進課税で所得に応じて税率が上がるため、税負担が変動しやすい |
| 税金の種類 | ②住民税 |
| 区分 | 地方税 |
| 課税対象 | 前年の個人の所得 |
| 注意点 | ・所得割・均等割がある・原則的に前年所得によって課税されるため、直近の売上や収入が落ちても税負担が発生する |
| 税金の種類 | ③個人事業税(個人事業主の場合) |
| 区分 | 地方税 |
| 課税対象 | サービス業等の法定業種に該当する事業の所得 |
| 注意点 | ・業種によって非課税の場合がある・原則として役員報酬のみで個人事業主でない場合は課税されない |
| B. 消費にかかる税金(間接税) | |
| 税金の種類 | ④消費税 |
| 区分 | 国税(地方消費税を含む) |
| 課税対象 | 商材等の課税売上 |
| 注意点 | ・利益が出ていなくても納税が必要な場合がある・資金繰りに影響が出やすい |
| C:資産にかかる税金(資産課税) | |
| 税金の種類 | ⑤固定資産税 |
| 区分 | 地方税 |
| 課税対象 | 事業用の土地・家屋・償却資産など |
| 注意点 | ・景気や収益に関係なく、保有していれば毎年課税される・固定費として継続的に負担が生じやすい |
| 税金の種類 | ⑥不動産取得税 |
| 区分 | 地方税 |
| 課税対象 | 購入・贈与・建築などの不動産 |
| 注意点 | ・取得時に一度だけ課税される・購入後に納税するため、資金繰りを圧迫する可能性がある |
| D:取引・契約にかかる税金(取引課税) | |
| 税金の種類 | ⑦印紙税 |
| 区分 | 国税 |
| 課税対象 | 契約書・領収書などの課税文書 |
| 注意点 | ・作成書類の種類や金額によって税額が異なる・貼付漏れがあると追徴される可能性がある |
| E:財産の承継にかかる税金(承継課税) | |
| 税金の種類 | ⑧相続税・贈与税 |
| 区分 | 国税 |
| 課税対象 | 相続・遺贈・贈与等で取得した財産 |
| 注意点 | ・不動産や自社株などの換金しにくい資産も課税対象となる・納税資金の確保が課題になりやすい |
消費税は資金繰りに影響しやすく、住民税は前年の所得に基づいて税負担が変動するため、注意が必要です。これを機会に、自社でどんな税金を支払っているのか、概要を把握しておきましょう。
2:経営者個人におすすめの税金対策8選
前章のように、経営者個人が支払う税金には、資金繰りに影響するものや資金確保の難しいものも含まれます。だからこそ、適切な対策の選択が不可欠です。
この章では、経営者個人におすすめしたい税金対策8選について説明します。
2-1:各種所得控除を漏れなく適用する
まず、各種所得控除は漏れなく適用しましょう。個人に適用される代表的な所得控除は、次の4種類です。
1.扶養控除
2.基礎控除
3.医療費控除
4.社会保険料控除
これに加えて、生命保険に加入していれば「生命保険料控除」、地震保険に加入していれば「地震保険料控除」を受けられます。もし自然災害や火災・盗難などで生活用資産に損害を受けた場合は、「雑損控除」が適用される可能性もあるでしょう。
また、小規模企業共済に加入していれば「小規模企業共済等掛金控除」もあり、確定申告時には「ふるさと納税」などの「寄附金控除」も有効です。
このほか、家族構成や経営者の状況によっては、次の6つの控除も適用されます。
1.配偶者控除
2.配偶者特別控除
3.障害者控除
4.寡婦控除
5.ひとり親控除
6.勤労学生控除
なお、控除の適用を受ける際は、証明書などの書類が必要です。控除によっては、年末調整と確定申告で時期が異なる点にも留意しましょう。
これらは、いずれも所得税・住民税に関わるものですが、同じ控除でも上限額や計算式が違うものもあります。たとえば、基礎控除は、合計所得金額によって段階的に変動しますし、所得税と住民税の控除額は同じではありません。
それぞれの注意点を踏まえ、取りこぼしなく控除を受けられるよう手続きを進めましょう。
2-2:役員報酬を少なくする
役員報酬を少なくするのも一案です。経営者個人の役員報酬は、給与所得として扱われ、所得税・住民税の課税対象となります。つまり、役員報酬を少なくすれば課税所得が減り、税負担を軽減できるわけです。
ちなみに、役員報酬は経営者個人だけではありません。配偶者や子どもなど家族の役員も、経営者と同様に個人課税の対象です。
役員報酬の削減については、次の2点に注意しましょう。
・損金算入に影響するため、原則として役員報酬は期中には変更できない
・過度な削減は、生活費や資金計画に支障が出る可能性がある
なお、法人における役員報酬は、人件費(経費)扱いです。「利益=売上ー経費」の計算式でいえば、経費が減ると法人の利益が大きくなります。経営者個人の役員報酬を削減する際は、会社全体でのバランスを取ることが重要です。
2-3:小規模企業共済に加入する
将来的に、経営者個人の退職金として活用できる小規模企業共済への加入も効果があります。掛金は月1,000円から自由に設定でき、掛金の全額が所得控除の対象です。
ただし、途中解約や加入期間が短い場合は元本割れの可能性もあります。また、退職時の受け取りは退職所得となりますが、年金形式は雑所得として公的年金等の控除を適用できます。受け取り方法によって、課税の扱いが異なる点に注意しましょう。
この共済は、経営者個人にとって老後の資金と節税を兼ね備えた制度です。加入期間や受け取り方法なども検討し、上手に活用しましょう。
2-4:自家用車は社用車として利用する
自家用車は、社用車として利用しましょう。社用車とは、業務での使用を目的に企業が管理・使用する車両のことです。
保険料や車検のほか、日々の業務で移動する際にかかるガソリン代や駐車料金などを経費にできれば、所得の圧縮につながります。
ただし、私用と公用を兼ねる場合は、業務での利用分のみが対象です。走行記録や駐車場を使用した際のレシートなど、経費計上の根拠をきちんと保管しておきましょう。
2-5:役員社宅制度を導入する
経営者個人が賃貸物件に居住している場合は、役員社宅制度の導入も税金対策になります。物件の借主は企業で、役員は社宅の家賃を自社に支払ってそこに住むということです。給与支給ではなく、企業が家賃の一部を社宅として負担します。
なお、経営者個人が家賃を払わずに居住する場合は、給与課税扱いとなるため、注意が必要です。税務において社宅制度の妥当性を説明できるよう、物件を借りる際は適正な水準や広さを心がけましょう。
2-6:iDeCo(確定拠出年金)を併用する
先述の小規模企業共済と、自分で運用できる私的年金制度のiDeCo(確定拠出年金)を併用するのも一案です。このiDeCoも、掛金が全額所得控除となるため、所得税・住民税の節税対策に適しています。運用益も非課税で、経営者個人が加入すれば資産形成と節税の両面でメリットがあるでしょう。
ただし、原則として60歳までは引き出すことができず、時期によっては元本割れのリスクもあります。加入する際は、小規模企業共済とあわせて無理のない掛金の設定が重要です。
2-7:通勤・出張手当を支給する
通勤・出張手当の支給も、経営者個人や配偶者・子どもなどの家族役員・管理職を含む従業員を対象に、企業の報酬設計として幅広く活用できる税金対策です。
通勤手当は、条件を満たせば一定額までが非課税となるため、給与の増額よりも手取りが残りやすいでしょう。また、飛行機や新幹線などの出張交通費は、旅費規程に基づく適正な運用で実費精算すれば、手取りの最適化につながります。
ただし、出張手当は、社則の旅費規程などの適切な運用が不可欠です。非課税とするためにも、実態に合わせた領収書・行程表など、根拠となる資料の保管を徹底しましょう。
2-8:公的な税金制度を活用する
経営者個人の税金対策には、公的な税金制度も活用しましょう。ここでいう公的制度とは、国や自治体の実施する税制上の優遇措置や特例制度全般のことです。
これらの措置や制度は、要件を満たせば税負担の軽減につながるものの、各制度で要件や期限、提出書類などが細かく定められています。先に紹介した所得控除も含め、適用条件や手続きの流れを押さえ、適切に手続きを進めましょう。
3:経営者個人の税金対策の注意点3選
この章では、経営者個人の税金対策を実践する際の注意点3選について説明します。
3-1:本業に集中し節税を優先しない
税金対策では、本業に集中し節税を優先しないことが前提です。企業の運営や資金づくりのうえで非常に重要ですが、節税ばかりに目を向けると、本業に必要な投資や判断が後回しになりかねません。
また、節税目的で結果的に不要な支出が増えるケースも多く、制度を優先して行動すれば、資金繰りの悪化を招く可能性もあります。
税金対策はあくまで手段ととらえ、自社の売上や利益の確保を第一に考えて戦略を策定すべきでしょう。本業の成長と両立できる範囲内で、自社にとってどんな税金対策が適切なのかを見極めることが重要です。
3-2:経費を無駄にせず適切に計上する
経費についても、無駄な支出を増やさずに計上しましょう。そもそも経費は、節税のために増やすものではありません。経営戦略や企業方針に沿って自社に必要な支出を見定め、経費として計上すべきかを判断する必要があります。
本来なら不要な支出を増やす結果につながる可能性もあり、かえって将来的な自社発展の負担になるかもしれません。また、経費は事業に必要な支出であることが前提です。私的な支出を混在させると、税務調査で経費として否認されるリスクもあります。
特に、車両費や通信費などは、家庭での使用と混在しやすいことにも留意すべきです。領収書や請求書などの書類を整理し、使用目的を説明できるよう保管や管理に努めましょう。
3-3:税制改正などの最新情報を把握する
税制は、国や自治体の方針によって税率や法の趣旨、要件などの見直しがあります。特に、自治体の場合は、地域による独自の制度についても確認しましょう。
節税効果を見込めるものでも、改正内容を把握していなければ、適用外や想定外の税負担につながります。
税制改正の動向を見過ごさないよう、定期的に国税庁や自治体の公式サイトで最新情報のキャッチアップに努め、適切に対応しましょう。
4:まとめ
経営者個人の税金対策では、企業規模や事業形態によって、家庭との切り分けが難しいケースも少なくありません。だからこそ、所得税や住民税など個人にかかる税金について十分理解し、効果的な対策を講じる必要があります。
無理に経費を計上して節税するのではなく、資金繰りの悪化など将来的なリスクを低減しながら、自社の経営基盤を安定させることが重要です。
法人向けの税金対策との違いを踏まえ、控除や公的制度も上手に活用しながら自社の資金を増やしていきましょう。



