2024.03.13
【コラム】高齢化で倒産急増するのはこの業界です。儲かるはずが、倒産する本当の理由を話します。
日本は現在、超高齢化社会に突入しており、その影響は経済や社会構造に深刻な問題を引き起こしています。特に、労働力の減少や経済の縮小、そして特定の業種の消滅危機が指摘されています。
例えば、介護業界などは、高齢化が進むにつれて消滅の可能性があります。一見すると、高齢化が進めば需要が増えると思いがちですが、実際には逆の現象が起こっています。
このような状況は、介護業界だけに留まりません。今日は、超高齢化社会の進行が、将来的に消えてなくなる可能性がある他の業界にもスポットライトを当て、詳しく話を進めていきたいと思います。中小企業経営者の皆さんにとって、自社の業界がこの波にどう影響されるか、そして、この変化にどう対応していくべきかを考える上で、重要な視点となるでしょう。
超高齢化でお先真っ暗
人口ピラミッドが示す通り、若年層が多いほど社会は活力に満ち、経済は成長の機会を迎えます。しかし、現在の日本では、生まれてくる子どもの数が減少し続け、高齢者の割合が増加しているため、人口構造は逆転しています。これは、60歳以上の高齢者が多く、15歳から60歳までの働き盛りの人口が減少していることを意味し、労働人口の減少に直結します。
労働人口が減少すると、新しい価値を生み出す力が弱まり、国全体の生産能力が下がることになります。結果として、日本の経済はさらに厳しい状況に直面する可能性があります。特に、「失われた30年」と呼ばれる経済停滞の時期を経験している日本にとって、高齢化の進行はさらなる試練を意味しています。
このような状況は、中小企業経営者にとっても重要な意味を持ちます。労働力の確保、生産性の向上、そして新たなビジネスモデルの開発など、企業運営のあらゆる面で戦略的な対応が求められます。
高齢化でおこる問題
人手不足
日本の高齢化社会の進行は、労働市場における人手不足問題を一層深刻化させています。特に、生産年齢人口の減少は、企業が直面する最大の課題の一つとなっており、多くの業界で労働力の不足が顕著になっています。
この人手不足は、仕事があっても十分な人材が確保できず、業務を遂行することが困難になっている状況を生み出しています。さらに、技術革新やグローバル化の進展に伴い、高度なスキルを持つ労働者の需要が高まっている中で、これらの人材を確保することがさらに難しくなっています。
企業は、人手不足に対応するために、業務の自動化や効率化、外国人労働者の積極的な採用など、さまざまな対策を迫られていますが、根本的な解決には至っていません。この人手不足問題は、日本経済の成長潜在力を大きく損なう要因となっており、長期的な視点での対策が求められています。
経済の衰退
高齢化社会の進行は、日本経済における衰退の一因となっています。生産年齢人口の減少は、労働力の枯渇を意味し、これが直接的に生産性の低下につながっています。
また、高齢者人口の増加は、医療や福祉などの社会保障費の増大を招き、国の財政負担を重くしています。さらに、消費行動の変化も経済に影響を及ぼしています。高齢者は若年層に比べて消費傾向が異なり、消費活動が縮小する傾向にあります。
これらの要因が複合的に作用することで、国内で回るお金の総額が減少し、経済全体の活力が失われています。経済の衰退は、投資の減少、雇用機会の低下、そして国際競争力の弱体化をもたらし、日本の将来に対する不安を高めています。
一人一人の負担増(労働力)
高齢化社会の進行に伴い、労働力にかかる一人一人の負担が増大しています。労働人口の減少と高齢者人口の増加は、働く世代に対する社会保障の負担を重くしています。具体的には、1人の労働者が支える高齢者の数が増えることで、年金や医療、介護などの社会保障費用の負担が大きくなっています。
この増大する負担は、労働者の可処分所得の減少を招き、生活の質の低下につながっています。また、労働市場における人手不足は、残された労働者に対する業務量の増加を意味し、過重労働やストレスの増大に繋がっています。
このように、一人一人の労働者にかかる負担の増大は、社会全体の持続可能性にとって深刻な問題となっており、将来に対する不安をさらに高めています。
超高齢化社会で消滅危機の業種
介護業界
意外に思われるかもしれませんが、介護業界は超高齢化社会の進行により消滅危機に瀕しています。高齢者の増加に伴い、理論上では需要が高まっても、実際には介護業界自体が深刻な人手不足に直面しています。これは、介護職員の低賃金、厳しい労働条件、そして職業としての魅力不足が原因となっています。
介護業界は、国の政策や法律に大きく依存しており、その変動性が収益の不安定さを招いています。かつては、デイサービスなどの介護事業が盛り上がりを見せ、多くの事業者が参入していました。しかし、介護サービスへの国からの補助が減少する一方で、利用者から直接得られる収入は極めて限られています。
ここで忘れてはならないのが、人口ピラミッドの変化と超過死亡の現象です。高齢化が進む現代において、高齢者層の上部はどんどん縮小していくことが予測されます。これは、今はまだ高齢者の数が多く需要があると感じられるかもしれませんが、将来的には老人自体の数が減少し、それに伴い需要も下がることを意味します。さらに、近年の超過死亡の報告により、予想以上に高齢者の死亡率が上昇していることが分かっています。これは、単にライバルに市場を奪われているのではなく、利用者自体が減少しているため、業界全体の需要が縮小していることを示しています。
このような状況下で、介護業界は非常に厳しい競争に直面しています。利用者の減少、収益の不安定さ、そして同業他社の増加が、経営を圧迫しています。将来的には、今以上に利用者が減少することが予想され、これが業界のさらなる縮小を招くことになります。介護業界への新規参入は、これらのリスクを十分に理解した上で慎重に検討する必要があります。
介護業界においては、既に多くの企業が経営難に直面し、倒産する企業が増加しています。今後もこの傾向は続くことが予想されます。人口ピラミッドの変化と超過死亡の現象を踏まえ、業界の将来を見据えた経営戦略が求められています。経営者は、これらの変化に柔軟に対応し、持続可能なビジネスモデルを構築することが重要です。
葬祭関連業
葬祭業界は、現在、人の死を取り扱うことから、超高齢化社会の影響を最も受けやすい業種の一つとされています。最近の状況では、火葬場や葬儀屋さんなど、人が亡くなると必要とされるサービスに対する需要が急増しており、一部では火葬場で行列ができるほどの特需状態にあります。遺体を保管するための冷蔵庫が足りないという問題まで発生しているほどです。このような現象は、今のところ需要がある証拠であると言えますが、これが一巡すると、状況は一変します。
人口の減少は避けられない未来であり、その結果、亡くなる人の数も自然と減少していきます。これは、葬祭関連業界にとって、長期的な視点で見れば、需要が減少するということを意味します。現在は多くの人が亡くなっているため、しばらくは業界が潤う状態が続くかもしれませんが、5年、10年と時が経つにつれて、人口の減少により、業界全体の需要は減少していくことになるでしょう。
葬祭業界は、自然と発生する需要に依存しているため、新たな需要を創出することが難しい業界です。広告や宣伝を大々的に行う性質のものでもなく、無理に仕事を増やすこともできません。したがって、人口減少が進むにつれ、業界内での競争はさらに激しくなり、仕事が減少する中で生き残ることができる企業は限られてくるでしょう。長期的に見れば、多くの業者が市場から退場することになる可能性が高いと言えます。
この状況は、介護業界とも密接に関連しており、超高齢化社会が進むにつれて、葬祭業界だけでなく、多くの業界が直面する厳しい現実を象徴しています。経営者は、これらの変化を見据え、長期的な戦略を練ることが重要です。
農業
農業は日本において非常に重要な産業でありながら、その存続が危ぶまれている業界の一つです。多くの場合、日本の農業を支えているのは、田舎で小規模に農業を営むおじいちゃんおばあちゃんたちです。実際、日本では専業農家は少数派で、多くの農家は農業以外にも仕事を持っているのが現状です。
若い世代にとって、農業は大変な仕事であり、かつそれほど儲かるわけではないため、新たにこの道を選ぶ人は少なくなっています。今農業を営んでいる高齢者が仕事を続けられなくなった場合、後継者がいなければその土地は使われなくなることでしょう。全国的に見ても、かつて畑だったものが何も育てられていない土地が増えているというのは、この現象の明確な証拠です。
確かに、農業法人や会社が高付加価値の野菜を大規模に生産している例もありますが、これはあくまで少数派です。多くの農家が抱える小規模な農業の未来は、厳しいものが予想されます。農業がなくなるというのは、日本にとって大きな問題です。食料自給率の低さは既に議論の対象となっており、将来的には食料不足が深刻化する可能性があります。世界人口の増加により、輸入に頼っている現在の状況が持続可能でなくなるかもしれません。
農業は絶やしてはならない業種であるにもかかわらず、多くの人が農業を営むことに消極的です。このジレンマは、農業の未来をさらに不確実なものにしています。もし日本で食料を十分に生産できなくなったら、食べ物が不足するという事態にも直面するかもしれません。農業の重要性は理解しつつも、自分が直接農業を行うかと問われれば、多くの人がためらうでしょう。これが、農業が直面する現実であり、今後も続く可能性が高い課題です。
士業
士業と言われる税理士、公認会計士、行政書士、弁護士などの業界は、技術の進化とともに変化の波にさらされています。これらの専門家は、税金の計算、登記、法律手続きに関わる書類の作成など、一般の人には難しい業務を扱っています。しかしながら、若い世代の間ではシステムやAIの利用が得意であり、従来は専門家に依頼していた多くの業務が自分でできるようになってきています。
たとえば、現在はさまざまな便利なシステムが登場しており、建設業許可の申請書類なども、専用のソフトウェアを使えば簡単に作成できるようになっています。これらの技術の発展により、知識がある程度ある人ならば、自分で多くの手続きを処理できるようになり、専門家に高い費用を払う必要が減ってきています。
さらに、士業の多くは法律に守られた職域を持っており、例えば、税理士でなければ他人の税金計算を行うことができないなど、一定の業務は特定の資格者に限定されています。しかし、このような法律に守られた業務も、システムの進化により自分で処理できるようになると、専門家に頼む必要性が薄れてきます。
この業界の従事者の年齢が高いこともあり、今後はこれらの専門家が退場し、業界の人数が減少していく傾向にあると考えられています。現在は需要がある程度あるものの、将来的には技術の発展により士業の仕事が自動化され、業界の数が減少していく可能性が高いというのが現状です。士業が直面しているこのピンチを乗り越えるためには、新たな価値を提供できるサービスの開発や、技術の変化に合わせた業務の見直しが求められています。
伝統工芸職人
伝統工芸職人という業界は、日本が世界に誇る繊細かつ高度な技術を持つ分野です。先祖伝来の技術を受け継ぎ、何百年もの歴史を持つ職人たちは、手作業による芸術品を創造しています。これらの作品は、その一つ一つが丁寧に作られた芸術品であり、機械では決して置き換えられない価値を持っています。しかし、これらの技術を習得するためには、10年、20年、場合によっては30年以上の長い修行期間が必要とされます。
現代の若い世代にとって、このような長期間の修行は魅力的に映らないのが現実です。今日の若者はシステムやAIなどの技術を使いこなすことに長けており、そういった便利なツールがあれば、多くのことを自分で行える時代になっています。このため、伝統工芸職人への道を選ぶ人は年々減少しています。さらに、伝統工芸品の多くは、ブランディングやマーケティングがうまく行かず、高価格で販売されることが少ないため、若い人たちにとってさらに魅力が低いと感じられます。
この業界が直面している問題は、今やっている職人たちが高齢になり、仕事を続けられなくなったとき、後継者がいないことにより技術が途絶えてしまうことです。現在でも、伝統工芸を学び、後継ぐ意欲がある若い人は極めて少なく、この傾向は今後も続くと予想されます。これにより、日本の貴重な伝統工芸が失われる可能性が高まっています。
もちろん、価値が高く、プレミアムがつく分野の伝統工芸品は残っていくかもしれませんが、そうでない場合、専門的なマニア以外からは見向きもされなくなる可能性があります。修行を積み、職人としての道を歩むことの難しさ、そして伝統工芸職人の未来に対する不安は、今後も業界全体の大きな課題となります。現代の快適さと引き換えに、長年にわたって培われてきた技術と文化が失われてしまうのは、計り知れない損失です。
まとめ
超高齢化社会がもたらす影響は、多くの業種に及んでいます。今回紹介した業界は氷山の一角に過ぎず、高齢化の波はさまざまな分野に影響を与えています。このような状況下で、自分の業界が将来どうなるか、どのように影響を受けるかを理解し、適切な対策を講じることが重要です。今日取り上げなかった業界であっても、安心してはいられません。常に変化に対応し、生き残るための戦略を練る必要があります。
例えば、士業に従事している私自身も変化に適応することで存続しています。税理士や公認会計士などの伝統的な業務だけでなく、企業の資金繰り改善や業績向上など、新たな価値を提供しています。このように、変化し続けることで時代のニーズに応え、事業を継続できています。
たとえ自分の業界が高齢化の影響を直接受けなくても、市場のニーズに合わせてサービスを進化させることが生き残りの鍵となるということです。また、今の事業モデルが将来性を失う可能性がある場合、業種や業態の転換を考えることも一つの選択肢です。過去の遺産にしがみつくのではなく、時代に合わせて業界や事業モデルを変化させていく柔軟性が求められます。
結論として、高齢化社会で生き残り続けるためには、常に変化し続け、時代に合わせた価値を提供し続けることが重要です。時代に適応できない事業は淘汰される運命にありますが、逆に変化を受け入れ、新たな価値を見出すことができれば、存続し続けることが可能です。今後も変化を恐れず、新しい挑戦を続けることが、企業の持続可能な成長につながります。
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