2026.01.15
【コラム】法人に効果的な税金対策とは?7つのテクニックと注意点を解説
法人には納税義務があり、自社に適した税金対策を講じることで節税にもつながります。事業で利益が出るほど納税額は高くなるため、税金対策は自社の事業資金を安定させるうえでも欠かせません。
一方、法律のルールに従わない不正行為は脱税となります。税の負担を減らしつつ、適切な税金対策を講じることが重要です。そこで今回は、法人に効果的な税金対策の7つのテクニックとともに、実施する際の注意点について詳しく解説します。
目次
1:法人税の概要
法人税とは、企業の利益に対して徴収される税金のことです。個人事業主には所得税が課せられるのに対し、法人は存在自体が課税対象となるため、このように呼ばれています。
企業が事業活動によって得た利益に課せられる国税で、一般的に、利益が出ない場合は徴収されません。つまり、売上すべてが課税対象ではないということです。利益は、売上から経費を差し引いて算出されます。
たとえば、商材の仕入代金や人件費、テナント料などは経費になりますが、経営者の個人的な支出や過度な接待費は経費とは認められません。経費かどうかは一定の要件を満たすかどうかですが、その判断が難しいケースも多く、注意が必要です。
2:法人に支払義務のある税金の種類
法人に支払義務のある税金は、先述の法人税だけではありません。実際には、大きく分けて5種類あります。まずは、概要を把握しておきましょう。
| 税金の種類 | 区分 | 課税対象 | 注意点 |
| 1.法人税 | 国税 | 法人の利益 | ・利益が出た場合のみ課税される・売上から経費を差し引いた後の金額が対象となる・経費として計上できるかどうかの影響が大きい |
| 2.法人住民税 | 地方税(都道府県・市区町村) | 法人の存在自体および所得 | ・節税の余地がほとんどない・赤字でも「均等割」がある・企業が存続する限り、原則的に支払い義務がある |
| 3.法人事業税 | 地方税(都道府県) | 法人の事業活動で得た利益 | ・利益がで出た場合のみ課税される・一定額は法人税の損金として扱うことができる |
| 4.消費税 | 国税 | 取引する商材 | ・取引自体に課税される・赤字・黒字・利益の有無を問わない・利益と連動せず、資金繰りを圧迫しやすい・一部は地方消費税として自治体の財源に充てられる |
| 5.固定資産税 | 地方税(市区町村) | 保有する土地・建物・償却資産 | ・赤字・黒字・利益の有無を問わない・資産を保有している間は、毎年発生する・軽減措置や評価額の確認が重要になる |
法人の税金は、税目によって性質が異なります。節税の可否にかかわらず、それぞれの特徴を理解したうえで、無理なく自社の経営に反映させていきましょう。
3:法人の税金対策に効果的な7つのテクニック
この章では、法人の税金対策に効果的な7つのテクニックについて詳しく説明します。
3-1:役員報酬の最適化で損金を算入する
役員報酬は支出になりますが、定期同額で社会通念上妥当な額を適切に支給すれば、損金として算入できます。損金とは、法人税を計算する際に経費として扱われる支出のことです。損金を算入すると、売上から差し引く金額が増えて法人の利益が低減し、法人税の課税額も減ります。
ただし、役員報酬の最適化とは、「高額にする」ことではありません。会社の利益水準に適している必要があります。また、法人税の節税によって、役員個人の所得税や社会保険料は増えるため、バランスが取れていることも重要なポイントです。
なお、役員報酬の規定や支給方法が適切でない場合は、損金として認められません。原則として、決算直前に増額できないことも念頭に置いておきましょう。
3-2:不要在庫や固定資産を処分する
不要在庫や固定資産の処分も、税金対策として有効です。売れ残りの在庫や使用していない固定資産は、企業の利益を圧迫する原因となります。これを機会に、自社の在庫や固定資産を見直し、整理してみましょう。
不要在庫の状態によっては、廃棄やセール品としての売却のほか、目的や相手が明確な場合は寄付なども考えられます。休眠している固定資産は、売却も検討すべきでしょう。
在庫の廃棄・評価額を計上すれば利益を圧縮でき、固定資産についても、除却損・売却損の計上によって同様の効果を得られます。利益が減れば、法人税も低減できるわけです。
ただし、帳簿上だけで処分しても、税務調査で認められません。社内記録や廃棄証明・写真などの証拠を残す必要があります。自社資産の実態に合わせて慎重に進めましょう。
3-3:福利厚生制度を充実させる
充実した福利厚生制度は、内容次第で自社のブランディングにもつながります。
ちなみに、福利厚生制度は、法律で義務付けられている法定福利厚生と、企業が自由に設定できる法定外福利厚生の2種類です。このうち法定外福利厚生が、税金対策のポイントになります。
従業員からのニーズが高く、競合他社にはないユニークなサービスを導入すれば、従業員満足度やモチベーションの向上に加え、優秀な人材の確保も期待できるでしょう。
ただし、福利厚生制度は、従業員やその家族の働きやすさを考慮するものであって、節税が目的ではありません。従って、全従業員を対象とし、継続的な運用が求められます。
また、現金での支給は、給与課税や社会保険の対象となりやすいため、注意が必要です。社内アンケートなどで自社に必要なサービスを把握し、制度の充実を図りましょう。
3-4:決算賞与で利益を圧縮する
決算賞与で利益を圧縮するのも効果的です。決算賞与とは、決算期末に支給する賞与のことで、次の3つの要件を満たさなければなりません。
1.決算日までに支払額・対象者が確定している
2.決算日までに支払義務が発生している
3.決算後1~2ヶ月以内に実際に支給される
未払費用として決算賞与を計上すれば、損金が増えて利益が減るため、法人税も軽減できるのです。ただし、決算前に確定し、社内通知や根拠となる決裁記録などで支払義務を明確にしておく必要があります。
なお、役員賞与は、一般的に損金不算入となるため対象外です。実践する際は、先の3つの要件を押さえて必ず決算前に確定しましょう。
3-5:赤字を繰り越す
赤字を「繰り越す」とは、当期の赤字を将来の黒字と相殺することです。繰り越しておけば、将来黒字になっても法人税を抑えられます。ピンチをチャンスに変える対策といってもよいでしょう。ただし、繰り越すには、青色申告を毎年欠かさず申告している必要があります。
企業経営では、売上減少のほかにも、固定費や原価の上昇、投資などが重なって一時的に赤字になることがあります。つまり、赤字だからといって、すぐに債務超過に陥るわけではないのです。
ただし、長期的に赤字が続いている企業は、無理な節税をするよりも、資金繰りや収益の改善・コスト構造の見直しなど、赤字から抜け出す改善策の策定を優先すべきです。補助金・助成金の活用も視野に入れ、必要に応じて専門家にも相談しましょう。
3-6:未払費用を計上する
未払費用を計上するのも、税金対策になります。たとえば、既に発生しているテナント料や水道光熱費など、支払が完了していない費用を当期に計上することです。ただし、将来的に発生する見込みや予定のある費用は認められません。
先述の決算賞与と同様、あえて未払いの費用を計上して損金を増やせば利益が減るため、法人税を減額できます。
なお、請求書や契約書・過去の実績など、金額を合理的に算定できない場合は、税務調査で否認されるケースも多いようです。財務上の問題とならないよう計上したら放置せず、翌期には必ず精算しましょう。
3-7:経営セーフティ共済に加入する
中小企業・個人事業主を対象とする経営セーフティ共済への加入も、税金対策として使われることが多い手法です。中小企業基盤整備機構が運営し、取引先の連鎖倒産を回避するための制度で、正式には「中小企業倒産防止共済制度」と呼ばれています。
ただし、加入する場合もキャッシュアウトが発生し、資金繰りの悪化につながる可能性があるため、資金繰り的な余裕のある範囲でおこなうことが重要です。
5千円単位で、毎月5千〜20万円までの掛金を自由に積み立て、資金リスクに備える仕組みです。法人の場合は、支払った分を全額損金として算入できます。
企業にとって「最後の安全網」ともいえる経営セーフティ共済は、8千万円を上限に、掛金の最大10倍まで無担保・無保証で借入できるのが特徴です。また、金融機関の融資より比較的スピーディーに資金を確保できます。
中小企業は、自社の経営状況だけでなく、取引先の倒産による連鎖倒産の影響も意識しなければなりません。実際、帝国データバンクの調査によれば、2023年の連鎖倒産は287件で、割合も前年にくらべて13.9%増加しています。
この経営セーフティ共済は、事業で利益が出た年に調整しやすい対策です。解約すれば資金として戻る可能性もあるため、連鎖倒産の備えと節税の両面から活用を検討しましょう。
4:法人の税金対策における3つの注意点
この章では、法人が税金対策を実践する際の3つの注意点について説明します。
4-1:法律遵守により会計の透明性を保つ
まず、法律を遵守し、会計の透明性を保つよう心がけましょう。中小企業が遵守すべき法律には、法人税法や所得税法などの税法、帳簿の作成や保存義務を規定する会社法のほか、慣習法として正確な記帳や保存を求める会計基準があります。
企業は、これらの規定に従い、財務三表を作成しなければなりません。取引の恣意的な処理や不明瞭な取引がないという根拠を数字で示せば、税務署や金融機関など第三者も確認でき、会計上の公平性が維持されます。
なお、中小企業には、キャッシュフロー計算書の作成義務はありませんが、経営戦略や税金対策の一環として作成するとよいでしょう。
4-2:過度な対策は資金不足につながる
過度な税金対策は資金不足につながるため、注意が必要です。たとえば、経営セーフティ共済の積立が月5万円程度でも、法人保険や小規模企業共済に同時加入していれば、月々の負担はそれなりの金額になります。
また、利益が出て保険を前払いした直後に、取引先からの売掛金の回収遅延や取引先の支払条件の変更があった場合は、帳簿上は黒字でも現金は不足するでしょう。
共済や保険は解約できるとはいえ、払戻率や元本割れがあれば、時期的に得策ではありません。キャッシュフローと税金対策は同義ではないことに留意し、自社の資金状況に適した税金対策を実践しましょう。
4-3:税金対策は計画的に実施する
税金対策は、計画的に実施しましょう。利益が出たからといって、すぐに何らかの対策を講じると、資金不足のリスクも高まります。また、単年ではなく、複数年で判断すべきです。
実際に計画を策定する際は、次の3つのステップで実践しましょう。
1.今期の利益と手元の資金を正確に把握する
2.今後2~3年以内の支出や資金繰りを想定する
3.無理のない範囲で税金対策を検討する
売上が減少した場合や、どの程度の資金が手元に残るかを意識しながら、自社で継続できる対策を厳選する必要があります。税金対策の目的は、節税額を増やすことではありません。自社の成長段階や事業規模に応じた対策を検討しましょう。
まとめ
事業で利益が出ると納税額も高額になりますが、自社に適した税金対策によって大きな効果を期待できます。
しかし、将来を見据えてきちんと計画を立て、継続できるものでなければ、かえって資金不足の原因となるでしょう。また、財務三表の作成にあたっては、第三者が根拠のある数字を確認できるよう会計の透明性を保つことも重要です。
今回紹介した7つの税金対策のテクニックを参考に無理のない方法を選択し、事業資金の安定と自社の成長へとつなげましょう。



