2023.10.18

【コラム】銀行と信用金庫の目的の違い理解してますか?これ知らないと本当に危険です

信用金庫との上手な付き合い方とその重要性についてお話します。信用金庫と上手く付き合うことは、いざという時に親身に助けてくれる存在を作るうえで非常に重要です。もしもこのポイントを知らないと、困難な局面で融資を受けるのが難しく、最悪の場合、倒産への道を進むこともあります。
今回は黒字倒産を防ぐための、信用金庫とのうまい付き合い方を7つのポイントで解説したいと思います。さらに、信用金庫だけでなく、他の金融機関との関わり方についてもお伝えしますので、経営者の方や個人事業主の方は、ぜひこの動画を参考に、黒字化への道を歩んでいただければと思います。

信用金庫と付き合うメリット

まず、信用金庫と付き合うメリットについて解説します。

  1. 困った時に助けてくれる存在
    • 信用金庫というのは、会員が困ったときに助けてくれる存在です。借り入れを行う場合、信用金庫の会員になる必要がありますが、この信用金庫の存在意義は、その会員の利益を最大化していくことにあります。これは普通の銀行とは異なるポイントで、銀行が株式会社であり、自体の利益を最大化して株主価値を高める営利企業であるのに対し、信用金庫は営利を目的としない企業です。
      つまり、信用金庫は会員の利益を最大化することが存在意義となっており、会員が困っている時は、なるべく助けようという姿勢を持っています。たとえば、業績が悪化し、資金がショートする可能性が出てきたとしても、銀行が融資を断る中で信用金庫は支援してくれる可能性があります。これが信用金庫の最大のメリットとなり、会員が困った時に再生する道を考え、支援を行ってくれるのです。
  2. 不要な商品を押し付けない
    • 信用金庫と普通の銀行の違いの一つに、商品やサービスのセールスのアプローチが挙げられます。一般の銀行では、融資を行う際に、「投資信託を利用してください」や「保険に加入してください」、「こちらの会計士を利用してください」といった、さまざまな商品やサービスを薦めるケースが少なくありません。これらは銀行が手数料を稼ぐためであり、営業マンには売上ノルマがあるため、必ずしもクライアントの利益を最優先した提案とは言えないこともあります。これに対して信用金庫は、営利を追求しない組織体であり、不必要な商品やサービスを強く推すことが基本的にはありません。
    • そして、特に新しく設立された規模の小さい会社にとっては、大手銀行では小さい案件として扱われ、必要とされるサービスが得にくいことがあります。しかし信用金庫では、こうした小規模なビジネスでも親身にサポートを行い、損害を避けてくれる傾向があるため、初めての取引相手として信用金庫を選ぶのは一つの良い選択かもしれません。小規模ながらも堅実にビジネスをサポートしてくれるパートナーとして、信用金庫がその役割を果たしてくれることでしょう。
  3. 距離が近い
    • 信用金庫はその特性から、物理的な距離と心理的な距離、両方で近い存在となっています。まず、物理的な距離に関しては、信用金庫が活動エリアを持ち、そのエリア内の会社とのみ取引を行います。例えば、茨城県に拠点を持つ会社は、沖縄の信用金庫とは直接取引ができません。これに対して、全国規模で支店を持つ銀行では、全国どこでもの企業と取引が可能です。この地域密着型の性格から、物理的に企業と近い関係を持つことができます。
    • また、心理的な距離についても、信用金庫は企業と密な関わりを持つことが多いです。信用金庫の担当者は頻繁に会社を訪問し、あるいは企業が訪れることもあるため、コミュニケーションが取りやすく、相談しやすい雰囲気があります。一方で、一般的な銀行は担当者が多くの企業を抱え、もし頻繁に訪問やコンタクトがあっても進展がない場合、場合によっては担当者から迷惑がられることもあるかもしれません。このように、信用金庫は物理的・心理的な距離が近く、地域の企業を支える頼りになる存在となっているのです。

黒字倒産させない為の金融機関との付き合いかた

1.金利が高くても取引を続ける

信用金庫の金利は一般的に高めですが、金利だけを追求するのではなく、信用金庫との良好な関係を築くことが重要です。金利が高くても信用金庫との取引を続けることで、困った時に助けてもらえる可能性が高まります。信用金庫は会員の利益を最大化するため、リスクを共有し合う仲間として信頼関係を築くことが大切です。

2.定期的に担当者と会う

信用金庫との良好な関係を維持するためには、定期的に担当者とのコミュニケーションを取ることが重要です。年1回の決算書提出だけでなく、月次や四半期ごとに会って会社の状況を報告し、相談することで、信用金庫との信頼関係を深めることができます。不測の事態に備えて、常に連絡を取り合うことはお互いにとって有益です。

3.担当者が変わったら

金融機関では、担当者が頻繁に変わることがあります。したがって、同じ情報を何度も説明する必要があります。担当者に情報が引き継がれない可能性が高いため、丁寧に説明を行うことが大切です。担当者の性格やスタンスを理解し、適切にコミュニケーションをとることが必要です。

4.長い付き合いをする

信用金庫との長い付き合いは、信頼関係を築く上で非常に重要です。急に資金が必要になったとき、長い付き合いをしてきた信用金庫は、サポートしてくれる可能性が高まります。そのため、長期的な視点で信用金庫との関係を築くことをおすすめします。

5.経営計画書をしっかり作る

経営計画書の作成は、信用金庫だけでなく、どの金融機関と取引をするにあたっても、またそれ自体が企業経営においても極めて重要な要素となります。将来の金融機関との取引において、企業の事業性を評価してもらい、その将来性に信頼を持ってもらうことは、融資の取得において必須となることです。そこで、企業が将来性をいかに示すかは経営計画書を通じて表現されます。過去の実績だけではなく、その先の見通しや戦略をしっかりと示すことで、金融機関に対して企業の価値を理解してもらう礎となります。

更に、国の方針においても、計画書を作成できない企業に対する支援は減少してきており、その意味でも経営計画書の作成は不可欠です。計画書を作成し、企業の将来性と戦略を明確にすることは、金融機関からの信頼獲得の大切な一環となります。

6.決算書の内容を磨く

決算書を磨くというアプローチは、企業が金融機関との取引を考える際に大変重要なポイントとなります。先程触れた経営計画書で会社の将来性を示すことはもちろん大切ですが、過去から現在の実績を示す決算書もまた、金融機関からの信頼を勝ち取る上で不可欠です。融資を受けるためには、利益を生み出さない無駄な資産が増えないよう、計画的に資産の整理や現金化を進めることが大切です。

例えば、一部の企業では会社の資金で株式投資を行うケースが見受けられます。しかし、これは業績が気になり本業に集中できなくなる可能性があるばかりか、リスクも潜んでいます。仮に投資で損失が出てしまい、さらに本業の業績も悪化すれば、それは会社にとって非常に危険な状態となります。したがって、そのような余計な投資は避け、利益が出た際もその資金を本業に再投資し、更なる利益を生み出すサイクルを作ることが、会社としても金融機関からの評価も向上させる手法となります。

また、価値のない長期滞留在庫や不必要な資産は可能な限り処分し、見た目からも健全な財務を保つ工夫が必要です。実際の価値がないものが計上されていることは、金融機関も評価する際のマイナスポイントとなるため、これらをきれいに整理し、決算書を健全なものに保つことで、金融機関からの信頼も一層得やすくなるでしょう。

7.会社の状況に応じて適切な金融機関と取引

金融機関との適切な付き合い方は、企業経営において非常に重要な要素であり、実はこれが財務戦略の一環であるとも言えます。会社の規模やビジネスのフェーズに合わせて、どの金融機関と取引するかを決定するのは、その先の資金調達やビジネスの展開にも影響を与えてくる大切な選択です。

例えば、スタートアップフェーズや年商1億円程度までは、地元密着型の信用金庫との取引だけでも十分でしょう。しかし、ビジネスが成長し、より大きな資金調達が必要になると、信用金庫だけでは資金供給の上限に達してしまう可能性があります。その段階で第二地銀や第一地銀、さらには日本政策金融公庫といった金融機関とも取引を始めることを検討する必要が出てきます。

また、ビジネス規模が更に拡大し、3億円以上の資金調達が必要になる場合、商工中金といった政府系金融機関も視野に入れていくことが考えられます。10億円規模になると、メガバンクとの取引も一つの選択肢となり得るでしょう。

こうしたフェーズごとの金融機関選びは、単に資金調達の手段を増やすだけでなく、企業が安定して成長していくうえでのサポート体制を整える点でも大切です。ですから、初めから最も大きなメガバンクと取引すればよい、というわけではなく、会社の成長フェーズや必要なサービスに合った金融機関を選んで取引を進めていくことが、より良い財務戦略となるのです。

無計画な資金調達を避け、将来のビジネス展開も見据えた上で、適切な金融機関との関わりを構築していただければと思います。

銀行と信用金庫を使い分けよう

本日は、黒字倒産を避けるための信用金庫との適切な付き合い方についてお伝えしました。信用金庫についてあまりご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、信用金庫の特徴として、企業の規模に関わらず真摯に対応してくれる点が挙げられ、これが大変魅力的であると言えます。

従って、最初の金融機関として信用金庫と取引を開始することを検討する価値は十分にあると思います。会社の規模が大きくなり年商が増えた時は、必要なタイミングで適切な資金調達ができるパートナーであるかを基準に、その選択を行うことが極めて重要です。どの金融機関が自社のビジネスフェーズや目的に最も適しているのかを深く考え、賢明な選択をしていただけることを願っております。

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この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。