2023.07.15

【コラム】事業承継税制とは?概要や要件だけでなく注意点まで解説!

1. 事業承継税制の基本理解

1-1.事業承継税制とは何か

事業承継税制とは「円滑化法に基づく認定のもと、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する制度※」とあります。会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」がありますが、本コラムではおもに法人版の特例について説明します。

「後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度※」をわかりやすく言うと、創業者が2代目に対して事業承継をおこなったとします。その数十年後、2代目は一定の要件を満たせば、本来支払うはずだった株式にかかる贈与税・相続税を猶予してもらえるということです。

この制度には「一般措置」と「特例措置」の2つがあり、特例措置については事前の計画策定等や適用期限が設けられています。納税猶予の対象となる非上場株式等の制度の撤廃や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)がされているなどの違いがあります。
※引用:国税庁

1-2.事業承継税制の目的と重要性

事業承継税制の目的は、「非上場会社の株式を相続した後継者は、自由に使える現金預金を相続した場合とは違い、納税が困難である」という事情を考慮し、「会社の事業を継続させるのであれば税金を猶予する」というものです。

この特例を使って贈与した後、事業の継続が困難な事由が生じた場合には、「譲渡対価の額等に基づき再計算した猶予税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除」とあります。

つまりこれは、中小企業における円滑な承継を支援するために設けられた特例です。次の代に生前贈与で事業承継をおこなう場合は、ふたたび事業承継税制を使って贈与することが条件となります。先代からの意思を受け継ぎ、企業を代々守り続けていこうとする人にのみ、恩恵が与えられるようです。

2.事業承継税制の要件

2-1. 会社が満たすべき要件

事業承継税制を使うにあたって会社がまず満たすべき要件は、会社が「中小企業者」であることです。中小企業の定義は、中小企業庁「中小企業の定義について」にくわしく載っています。中小企業の定義に該当しない会社や上場企業、資産管理会社(一定の要件を満たすものを除く)以外の会社であることが要件です。

また、本制度では後継者に贈与または相続で株式のどちらで非上場株を渡すのかを選ぶ必要があります。後継者に売却して株式を渡す場合には使えない点にご注意ください。また、この制度の対象となる非上場株式等は、議決権に制限のないものに限ります。

なお、この特例を利用するためには、令和6年3月31日までに認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けた「特例承継計画」を、都道府県に提出しなければなりません。贈与後でも、円滑化法の認定申請時までは提出することができます。

特例承継計画の内容や、円滑化法の認定を受けるための具体的な要件・手続きについては、各都道府県の担当課に確認しましょう。

2-2. 先代経営者が満たすべき要件

先代経営者が満たすべき要件

・会社の代表権を有していたこと
・贈与(または相続)の直前において、会社の筆頭株主であったこと
・贈与の時において、会社の代表権を有していないこと

以上の三点です。先代経営者は、過去に代表取締役を務めた経験があれば代表取締役を退任していても、取締役会長や相談役になっていても、制度が利用できます。

また、事業承継税制を使う際に次の後継者さえ決まっていれば、次の次の後継者までは決めていなくて構いません。

後継者は親族以外でも構いませんが、後継者が事業を継続させ、次の後継者に交代ができて初めて免除となります。1度目から2度目の承継の間は、あくまでも納税が猶予されている期間であるということに留意してください。

2-3. 後継経営者が満たすべき要件

後継者が満たすべき要件

・贈与の時において、会社の代表権を有していること
・贈与の日において、18歳以上であること
・贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること
・贈与の時において、後継者および後継者と特別の関係がある者で、会社の筆頭株主であること
・後継者は一人の場合、もっとも多くの議決権数を保有することとなること

「贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること」という要件に注意してください。相続発生時には役員でなければいけません。これは、相続発生後に変更はできません。もしこの制度の利用を考えている経営者の方は、後継者になる可能性のある人物を役員として登記しておくことをおすすめします。

2-4. 「5年間」の事業継続について

制度の利用開始から5年間は守らなければいけないルールがあります。途中でルールに違反してしまった場合、それまで猶予されていた税金を納める必要があります。

そして、5年経ったらやらなければいけないことがひとつあります。それは、次の代に事業承継することです。次の代に事業承継ができてはじめて、それまで猶予されていた贈与税・相続税が免除されることになります。

3.事業承継税制を活用する際の注意点

3-1. 取消事由の項目が多い

事業承継税制を使うときは、猶予の取消事由の項目が多い点に注意しましょう。たとえば、代表取締役であることと株式等の保有を5年間継続するという要件が存在します。この二つだけでなく、さまざまな細かいルールがあり、どれかひとつでもルール違反を犯せばその時点で納税猶予が打ち切られます。経営者の方がすべて頭の中に入れるのは困難かと思いますので、しっかりと把握できるようにルールをまとめた一覧データを用意しておくとよいでしょう。

猶予されていた税額を納付する必要があるルールのなかで、主なものは下記のとおりです。

・この制度の適用を受けた非上場株式についてその一部を譲渡等した場合
・後継者が会社の代表権を有しなくなった場合
・会社が資産管理会社に該当した場合

「一般措置」においては「雇用の平均が、贈与時の雇用の8割を下回った場合」という要件もあって、8割を下回ると猶予が取り消されます。

しかし「特例措置」において8割を下回ったら、下回った理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出し、確認を受ける必要はあるものの、引き続き納税は猶予されます。

3-2. 経験のある税理士が少ない

事業承継税制を利用するメリットもありますが、デメリットも多くその過程には多くの落とし穴が存在します。そのため、この制度に消極的な税理士が多いことは事実です。

もしあなたの会社の顧問税理士が、相続税や贈与税全般にくわしくない場合、事業承継と得意とする他の税理士を探し、スポットで依頼することをおすすめいたします。その場合にはコンサルティングに費用等のスポットでの支払いが発生します。相続に強いとうたっている税理士のなかにも、制度を利用したことのない税理士はいますから、ぜひ事前に確認しておきたいですね。

円滑な事業承継のためにはしっかりとした準備が必要です。まずは信頼できる専門家を探し、制度が自社に馴染むかどうかを検討するところから始めてみてはいかがでしょうか。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。