2023.07.27

「もう銀行が貸してくれない、どうしよう…」→中小企業を救う最後の手段を教えます!

今回は、資金繰りで今困っているという会社の最後の救済策についてお話ししていきたいと思います。以前こちらのコラムでは、コロナ融資を満額使っているような会社はもう銀行からお金を借りることができませんよ、という話をしました。

じゃあ、資金繰りが苦しくなってしまってどんどんお金が減っている会社は、もう倒産するしかないのか?実は1つだけ、生き残れるかもしれない方法がまだ残されています。本当に最後の救済策。国の施策としてもうこれ以上は出てこないでしょうという、本当に最後の救済策です。

資本性劣後ローンを知っていますか?

その救済策は何なのか?それは資本性劣後ローンです。資本性劣後ローンとは、コロナ対策の融資制度の1つです。

「いや、もう銀行からお金を借りることができないのでは?」というツッコミが来そうですけれども、実はこの1つだけ、資本性劣後ローンという融資制度の道が残されているのです。

しかし、普通に資本性劣後ローンで貸してくださいと言っても、無理です。一定の条件を満たすことができれば、資金調達できる可能性がまだあるということです。

資本性劣後ローンの条件

資本性劣後ローンの条件等について詳しく説明していきます。

いま経営が非常に厳しくて、将来的にも短期間で回復するのは難しい。今年1年でプラスに持っていくのは厳しそう、資金調達しないと持たない、資金調達さえできれば回復できるけど今ある資金だけではちょっと厳しい。

そういった状態にある会社に関しては、「この制度を使って絶対に資金調達してください、できなければ本当に終わりです」と国が言っています。資本性劣後ローンとは、そういう融資制度だと思っていただけるといいと思います。

この資本性劣後ローンという融資制度は、基本的には日本政策金融公庫と商工中金がメインの制度です。この融資を使える条件としては、まず大前提として「コロナの影響を受けて業績が悪化している」という事実が必要です。これは絶対条件です。

令和2年3月期以前の決算書とそれ以降の決算書を比較して、コロナの影響を受けて明らかに状況が悪くなっていることを明確に説明できる必要があります。

コロナ前からすでに業績が悪かった、営業赤字でした、という会社は資本性劣後ローンは無理だと思っていただいていいと思います。

「コロナの影響を受けている」という条件をクリアすることができれば、今債務超過状態で、普通に言ったら、銀行の融資なんて絶対受けられませんという会社でも、資金調達できる可能性があります。

この条件をクリアした上で、実現する可能性が高く根拠のある経営計画を策定して、民間金融機関による支援を受けられる体制を作ることも必要です。

日本政策金融公庫や商工中金から資本性劣後ローンで融資を受けるという前提があった上で、民間金融機関も助けてくれるという意思確認、これができている必要があります。いわゆる協調同意と言われるものを民間金融機関から取っておく必要があります。

協調融資ではなく、協調同意です。これを取る必要があるということです。協調融資ではないので金額や期間を一定に合わせる必要はありませんが、「一緒に支援します」という同意を確認できている必要があります。この融資制度を使うにあたっての1番のハードルは、根拠のある経営計画を作る、協調同意を取り付ける、この2つだと思います。

資本性劣後ローンとはどういう融資?

この資本性劣後ローンとはどういう融資なのかを解説していきたいと思います。

劣っているという字が入っているので「なんか嫌」「うちの会社は劣っていないけれど」と思われる方もいるかもしれませんが、別に「会社が劣っているから劣後ローン」ということではありません。

この劣後というのは、その劣後ローンを受けた会社が倒産した場合に、倒産した会社にお金を貸していたり、債権を持っていたりする債権者が、その倒産した会社の残っている財産の分配を受ける権利。つまり、配当を受ける権利の順位が劣っているという意味です。

例えば、3つの金融機関から借金をしている会社が倒産したとします。

そのうち1社は劣後ローンで貸していました、という場合には、残りの2社の金融機関が先に財務や財産の分配を受けて、その後、まだ残ったお金があれば資本性劣後ローンの回収ができます。ローンを受けた会社が劣っているわけではありません。

そのため、既存の債権者にとっては自分の取り分が減ることはないので、むしろ既存のお金を貸している金融機関にとってもメリットがあります。今の状態のままだったら回収できそうもないけれど、そのお金が入ってくれば再建するかもしれないということで、既存の金融機関にもメリットがあるという制度です。

融資の期間とメリット、デメリット

資本性劣後ローンの融資期間には5年1ヶ月、7年、10年、15年、20年というパターンがあり、融資期間中は元本返済がありません。

つまり、毎月利息を払う必要はありますが、その期間中は元本返済が一切ない。利率も当初の3年間は0.5%と非常に低いです。

4年目以降は前年の業績で変わってきます。赤字だったら0.5%で、黒字だった場合でもこの融資の借りている期間によって2.6%から2.95%という金利が適用されます。

この2.6%という金利を「高いからやらない」はもう論外だと思います。そもそも「銀行からもうお金を借りれないような会社が元本返済のないローンで資金調達できる」と、普通に考えたらあり得ないようなことが起こると考えたら、この金利はとても安いと思います。

借りなければ死ぬ、という状態の会社ですから、借りないという選択肢はないでしょう。金融機関に対する交際費だと思ってください。

元本返済がないため、資金繰りがとても良くなります。入ってきたお金は基本的には全額使えるということになり、そのお金を使ってこの融資期間内に事業再生をしていくことになります。

それができるということを示した経営計画書を作れるなら、資本性劣後ローンで資金調達できる可能性があるということです。逆に言うと「事業計画すら作れないような会社はもう助けません」、そう言われていると思ってもいいです。

そのため、生き残りたいのであれば、そこに対応していくしかないということです。

この資本性劣後ローンは元本返済がないということ以外にもメリットがあります。資本性という名の通り、この融資はローンなので借金なのですが、金融機関の評価上では自己資本として見てくれます。

どういうことかというと、例えば資産金額の合計が2億円、負債が3億円の会社があったとします。つまり、資産よりも負債の方が多い。マイナス1億円ということで、1億円の債務超過という状態です。

この会社が、資本性劣後ローンで2億円調達した。そうすると負債の部に、2億円の資本性劣後ローンというお金が入ってきますが、資産にもお金がプラス2億円入ってくることになります。

マイナス1億円だった自己資本に2億円入ってきて、これを資本としてみなすことができます。つまり、銀行がこの会社を評価するときの自己資産は4億円です。資本性劣後ローンの銀行が会社を評価するときに自己資本として見てくれるということなのです。

そうすると、銀行の評価書で実質破綻先として見られていた会社を正常先として見てくれて、他の金融機関も追加で融資してくれる、という可能性が見えてきます。

次に、資本性劣後ローンのデメリットについてもお話しします。

個人的にはほぼデメリットはないと思っていますが、融資のハードルが非常に高く、簡単には借りられないという点です。

この融資を受けたら、四半期ごとに銀行に対して報告義務があります。今の状況を報告していかなければならない。そのため、経理体制を構築していくということも必要になってくると思います。

しかし、経理体制の構築ができていなかったから会社が悪くなっていた場合もありますので、経理体制の構築は、むしろ率先してやるべきことです。

経理体制を構築しないで会社を良くしていくことはできないので、資本性劣後ローンでそれをやらなきゃいけないというのは、むしろ会社にとってはプラスになるんじゃないかと思います。

儲かっている会社で、経理体制ができていない、という会社はほとんどありません。ということで、資本性劣後ローンは、実際にはデメリットがほとんどない制度だと思います。

返済期日が来たらどうなる?

さきほど5年1ヶ月、7年、10年、15年、20年という融資期間があるとお伝えしましたが、返済期日が来たらどうなるのでしょうか。

資本性劣後ローンの契約上では、その期限が来た時に全額返済するということになっています。

「さすがに厳しい。10年借りても、10年後に一気に2億円返せと言われたら無理では?」と思われるかもしれません。

実際には、10年経って期限が来た時に、またそこから交渉という流れになると思います。分割で返済していくのか、少し返して一部を分割にするなど、どうなるかはわかりませんが「2億円で返したら倒産する」という状態で2億円取り上げられることは実際には起こらないはずです。

そこを気にして挑戦しないというのはもったいないので、やはり挑戦する価値がある制度かなと思います。

今後会社が厳しい状態になると見込まれているのであれば、ぜひこの資本性劣後ローンを獲得して会社を立て直して頂きたいなと思います。

しかし、繰り返しになりますが、相当レベルの高い計画書を作れなければ取れません。もしも「この融資でお金を調達したいけど、やり方がわからない」という場合は、早めにご相談ください。

すぐに行動を!

実は、2021年の年末に期間限定で無料財務診断を行ったことがあります。

この時期にご相談いただいた会社は、財務状態の良い会社が多くありました。意識が高く、行動が早い経営者の方の会社は、経営者がどんどん行動していくという傾向があるので、結果もついてきて良い状態になってきます。

募集を見てすぐに相談してきてくれるという行動を起こすような方は、やっぱりうまくいっていることが多いんだな、というのはその時実感しました。

資本性劣後ローンも同様です。やはり時間とお金というのは制約が必ずあるので、もう手遅れになってしまっているという場合や、どうにもできない場合はあります。ほんとにもうだめだというギリギリになる前に、早めの段階でご相談頂ければと思います。

例えば、顧問料3万円の会計事務所に「その顧問料の範囲内でこの融資を通してくれ、計画書を作ってくれ」というのは絶対にできません。なぜなら非常に時間がかかるからです。

弊社も、この計画書をその料金設定の範囲内で作ることは絶対にできないですし、安い単価で仕事をたくさん受けている状態になると、忙しくなるので対応する時間はないでしょう。

特に年明けの時期は、会計事務所は繁忙期に入ってきます。夜中でも従業員が働いている不夜城状態になっていることが多いので、追加で何十時間も何百時間もかかるような経営計画書を作るのは無理です。

1番危険だと感じるのは、「資本性劣後ローンというのあるって聞いたけれど、計画書を作ってくれない?」とお客さんに言われた時にです。

プライドが高い会計事務所の場合は、知らないと言えないので「作りますよ」と受けてしまう。そして、散々待たされた挙げ句に「やっぱりできません」と逃げられてしまうというパターンです。

このパターンが1番危険なので、お願いするとしても「本当にできるのか」ということを、最初の段階で確認しておいた方がいいと思います。後で蓋を開けたら何もやっていなかったということは往々にしてあるので、気を付けた方がいいと思います。

「じゃあ御社はどうなのか?」と思われる方もいると思うんですけども、弊社は日本で1番この資本性劣後ローンを通している方がいます。

1人で40件ぐらいやっている融資の鬼のような方がいるのですが、その方から直接資本性劣後ローンの手法を学んで、この融資に関するノウハウはかなり持っています。

この資本性劣後ローンは、少しずつですが話題になり始めています。最後の救済手段なので、今、経営が厳しくなった会社がこの制度に注目し始めているためかなり話題になると思います。

すぐに依頼が殺到して受けきれなくなるという状況が目に見えているので、相談はお早めに頂ければと思います。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。