2025.12.15
【コラム】決算書の読み方|初心者でもわかる見方のポイントを詳しく解説
「実は、決算書の読み方がよくわかっていない」という経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。決算書を読み解くことができれば、確定申告の手続きだけでなく、より効果的な財務戦略や経営戦略の策定にもつながります。
経営者自らが決算書で経営的な現状を的確に把握すれば、今後、自社の目指すべき方向性が明らかになり、戦略の精度もより高まるでしょう。そこで今回は、初心者でもわかる決算書の見方のポイントについて詳しく解説します。
目次
1:決算書とは
そもそも決算書とは、年度ごとに自社の利益や資産がどうなっているか、支出・収入などの財務状況や業績を算出した書類のことです。企業の経営状態と財務状況を客観的に示す、基礎的な資料になります。
一般的には、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の3つを指し、「財務三表」とも呼ばれます。ちなみに、決算書は通称で、金融商品取引法上では「財務諸表」、会社法上では「計算書類」が正式な呼び方です。
日本では、企業は事業年度の終了時に決算書を作成し、確定申告で税務署に提出しなければなりません。ただし、キャッシュフロー計算書は会社法上での作成義務はなく、中小企業では任意とされています。従って、厳密にいえば「計算書類」にはキャッシュフロー計算書は含まれません。
2:決算書が必要な理由
企業に決算書が必要な理由は、主に3つあります。
まず、自社の現状を可視化するためです。売上や利益、資産や負債などの数値を整理して見える化すれば、企業の健康状態を体系的に把握できます。
次に、経営判断や改善に役立つからです。決算書を読み解くことで、将来的なコスト削減や投資判断・資金計画など、経営者としての意思決定の根拠に活用できます。
最後に、利害関係者に説明責任を果たすことも理由のひとつです。資金調達で関わる金融機関や主要な取引先、株主・投資家に客観的な資料として決算書を提示すれば、企業の信頼性を示せます。
3:決算書の3つの種類
前章で、既に決算書には3つの種類「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」がある旨を説明しました。この章では、それぞれの特徴について解説しましょう。
3-1:貸借対照表(B/S)
貸借対照表とは、企業が決算時に保有している自社の資産と、その調達先を示す書類のことです。表の左側に資産、右側に負債と純資産を記載し、両者の合計が一致する「バランスシート」として構成されます。
資産の欄は、上から流動資産・固定資産の順に配置し、負債も支払期限の短い流動負債から固定負債の順に並べて記載するのが一般的です。この貸借対照表の数値から、企業の返済能力や財務基盤の強さなど、企業の全体像を把握できます。
3-2:損益計算書(P/L)
損益計算書は、企業が一定期間にどれだけの収益を得て、どれほどの費用を支払ったのかを整理し、最終的にどの程度の利益が残ったかを示す書類です。
書式は、売上高から売上原価、販売費および一般管理費などを順に差し引き、当期純利益までを段階的に示す構成になっています。
収益と費用の流れを上から下に積み上げて記載するのが特徴で、数値の流れから事業活動の成果や収益の概要を確認できます。この損益計算書で、自社が本業でどの程度の利益を生み出しているかを把握しておきましょう。
3-3:キャッシュフロー計算書(C/F)
キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを示すための書類です。一定期間にどれだけの現金を受け取り、どのくらいの金額を支払ったかを整理し、最終的な現金の増減を確認します。
利益ではなく、実際の現金の動きに着目している点が特徴です。書式上は、現金の流れを3つの項目「営業活動」「投資活動」「財務活動」に分け、それぞれの現金の増減が分かるように記載します。
中小企業に作成義務はないものの、キャッシュフロー計算書を作成すれば、企業の営業活動における現金収支だけでなく、設備投資や借入・返済など資金の動きも確認できて便利です。
数値の流れを把握することで、自社の資金繰りの健全性や、継続的に事業を運営できるかどうかも判断できます。
4:決算書の読み方
ここまでは、決算書の3つの種類と特徴について説明しました。この章では、決算書の各書類の読み方について詳しく見ていきます。
4-1:貸借対照表(B/S)
貸借対照表では、ページの左側に記載されている「資産」の項目を上から順に追ってみましょう。左側は、1年以内に現金化される流動資産・長期的に使用する固定資産・投資その他の資産で構成されます。
一方、右側の欄は、それらの資産をどう調達したのかを示す流動負債・固定負債と純資産の項目を記載するのが一般的です。それぞれの具体例は、次の通りです。
| 貸借対照表(B/S) | |
| 左の欄の勘定項目(借方) | 右の欄の勘定項目(貸方) |
| 【流動資産】 | 【流動負債】 |
| 現金・預金 | 買掛金 |
| 受取手形 | 未払金 |
| 売掛金 | 未払費用 |
| 有価証券(短期) | 短期借入金 |
| 棚卸資産(商品・原材料など) | 預り金 |
| 前払費用 | 未払法人税等 |
| 未収入金 | 賞与引当金(流動) |
| 繰延税金資産(流動) | 【固定負債】 |
| その他の流動資産 | 長期借入金 |
| 【固定資産】 | 社債 |
| (1)有形固定資産 | 退職給付引当金 |
| 建物・機械・車両など | 長期未払金 |
| (2)無形固定資産 | 繰延税金負債(固定) |
| ソフトウェア・特許権など | |
| 【投資その他の資産】 | 【純資産】 |
| 敷金・保証金 | 資本金 |
| 長期貸付金 | 資本剰余金 |
| 投資有価証券 | 利益剰余金 |
| 評価・換算差額等 | |
| 自己株式(▲) | |
左右の項目を照合しながら数値の流れを見ることで、自社の持っている資産が何に変わったのかを読み取れます。
流動資産の項目では、現金や売掛金などの項目から当面の支払いに対応できるかを判断しましょう。続いて、建物や機械などの固定資産の項目では、設備投資の規模や投資の偏りがないかを確認します。
右側の負債の欄からは、買掛金や短期借入金など支払期限の近い負債がどれほどあるかを把握できるでしょう。長期借入金などの固定負債からは、長期的な返済負担を確認できます。
最後に、純資産の金額で、企業がどれほどの利益を蓄積できているかを判断しましょう。左右の各項目に記載された数値を把握すれば、お金の流れと資金状況から企業の実態を立体的に理解できます。
4-2:損益計算書(P/L)
損益計算書には、主に以下の項目を記載します。
売上高
- 売上原価
= 売上総利益
- 販売費および一般管理費
= 営業利益
+ 営業外収益
- 営業外費用
= 経常利益
+ 特別利益
- 特別損失
= 税引前当期純利益
- 法人税、住民税および事業税(法人税等)
= 当期純利益
これらの数字を上から順に追っていき、段階的に事業活動の結果を読み解きましょう。
まず、売上高と売上原価で、自社に粗利益がどれだけ生じたかを把握します。次に、日々の経営で費用がどの程度かかったのか、販売費と一般管理費の欄で確認しましょう。もし営業利益が安定して確保されていれば、本業の収益力が大きいということです。
最後に、経常利益と当期純利益までの一連の流れを追えば、企業全体の収益構造や一時的に受けた損益の影響を把握しておきましょう。
ちなみに、売上総利益(粗利益)だけでは収益性を正確に把握できません。そこで、粗利率(売上総利益÷売上高)を算出しましょう。この粗利率の数値が高いほど、仕入や製造が効率的で、本業の収益力も高いといえます。
4-3:キャッシュフロー計算書(C/F)
キャッシュフロー計算書は、1ページに次の3区分を順に記載していきます。
1.営業CF
2.投資CF
3.財務CF
これらの3区分における代表的な項目は、以下の通りです。
| キャッシュフロー計算書(C/F)の3区分および項目 |
| 1.営業CF:本業の現金の流れ |
| 【主な項目】 |
| 税引前当期純利益 |
| 減価償却費 |
| 退職給付引当金の増減 |
| 貸倒引当金の増減 |
| 売掛金の増減 |
| 受取手形の増減 |
| 在庫(棚卸資産)の増減 |
| 前払費用・未収入金の増減 |
| 仕入債務(買掛金)の増減 |
| 未払費用・未払金の増減 |
| 利息の支払い |
| 法人税等の支払い |
| その他の営業活動による調整項目 |
| 2.投資CF:設備や資産の購入・売却による現金の流れ |
| 【主な項目】 |
| 有形固定資産の取得・売却 |
| 無形固定資産(ソフトウェア・特許権など)の取得・売却 |
| 投資有価証券の取得・売却 |
| 子会社株式の取得・売却 |
| 長期貸付金の回収・実行 |
| 敷金・保証金の差入・回収 |
| 3.財務CF:資金調達に関わる現金の流れ |
| 【主な項目】 |
| 短期借入金の増減 |
| 長期借入金の調達 |
| 長期借入金の返済 |
| 社債の発行・償還 |
| 株式の発行による収入 |
| 自己株式の取得・処分 |
| 配当金の支払い |
| その他の財務活動によるキャッシュフロー(リース負債の返済など) |
まず、各区分の項目ごとに現金の動きを追って、実質的な経営状態とそれに関連する資金の流れを読み解きましょう。
営業活動では、本業の現金収支が安定しているかを判断できます。投資活動は、設備投資や資産の取得・売却など、将来に向けて資金をどのくらい使っているかを見る項目です。
財務活動では、借入や返済・配当など、資金調達の状況や自社の財務方針を確認できます。3つの活動を合わせて見ることで、資金繰りの健全性を立体的に捉えられるでしょう。
5:決算書からわかること
決算書は、単に数値を並べたものではなく、経営状態を多面的に把握するための情報源です。各書類の目的や役割を照合することで、企業の全体像を把握できます。
この章では、特に企業分析で重視される3つの観点「成長性・収益性・安全性」において、決算書からわかることを整理してみましょう。
5-1:成長性
決算書の売上や利益の推移を追うと、企業の事業拡大など成長性の程度を把握できます。各書類からわかるポイントを押さえておきましょう。
| 【成長性:各書類からわかること】 | |
| 損益計算書 | ・売上高や営業利益の伸びによる事業の拡大の度合い |
| 貸借対照表 | ・固定資産の増減に表れる成長投資の状況 |
| キャッシュフロー計算書 | ・投資CFで示される将来的な投資姿勢 |
5-2:収益性
収益性は、企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを判断する指標です。各書類からわかる次のポイントを確認しましょう。
| 【収益性:各書類からわかること】 | |
| 損益計算書 | ・粗利益・営業利益による本業の収益力 |
| ・経常利益・当期純利益の推移が示す全体の収益構造 | |
| 貸借対照表 | ・資産の使われ方に表れる収益効率 |
| キャッシュフロー計算書 | ・営業CFがプラスの場合に示される実質的な利益の確保 |
5-3:安全性
安全性は、企業が安定して事業を続けられる財務基盤を備えているかを判断するための指標です。各書類からわかるポイントを押さえれば、PDCAにも活用できます。
| 【安全性:各書類からわかること】 | |
| 貸借対照表 | ・流動資産で示される短期の支払い能力 |
| ・流動負債に表れる支払い負担の度合い | |
| ・負債の割合による返済負担の現状 | |
| 損益計算書 | ・営業利益の赤字や利益の変動幅が示す経営状態 |
| キャッシュフロー計算書 | ・営業CFによる資金繰りの安定度 |
まとめ
日本では、経営者が自ら営業を兼ねて外回りに力を入れている企業も多いでしょう。日々の業務に追われ、決算書は斜め読みで財務部門に任せきりになっているかもしれません。
しかし、決算書の読み方がわかれば、財務戦略・経営戦略を立体的に捉えられるようになり、大きな効果につながる意思決定に役立ちます。
今回紹介した3つの書類の種類や役割・読み方を押さえ、自社の全体像を把握しながら、さらなる発展へとつなげていきましょう。



