2023.07.10

【コラム】日本の9割の経営者、個人事業主が知らない決算書の正しい読み方

今回は、税理士も間違えてしまう決算書の読み方と最強の経営術についてお話しします。多くの経営者が決算書を理解せずに、お金が貯まらない状況や赤字が続いている状態になってしまっていることがあります。実はその理由の一つが決算書を正しく読めていないからです。経営者の方々は、決算書を難しく考えずに正しく理解することが重要です。決算書をおろそかにしてしまうと、気づかないうちに大きな損失を被り、最悪の場合は倒産してしまう可能性もあります。

税理士に任せるのが安心だと思う気持ちも理解できますが、実際には税理士自身も間違った認識を持っていることがあります。このようなケースは少なくありません。ですので、今回は非常に簡単に分かりやすく、決算書の読み方と最強の経営術についてお話しします。経営者の方や個人事業主の方々は、黒字化を目指すためにぜひご確認ください。

決算書の種類と役割

決算書は、中小企業や個人事業主でも必ず1年に1回作成されます。主に2種類の計算書があります。それは「貸借対照表」と「損益計算書」です。ほとんどの会社がこれらの決算書を作成しています。

  • ■貸借対照表(BS): 会社の一定時点における財務状況を示しています。貸借対照表を用いて経営分析することで、経営の安定性や支払い能力を評価します。資産や借金などの状態が記載されます。
  • ■損益計算書(PL): 会社の一定期間の営業成績を示しており、会社の収益性や成長性を確認することができます。
  • 売上、経費、利益、税金などが記載されます。

これらの決算書は、会社の財務状態や経営成績を把握するために非常に重要です。特に貸借対照表は重要な情報を含んでおり、銀行からの融資の判断基準や事業の健全性を判断するために活用されます。

貸借対照表の読み方

貸借対照表の読み方を理解することは、会社の資金調達方法や運用方法を把握する上で重要です。貸借対照表は左側と右側に数字が縦に並んでおり、合計すると一致するようになっています。

  • 左側(資産): 会社の資金の運用方法を表します。資産の詳細が記載されています。
  • 右側(負債・純資産): 会社が調達したお金の調達方法を表します。負債は他人からの借金、純資産は自己資本や利益の蓄積を示します。

右側、つまり負債と純資産の部分は、会社がどのように資金を調達してきたかを示しています。具体的には、「負債」は他人から調達した資金(例:銀行からの借金)を、「純資産」は自己調達した資金(例:社長が会社設立時に出資した資本金、会社が稼いだ利益)を示しています。

それに対して、左側の資産の部分は、調達した資金がどのように運用されているかを示しています。つまり、これが会社のビジネスモデル、つまりお金を調達し、そのお金を運用して利益を生み出す、という行為を具体的に表しているのです。

だからこそ、貸借対照表は非常に重要なツールなのです。貸借対照表を見れば、会社がどんな資産を持っており、その資産がどのように利益を生み出しているのかが一目でわかります。しかし、利益を生み出さない資産が多い場合、それは会社の経営効率の低下を意味します。たとえば、高級車や不動産などの資産が多く、それらが直接的な利益を生んでいない場合、銀行からの融資も難しくなる可能性があります。

貸借対照表を見ると、会社がどのような資金を使って利益を生み出しているかが分かります。特に自己資本比率は重要な指標です。自己資本比率は、純資産の割合を示しており、中小企業では平均して10%以下の会社が多いです。自己資本比率が低い場合、借金が多く、資金繰りが厳しくなる可能性があります。

自己資本比率の重要性

貸借対照表の中でも特に重要なのが、「自己資本比率」です。これは純資産が総資本(負債+純資産)に占める割合で、会社の財政健全性を示す指標となります。例えば、自己資本比率が10%だとすると、残りの90%は借金等の外部資金で、いずれ返さなければならない資金となります。これが多いと、資金繰りに苦しむ可能性が高まります。

総資産が1億円で自己資本比率が10%だとすると、残りの9000万円はいずれ返済しなければならない金額となります。返済は現金で行われますから、キャッシュフローの確保が大切となります。

したがって、資金繰りに苦しまないためには、自己資本比率を上げることが重要です。自己資本を増やすためには、利益を確保し、それを再投資することが必要となります。自己資本比率が90%になったら、資金繰りは大変楽になるでしょう。だからこそ、高い自己資本比率を目指すことが、健全な経営のためには必要なのです。

自己資本率を増やす方法

では自己資本を増やすにはどうすればよいのでしょうか。ここにもう一つの決算書「損益計算書」(PL)が絡んできます。

損益計算書は、まず一番上に売上高が記載され、次に各種経費が控除されます。これらの経費を引いた結果が税金を払う前の利益(税引き前利益)となります。税金を差し引いた後の最終的な利益が、私たちが話してきた純資産へと蓄積されていくのです。

したがって、自己資本を増やすためには利益を出す必要があります。毎年、経営者が資本金を追加出資すれば自己資本は増えますが、それは現実的ではありません。したがって、利益を増やすことが自己資本を増やす唯一の方法です。

しかし、ここで多くの企業が「節税」という間違った行為をしてしまいます。
起業が税金を減らすために何をしているか?税率は企業が自由に決められるものではないので、節税するためにできることは「利益を減らす」ことだけです。
しかし、利益を0にしてしまった結果…、残るお金も0になり純資産に積み上がるお金もなくなってしまうんです。

法人税は、利益と税率の二つの要素から計算されます。税引き前利益に約30%の税金がかかり、残りの70%が企業の利益として残ります。この70%が純資産へと積み上がっていくわけです。

例えば、3億円の税金を納税したとしたら、税率30%で計算すると、7億円が企業に残ることになります。納税額が増えるほど、企業に残るお金は増えます。この7億円が純資産に積み上がると、資金繰りが格段に楽になります。そして、借金を返済しても、企業にはお金が残り続けます。自己資本比率が高まれば、支払いに行くお金が少なくなり、資金繰りが楽になるのです。

「税金が高いからお金がない」は間違い!

節税すれば会社にお金が残ると思っている方に、それが誤解であるということを理解してほしいと思います。

決算書の読み方は決して難しくありません。成功している会社の多くは、この財務諸表を読むことができます。

一方で、うまくいっていない会社は、決算書を読まずに、無駄な節税策を求めて税理士や様々な業者に依存することが多いです。しかし、その結果、会社は悪循環に陥ることがあります。

ですので、まずは自社の決算書を読んで理解することから始めてほしいと思います。その結果、会社が利益をしっかりと残せるようになると思います。このステップは、会社経営の基本となります。

決算書を読むことのメリット

決算書を読むことができると、経営上の重要な決断をする際の指針になります。以下に、決算書を読むことの4つのメリットをご紹介します。

  1. 予算のリスク回避: 会社が良好な状態か、それとも危険な状態かを把握するには、決算書の理解が欠かせません。決算書を読めるようになることで、早い段階で危険な兆候を察知し、適切な対策を講じることが可能となります。
  2. 資金調達のタイミングを把握: 決算書を読むことで、いつ、どれだけの資金が必要になるのかが明確になります。その結果、資金が不足してきたときに、どれだけ借り入れるべきかを判断する材料が得られます。これは、経営者が安心して適切な経営判断を下すためにも必要です。
  3. 融資を受けやすくなる: 銀行が融資を行う際には、会社が将来利益を出せるかどうか、そして過去の決算書の内容を重視します。利益を出し続ければ、会社の財務状況が改善され、銀行からの融資を受けやすくなることで、より多くの資金を事業に投資することが可能になります。
  4. 税理士や業者の誤解を避ける: 節税策を売り込む業者がいますが、その多くが短期的な税金の節約を目指すため、長期的な事業発展につながらないことが多いです。決算書を理解していれば、これらの誤った提案を避け、より成長につながる投資を選ぶことができます。

結論

決算書の正しい読み方と自己資本比率の重要性、決算書を読むことのメリットについて説明しました。決算書は会社の財務状態や経営成績を把握するために必要な情報源です。特に貸借対照表を正しく理解することは、資金調達方法や運用方法を把握する上で重要です。経営者の皆さんは、決算書をしっかりと理解し、黒字化を目指すために取り組んでください。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。