2023.08.01

【コラム】※今すぐ対策!後悔した時には倒産秒読み!高すぎる社会保険料を100万単位で削減する方法

経営者のみなさん、社会保険料の支払いで頭を悩ませた経験はありますか?社会保険料を減らせる方法があるとしたら、それを知りたいと思いますよね。実は、存在します。
削減できたはずの社会保険料の支払いにより資金繰りが困難になってしまうのは非常にもったいないですよね。しかし、どのように対処すべきか分からないという方も多いかと思います。そこで今回、社会保険料を削減するための具体的な手法を7つご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

社会保険料とは

まず、基本的な知識として社会保険料について理解しておきましょう。社会保険料は会社と従業員によって異なる意味を持ちます。従業員にとっては、給料から毎月引かれる強制的な出費で、会社にとっては税金と人件費の一部として捉えられます。給与の額面の約30%が社会保険料となり、その半分は会社が、残りの半分は従業員が負担します。

しかし、実際には全額を会社が負担しているとも考えられます。なぜなら、従業員の給与の15%を会社が社会保険料として引き、それを納付する際に、その分は給与計算にも織り込まれているからです。そのため、会社は実質的に30%を負担しているとも言えます。しかし、このことは十分に理解している従業員はかなり少ないのではないでしょうか。社会保険料は会社にとって大きな負担となっており、それが従業員のために支払われているにもかかわらず、その感謝の意識はあまり持たれていないかもしれません。

さらに、社会保険料は人件費の一部であり、その削減は容易ではありません。日本では、一度雇った人を簡単に解雇することは難しく、従業員を採用する決定は慎重にするべきです。給与だけでなく、社会保険料などの追加的な経費も考慮に入れる必要があります。したがって、採用の結果として企業の利益が増えるかどうか、その判断材料として給与だけでなく、社会保険料などの経費も考慮に入れることが重要です。

また、従業員を雇った場合、その給与の3倍の粗利を稼いでほしいという考え方があります。なぜなら、社会保険料の支払いやその他の経費で赤字になってしまうからです。一人の従業員を採用した場合、その給与の約1.5倍から2倍の経費が発生するため、その分の利益を出すことを考えると、給与の3倍の粗利を目指すことが理想的と言えます。

このように社会保険料の削減は難しい問題ですが、実は削減できる方法が存在します。今回はその具体的なテクニックを7つご紹介しますので、ぜひあなたの会社でも取り組んでみてください。

社会保険料を削減するテクニック7選

1.役員報酬最適化

役員報酬の最適化について説明します。役員報酬の扱いを変更することにより、中小企業経営者の皆さんが社会保険料の負担を劇的に軽減することが可能になります。

例えば、年間2400万円の役員報酬を受け取っている経営者がいるとします。その経営者が毎月の役員報酬を200万円から5万円に変更し、年間合計である2400万円の差額を年末の役員賞与として一括で支給するという方法です。そうすると、毎月の報酬は60万円(5万円 × 12ヶ月)となり、その上で賞与として2340万円が一括で支給されます。このような支払い方をすると、社会保険料の負担は100万単位で減少する可能性があります。

では、なぜこれが可能なのでしょうか。それは社会保険料の計算方法に理由があります。社会保険料は「標準報酬月額」という指標に基づいて計算され、この月額に対して約15%の社会保険料が発生します。しかし、月額報酬と賞与にはそれぞれ上限が定められており、これを超えた部分には社会保険料が適用されないのです。

この例では、2340万円の賞与の大部分が上限を超えています。その結果、約2200万円分の賞与に対しては社会保険料がかからず、年間の社会保険料の負担が大きく軽減されます。

しかしながら、この方法にはいくつかの注意点があります。
一つ目は、役員賞与を経費にするためには事前に税務署に届け出る必要があります。これを怠ると法人税の負担が増えてしまいます。したがって、この方法を実践する場合は税理士と相談し、適切な手続きを行うことが重要です。

二つ目の注意点は、賞与を払う約束をしたらその日にその額を全て払うことが必須であるということです。万一支払えなくなった場合や、支払い額を変更したい場合は、その都度株主総会を開いて議事録を作り、役員賞与の権利を放棄するなどの正式な手続きを行う必要があります。

最後に、この方法を実践する際には生活費の確保も考えなければなりません。月額の報酬が大幅に減少すると、生活費を賄うことが困難になるかもしれません。そのため、1月の頭に一括で賞与を支給し、そのお金を使って生活していくといったアプローチも考えられます。

以上の方法を理解し、適切に行動することで、社会保険料の負担を大幅に軽減することが可能になります。

2.入社日、退社日の調整

社会保険料を削減するために、入社日と退社日の設定が非常に重要です。わずかな日付の調整が社会保険料の負担額に大きな影響を及ぼす可能性があります。具体例として、「A」と「B」の2つのケースを挙げて説明します。

《A》
在籍期間62日 (入社日:5月31日 退社日:7月31日) 社会保険料3ヶ月分発生

《B》
在籍期間60日 (入社日:6月1日 退社日:7月30日) 社会保険料1か月分発生


ケースAでは社会保険料は3ヶ月分発生します。一方、ケースBでは社会保険料は1ヶ月分のみとなります。在籍期間はほぼ同じでありながら、社会保険料の負担月数大きく異なります。

では、なぜこのような事態が生じるのでしょうか。それは社会保険料が「入社日の属する月」から発生し、日割り計算をしないからです。つまり、5月末に入社した場合でも、5月分の社会保険料が全額かかることになります。したがって、ケースAのように5月、6月、7月とまるまる3ヶ月働いた場合、社会保険料の負担は3ヶ月分となります。

では、なぜケースBは1ヶ月分になるのでしょうか。ケースBでは、入社日を6月1日と1日ずらすことで5月分の社会保険料が発生しません。さらに、退社日を7月30日と設定しています。これにより、6月と7月の2ヶ月間働いたように見えますが、社会保険料の負担は1ヶ月分だけとなります。

なぜなら社会保険の資格を喪失する日は「退社日の翌日の属する月」からというルールがあるからです。ケースAでは、退社日が7月31日なので翌日の属する月は8月となり、8月分の社会保険料は発生しません。一方、ケースBでは退社日が7月30日なので翌日はまだ7月であり、7月分の社会保険料は発生しません。つまり、ケースBの社会保険料の発生は6月のみで、2日の差が2ヶ月分の社会保険料の違いを生むことになります。

具体的な金額に換算してみると、例えば月額100万円の給与の場合、2ヶ月分の社会保険料の違いは60万円にもなります。これは、個人が受け取る額が30万円増え、同時に会社の経費が30万円減るという、双方にとってwin-winの状況を生むわけです。

以上の事から、社会保険料の負担を削減するためには、特に退職が予定されている場合、退職日を月末ではなく月末より1日でも前に設定すると有効です。このような細かな調整が、経営者と従業員双方にとって大きな節約に繋がることを、ぜひお忘れなく。

3.給与テーブル改定

あまり耳にすることは少ないかもしれませんが、社会保険料の計算方法は「標準報酬月額」を基にしています。この標準報酬月額の決定方法には、一定の範囲内で一律の等級が設定されている特性があります。例えば、5万円から6万円までの範囲では、全員が同じ等級に該当し、同じ社会保険料が算出されるのです。

ここでポイントなのは、給与テーブルをうまく活用し、各等級の上限値に給与を設定することで、社会保険料の負担を微細ながらも減らすことができるということです。5万円から6万円の等級があった場合、5万円ではなく6万円に設定すると、一見社会保険料が増えるように思えますが、実際には負担は同じで、利益を最大化できるのです。

数千人、数万人という大勢の従業員を持つ企業にとって、これは劇的な効果をもたらす手法です。従業員の人数が少ない企業でも、こうした点を意識していただければ、少しずつでも経費の負担を軽減することが可能です。

4.4月~6月に残業しない

ここで、標準報酬月額が決まる時期について考えてみましょう。実は、標準報酬月額は4月から6月の給与を基に設定されます。そのため、この期間に残業が多く、給与が大幅に上がってしまうと、年間通じての社会保険料負担が増大します。

これを防ぐために、4月から6月は残業を減らし、逆に7月以降に残業を増やすと、年間通じての社会保険料の負担を軽減することができます。また、昇給のタイミングも同様に調整すべきです。昇給を4月ではなく、7月以降に設定することで、一年間の社会保険料上昇を防ぐことが可能です。これは、経営者だけでなく、従業員にとってもメリットがあります。

5.有給を買い取る

退社日に注目しましょう。有給休暇を消化することで、退社日が遅くなり、その分だけ社会保険料が増えます。たとえば、実際に最後に出社する日が5月30日で、その後の有給休暇を消化するために退社日が6月15日になった場合、5月分の社会保険料が発生します。

しかし、有給休暇を買い取ることで、退社日を5月30日に保つことができます。その結果、5月分の社会保険料が発生しないことになります。これは、従業員にとってもメリットがあるため、事業主は積極的に提案することを検討しましょう。

6.賞与を退職金にする

賞与は基本的に在籍期間中の従業員に支払われます。たとえば、賞与の支給日が7月10日であれば、この日まで会社に在籍しているという人が多いでしょう。しかし、この考え方は会社と従業員双方にとってコストが増える結果をもたらします。
なぜなら、賞与が支払われると社会保険料の負担が増えるからです。ここでスマートな選択として賞与を退職金に変えることを考えてみましょう。これはどういうことかと言いますと、例えば6月末に退職をし、その際に賞与を退職金としてもらうという方法です。このようにすると、社会保険料の負担は減り、また退職金は社会保険料の対象外となるため、さらに節約できます。この戦略は、会社と従業員双方にとってメリットがありますので、ぜひ交渉してみてください。

7.退職金積み立て

給与を受け取ると、その分社会保険料がかかります。しかし、月の給与から一部を減らし、その分を退職金の積み立てに振り向けるという方法があります。

たとえば、月給から3万円を退職金積立てに回し、その後まとめて受け取るという形です。これにより、社会保険料の負担を軽減できます。さらに、その積立金を運用し増やすことが可能であれば、結果的に受け取る金額が増える可能性もあります。

さらに付け加えると、給与を毎月受け取ると所得税の対象となりますが、退職金で受け取ると退職所得となり、これは所得税において優遇されます。また、退職金は社会保険料の対象外です。すぐに手元にお金が必要な方にとっては、すぐに給与を受け取る方が魅力的かもしれませんが、将来のことを考え、節約策を取る価値はあると思います。

まとめ

今回は、社会保険料の削減についての7つのテクニックをご紹介させていただきました。少々細部に渡る話が多かったかもしれませんが、このような細やかな努力が積み重ねられることで、結果的に会社の利益や従業員の手取りが増えると考えています。

削減された社会保険料は会社に残るお金となり、これを更なる事業投資に活用すれば、経営の効率が向上し、より収益を増やすという良い循環が生まれます。そのため、細部にわたる節約策も見過ごさずに、一つ一つ確実に積み重ねていきましょう。こうした地道な取り組みこそが、会社の成長に繋がる大きな力となると私は信じています。

この記事を監修した人
市ノ澤 翔

市ノ澤 翔

財務コンサルタント 経営者向けセミナー講師 YouTuber

Monolith Partners代表、株式会社リーベルタッド 代表取締役、一般社団法人IAM 代表理事。
公認会計士資格を持ち世界No.1会計ファームPwCの日本法人で従事。
在職中に株式会社リーベルタッドを創業。
その後独立しMonolith Partnersを創業。中小企業経営者の夢目標を実現を財務面からサポート。
経営改善や資金繰り改善を得意としYouTubeをはじめとした各種SNSでの情報発信も積極的に行う。